ずっと、ここに4
ずっと、ここに4
直哉は、竹刀を握り、ゆっくりと静かに階段を上った。
竹刀は、直哉が高校時代に剣道部だったものを捨てずに押し入れに入れていた。
階段の半分くらい上ったところで、二階の一番奥の部屋からバタッと音が聞こえた。
確実に人がいる気配を感じた。
一歩一歩、その部屋に近づいていった。
ドアの前で、深呼吸をした。
そして、意を決して、ドアを勢いよく開けた。
「誰だ!この野郎!」
これ以上ない、大きな声を出し、竹刀をかざした。
「キャアッ!」
か細い、女性の声がした。
ベットと窓の間に空間があるが、直哉からはベットが邪魔して見えない。
声のする方に近づいて行った。
三十才前後の女性がいた。
「あんた誰だ⁈」
直哉は竹刀を女性に向けた。
「ごめんなさい。分からないです。。なんで私ここにいるの?」
女性は下を向いた。
顔が血だらけだ。
ケガをしている。
頬が腫れている。
瞼も切れている。
顔がよく分からないほどのケガをしている。
「あんた、どうしたんだ、ケガをしているじゃないか。とりあえず警察を呼ぶぞ」
直哉は携帯電話に手をかけた。
「警察はやめてください。何がなんだか分からないんです」
女性は土下座をしながら、懇願している。
直哉は、女性を連れ込んで暴力を振るったと、警察に誤解されても嫌だなと思い、連絡をすることを止めた。
しかし、直哉はとにかくこの女性のケガの状態を医者に診てもらわないと、自分の立場が危うくなるような気がした。