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地雷系男の娘



 文武両道、眉目秀麗。自他ともに認める完璧人間。

 まるで神に望まれて生まれてきたかのようなこの俺、冴木徹(さえきとおる)は、ある日熱中症で倒れたところを、入学当初よりかわいいとウワサになっている一つ下の後輩 夢野愛ヰ恋(ゆめのあいら)に助けられる。だがこの後輩、実は世界を救っていた?

 「先輩、僕のチェンジャーになってよ」

 意味の分からない言葉を皮切りに、突如関わることになったキャラの濃い奴らとともに、俺の日常は二転三転と移り変わっていく。

 

 





-------------------------------------------------------



 


 「ねえ、あの先輩かっこよくない?」


 お?


 「うわ、ほんとだ!この学校当たりじゃん!」


 違う、俺がこの学校を選んだからこの学校が当たりなんだ。




 


 桜咲き誇り、のりのかかった制服に身を包む新入生。さぞかし新しいスタートに胸躍らせていることだろう。中学生という制限のあった生活から、少し大人になった気分にさせる高校生活が始まるのだ。当然だ。


 そんな新生活スタートを切った登校初日、男子諸君ならば最初にすることなど決まっているだろう。


 そう、“かわいい女子探し”だ!!!


 この青春の代名詞とも呼べる大切な三年間。いかに充実させ、時に陰キャどもから「リア充爆発しろ」と蔑まれようとも鼻で笑い飛ばせるだけの余裕を持つために男には武器が必要だ。それには自分も、周囲からの評価も高い可愛い女子を見つけ、願わくば一学期が終わるまでの半年間の間に彼氏彼女の関係に持ち込みたい。故に早速玉になってまずはクラスの女子を吟味している。少し視線をそこに向ければ女子のランキングが聞こえてきそうだ。


 だが残念だったな、君らが今ランク付けをしている女子は全員、俺のことを見ているのだから。

 俺は冴木徹(さえきとおる)。高校二年。成績は必ず学年トップ。部活は洗練された集中力を求められる弓道部に所属し、今年の春に全国大会に出場した。なまじなんでも出来てしまう俺は、さらに顔立ちも芸能人レベルらしく、その上女子への対応も紳士的なことからその文武両道、眉目秀麗さから“貴公子”と呼ばれている。

 自分でもこの完璧さにため息が漏れてしまう。

 

 「冴木先輩!私弓道部に見学に行きたいんですけど!」

 「ああ、今日も放課後からやっているから見においで、俺も引くから」


 その瞬間、俺の周囲を取り囲んでいた女子たちから黄色い悲鳴が上がる。照れるなと、頭をかきながら廊下の端で悔しそうに唇を噛み締めている一年生ボーイたちに軽く微笑んで見せると、うまいこと火にポリタンク丸々一パック注ぎ込めた。

 

 「相変わらずかよ貴公子」

 「なんだよ小野寺」

 「いや、今年も見事に一年坊主どもを絶望のどん底に叩き落してんなと思って」

 「去年その餌食になったのはお前だったもんな」

 「まあな~」

 

 小野寺は、俺と同じクラスで、俺と一番距離間が近い男だ。そしてこの男も俺の足元にも及ばないが顔がまあまあいい。さらにバスケ部エースで成績は俺に次ぐ2位。男らしさ溢れる出で立ちから、中々にファンも多い。若干気に入らないが、こいつは数少ない俺とこうして距離を近くして話しかけてくれる奴だからまあ目をつぶってやろう。


 「あ、そうだ聞いたか?1年のウワサ」

 「ウワサ?」

 「そーそ。めちゃくちゃ可愛い子が入学してきたんだってさ」


 小野寺はどうだか知らないが、俺はモテるが特段女子に興味があるわけではない。ここまであからさまにしているのは、シンプルに学校中の男にマウントが取りたいだけだから。だが小野寺まで注目しているほどの美人ならすぐに分かりそうなものだが、未だ見かけない。


 廊下の角が目に入り曲がろうと脳が指示を出した時、目の前を印象的なツートンの髪が横切った。それは俺の視線に気づいたのかこちらを振り返る。中心から片側が白、反対が少し青みがかった黒のハーフツインテールに、ピンクの瞳、耳にはいくつものピアスが開いていて、首にはチョーカー、気崩したシャツの上から大きすぎるパーカーを羽織った、見るからに“地雷”と呼ばれる女の子。俺の中でもかなり苦手とする部類にある女子だが、どこか目が離せない。そもそも違和感を感じる。

 

 その女子は光に当たるピンクの瞳を軽く細めた。今俺に微笑みかけた?


 「あ~、もしかして冴木センパイでしょ?」

 

 思っていたよりも若干低く、女子の声と変わりないのだが中性的な声音。ネイルで彩られた指で口元を抑えるその手は女子のものとは思えない筋張った手だった。


 「おい、この子だよ」

 「あ?何が」

 「1年の間でウワサのめちゃくちゃかわいい子」


 まあそうだろうなと予想はついていた。だって可愛いし。地雷系は苦手だが、見た目が可愛いのならまあいいだろう。


 「君一年生だよね?名前は?」

 「・・・1年7組夢野愛ヰ恋(ゆめのあいら)。ねえセンパイ、僕のこと女の子だと思ってるでしょ~」


 地雷女子、夢野はシャツを胸元まで下げて見せた。


 「僕、男だよ?」


 


 俺は、ここにきてイレギュラーの存在に出会うことになるとは思ってもみなかった。

 そして、夢野愛ヰ恋との出会いは俺のこれからの人生が一変する出来事となった。






























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