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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで
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金曜日、まだ知らない運命の兆し ※第3王子→第一王女視点

最初は第3王子視点です。

途中から、第一王女視点になります。

 金曜日、午前6時。ハンドドリップでコーヒーを淹れる。

 俺にとって欠かせない、理想のモーニングルーティンだ。

 蒸らしの秒数を正確に測り、ゆっくり湯を注ぐと、深みのある至福の芳香が薫り立つ。


 一口飲んで、ふーっと息を吐き、部屋を見渡す。


 机の脇の本棚には、図書館で借りた本が整然と並んでいる。

 必要な書籍はほとんど揃ったが、唯一、レンゲ様の論文だけが見当たらない。


「……久しぶりに行くか」

「あっ! ご主人様、おはようございます! 今日も俺様が図書室に行ってきます!」


 羽をパタパタさせながら、机の上に従魔のチョコがやって来た。


 どういうわけか、チョコは図書室を気に入っている。


「いや、今日は俺が行く」

 

 カップを机に置き、左手を横に振って制した。


「えっ?! でも、ご主人様……お母様の職場に手伝う予定が?」

「その仕事は昨日で終わらせた。だから、今日は俺が行く。代わりに、ニコのところへ行ってくれ」

「えぇ〜? ニコ? 無口で、いつも仏頂面だから……」


(珍しいな。いつもはイエスマンなのに、あまり乗り気ではないらしい)


「チョコ。無口というのは、見方を変えれば行動で示すタイプだ。その行動を観察することも重要……」

「なるほど〜。さすがご主人様。観察なら、俺様にお任せを!」

「頼む」


 さて、チョコに依頼したことだし、始業時間まで、かなり余裕がある。


 本棚から王族のアザに関する古文書を手に取り、ページをめくると――『アザが左右対称で同じ位置にある者と出会うと、結婚に繋がりやすい』と記されていた。


(俺の場合、アザは右胸。“彼女(第一王女)”が左胸にアザを持っていれば……)


 だが、その一文に関する根拠や説明が一切書かれていない。


「どういうことだ。つまり、運命の相手とでも言いたいのだろうか?」

「運命、ですか……また会いたかったなぁ……」


 俺の独白に対して、チョコはらしくない一言をそっと呟く。その響きに、俺は違和感を覚えた。


()()()()()()()()……?)


 そういえば、月曜日にチョコが怪我をした時、「男子生徒から絆創膏をもらいました」と言っていた。その少年と仲良くなったのだろうか。


(念のため、確認しておくか)


「チョコ、絆創膏をくれた相手と親しくなったのか?」


 俺の問いかけに、チョコはピクッと体をこわばらせた。


「いや、ほとんど話してません。名前すらわからないし……。お詫びの菓子折りを持って行った時も、その少年は爆睡してましたから。だから、机に置いて、そのまま帰りました」

「そうか……」


 俺は特別科に所属する王子だ。チョコを助けてくれた一般科の男子生徒と出会う機会は滅多にない。無事に菓子折りを渡せたのだから、これ以上は詮索しないでおこう――そう、自分に言い聞かせた。


 * * *


 金曜日、午前8時。


「うわぁあああ! 寝坊した!」


 ぼくはベッドから飛び起きた。

 昨日の出来事を思い出すたびに恥ずかしくて眠れず、その反動で寝坊してしまった。


「おはよう。昨日のサラちゃん、本当に可愛かったわ。それにしても、ニコくんは……サラちゃんが女の子の格好をすると高確率で現れるわねぇ。あの独占欲、男の人って、みんなあんな感じなのかしら?」


 ルルは優雅に紅茶を飲みながら、ぼくの少女漫画雑誌を読んでいた。


「あらぁ〜。サラちゃん! この占いコーナー、面白いことが書いてあるわ!」

「気になる! でも、ちょっと待ってー!」


 胸を包帯できつく巻き、制服に着替えたぼくは、ルルのそばに寄った。


「ルル、どうしたの?」

「見て! 今週の占い、当たってるじゃない?! 『天使族の女の子である君へ。可愛いものを身につけるとモテモテに! 特に、吸血鬼族の男の子との出会いが増えるよ。アクシデントで、一気に距離が縮まるかも?』ですって!」


 ルルの瞳がキュンキュンしている。まるで、ハートマークが浮かんでいるみたい。


「えっ、これ偶然!? 占いコーナーって、こんなパターンもあるんだ! ぼく、自分のより、アンズちゃんとアダムさんの相性の方が気になる!」

「あらら。そうよね、サラちゃんは……」

「うん! 今のぼくはルルと同じだよ。ルルが恋のキューピーラビットなら、ぼくは恋のキューピーエンジェルとして活動する! あっ!」


 該当する箇所を見つけた。『人間の女の子である君へ。好きな人と付き合いたいのなら、テストで赤点を取らないこと! 他種族のお友達に勉強を教わるとGOOD!』と書かれていた。


「えへへ……」


 感慨深い、かも。

 昨日、アンズちゃんと一緒に勉強したことを思い出したから。


(人間のアンズちゃんと天使族のぼく。この組み合わせなら……)

 

「アンズちゃん、アダムさんといい感じになるよね?!」

「もちろん。わたしも応援するわ。だから、そろそろ出発しないと……」


 ルルが時計を見て、心配そうな顔をしている。


「わー! あと10分?! 行かなくちゃ! そうだ。ぼくは、いつも可愛いルルと一緒にいるから、毎日が幸せだよ!」

「サラちゃんったら……。わたしも大好きな貴女と、これからも一緒にいるわ」


 ルルは照れながらも、ぬいぐるみキーホルダーの姿になる。ぼくは制服に付けて、学校へ走り出した。


(今思うと信じられないっ! まさか……あの占い、本当に当たっちゃうなんて!)

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