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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで
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汗ばむ素肌に触れる第6王子 ※第一王女→第6王子視点【※】

【※注意】第6王子によるスキンシップ表現あり(R-15:背後注意!)

 ニコくんの唇がぼくのおへそに触れそうだ。

 ぼくは逃れたくて、必死に言い訳を探しながら、時間を稼ぐことにした。


「ダメだよ! ぼく、汗かいてるからっ!」

「知ってる、緊張してるんだろう。太ももに汗の雫が……」

「ぁっ……!」


 突然、ニコくんが硬い親指でぼくの汗を拭った。そのなぞる感触がむず痒くて、甘い吐息が漏れてしまった。


(ヤダ! こんなことになるなんて……)

 

「もう! ニコくんのイジワル!」


 ぼくが頬をぷくっと膨らませて顔を背けても、ニコくんは構わず、ぼくの手をぎゅっと握った。


「イジワルなのは仕方ないだろ。君が可愛いからな」

「えぇっ!」


 やっぱり変だ。さっきから、ニコくんらしくない。

 優しそうな目をして、『可愛い』だなんて。

 シナモンシュガーみたいに、脳が活性化されそうな甘いセリフにドキドキする。ぼくの心臓がもたない。


(ぐぬぬ。今のところ、ニコくんが主導権を握っている。ならば、ぼくの方から提案すればいいよね!?)


「ニコくん、休憩しよう?」

「却下。ごちそうを目の前にして、休むわけがない。サラ、いただきます」


 両手を合わせ、企んだような顔をしている。

 

「やっ! ま、待って……!」


 ガラッ――!


 ぼくが叫んだと同時に、部室のドアが開いた。


「サラ、お待たせ! オウレン先生にサラの制服もらったよ!」

「ごきげんよう、サラ!」


 アンズちゃんとケイちゃんが慌ただしく更衣室に駆け込む。アンズちゃんはもう学ランではなく、ケイちゃんと同じく、いつもの制服を着ていた。


 ナイスタイミング……と言いたかったけれど、今のぼくはチアガール衣装のまま、ニコくんにおへそをじっと見つめられている。どう考えても、怪しすぎる状況だ。


「えっ! ニコくん、サラに何してるの?!」


 アンズちゃんが目を丸くする一方で、ケイちゃんは鬼の形相で睨みつける。


「ニコ、あんた! サラは女の子よ! もっと優しくしなさいッ!」


 ケイちゃんの指摘に、ニコくんはむっとしてアンズちゃんに言い返した。


「アンズ。サラが女の子だと、オレたち以外にバレたら、どうするつもりだったんだ?」

「ごめん! だって、私はウエストが合わなかったんだもん! ていうか、そもそも……なんでチアガール衣装があったの?!」


 アンズちゃんが首を傾げると、隣のケイちゃんが真っ先に挙手して答えた。


「アタシの会社で必要なの! あるスポーツイベントでチアガールを募集していてね。このザダ校のクリーニング屋さんが衣装制作もやっていると聞いて依頼したのが、ちょうど届いたから、このロッカーに入れておいたの」


 ケイちゃんの説明に、アンズちゃんは「なるほど……よくわからないけど、ケイちゃんはすごいってことだね!」とパチパチ拍手した。ぼくもボンボンを揺らして一緒に拍手すると、ケイちゃんがぼくの前に歩み寄った。

 

「いやー、こうして見ると素敵な衣装ね! まあ、サラが可愛いからね。でも、ちょっと太もものあたりが汗ばんでるわ。通気性はどうかしら?」


 忘れていた。

 ケイちゃんは猪突猛進。


 容赦なく、ぼくのスカートをめくった。


「見ちゃダメ――!」


 あまりの恥ずかしさに叫びながら、慌ててスカートの裾をおさえたけど、間に合わなかった。


 いつもは平然としているケイちゃんの目が、大きく見開く。


「サラ……! 貴女、下着はボクサーパンツなの?!」


(あぁあああ! 終わった! ぼくの下着事情、お友達にバレちゃった!)


 女性だとバレないように、普段はシンプルなボクサーパンツを履いている。

 まさか、お友達に見られるなんて……本当に恥ずかしい。


「だって、男子生徒として在籍してるから……」

「あっ、そうよね! バレるわけにいかないものね」


 ケイちゃんの発言を聞いたアンズちゃんは「えらいよ。本当に男の子として頑張ってきたんだね……」と涙目になりながらも、「あっ! バイト行かなくちゃ! サラ、はいっ!」と制服を差し出してくれた。


「アンズちゃん、ありがと。着替えるから、入ってこないでね!」


 みんなを部室に追いやり、一人で更衣室へ。チアガール衣装から学ランに着替えて、最後に頭のリボンを外すと――いつもの自分に戻っていた。


 さっき、みんなが「可愛い」と言ってくれて、正直すごく嬉しかった。

 

 髪も、本当は伸ばしたい。

 

 可愛いものが大好きなのに……。


(はぁ……やっぱり男装してる方が落ち着くなんて……)


 少しブルーな気分のまま着替えを終えて部室に戻ると、ニコくんが一人で鍵を手にしたまま、椅子に腰掛けていた。


「ニコくん、待ってくれたの? ごめん! アンズちゃんはバイトだよね、ケイちゃんは?」

「ケイもアンズのバイト先に行った。カフェ勉をするって」

「そうなんだ」

「それより、元に戻ったんだな……」


 ニコくんはぼくの髪を指差して言った。


「うん。さっき、アンズちゃんが魔法で伸ばしてくれて、すごく嬉しかったけど、この長さの方が慣れてるから……」

「そうか。疲れただろ、寮まで帰ろうか……お嬢さん」

「オジョウサン?!」


 いきなりのお嬢さん呼びに、キツツキのように片言で言い返す。そんなぼくをよそに、ニコくんはぼくの腰に手を添え、丁寧にエスコートしてくれた。


「安心しろ。君と二人でいる時だけ、そう呼んでる。だから、身分とか男装のことなんて気にするなよ」


 ニコくんの顔に陰りが見える。その短い言葉の裏に、第6王子としてのプレッシャーがあるのかもしれない。普段は表に出さないけれど、こうして言葉にしてくれる時もある。なんだか、“親友”の意外な一面を垣間見た気がして、嬉しかった。


「わかった、気にしない! だから、ぼくとこれからも仲良くして……」

「あぁ」

「でも! さっきみたいなのは、お友達同士でしちゃダメだからね?」


 両手の人差し指でバツマークを作って「ダメ」と表現する。なのに、その上からぼくの指を握るニコくん。


「オレはそこから先の関係……いや、今はいい。帰ろうか」

「うん!」


 二人で男子寮へ戻った。一言も話さなかったけれど、この時間は気まずくなく、むしろ心地良かった。


(ぼくも、君と一緒にいる時は、自分らしくいられる気がするよ)


 その想いは、胸の内にしまい込んだ。


 * * *


 寮に戻り、自室にこもった。


 忘れられない。あの露出の多い姿。

 白い素肌が汗に濡れて、艶めいて見えた。

 

 あぁ、噛みつきたい。

 吸血鬼としての本能が騒ぎ、喉が渇いたように熱くなる。


「君が可愛い」

 

 その一言で片付けたが、甘い匂い、汗ばむ白肌、柔らかな身体つき……全部、オレを狂わせる。


 誰にも見せるな。オレ以外に、絶対触れさせるな。

 君の素肌も、そのおへそも、流れる血も……オレだけの『ごちそう』だ。


 王族の縛りなんて、クソ食らえだ。

 全てを敵に回しても、オレは欲しいものを奪う。


(だから、逃げるなよ。サラ)

【余談:ガールズトーク】

アンズちゃん「ねぇ。ケイちゃん、さっきのサラ……やっぱ可愛いよね! チア衣装、本当に似合ってた! だけど、人間にしては体毛が全く生えてなくて、すごく色白だったね」

ケイちゃん「そうね。隠してるのが、本当にもったいないわ。あっ、今度サラを下着屋さんに連れて行きましょ。そうねぇ、レースとかリボン付きのパンツが似合いそうね……」

アンズちゃん「えぇ〜! サラ、照れるだろうなぁ。でも楽しそう。ていうか……ケイちゃんは気づいた? ニコくん、サラのこと好きだよね。異性として、サラのことを意識してそう」

ケイちゃん「ふふっ。ニコのあの目つき、“大好き”って書いてあったわよ。独占欲ダダ漏れ。一匹狼だけど、とてもわかりやすいわ」

アンズちゃん「えー! 王子様と貴族令嬢が付き合うのって素敵。結婚式、呼んでもらおうかな?」

ケイちゃん「いいわね。でも、結婚まではわからないわよ。この国は女性が少ないのだから。サラはもしかしたら、他の王子様に目を付けられているかもしれないわ」

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