ずっと、ここに16
ずっと、ここに16
朋子が直哉の店で働いて、一週間が経過した。
朋子はすべての業務を完璧にこなしていた。
ホール、会計処理、皿洗い、そして忙しい時には料理も作ることができた。
朋子のおかげで、バイトが抜けた穴を埋めることができた。
直哉は心から朋子に感謝をした。
その日は、朝から忙しかった。
「おーい、直哉、遊びに来たぜ」
一人でお店に入ってきた客が直哉に言った。
「おう、お前か」
直哉の幼なじみだった。
最近会ったのはもう半年位前だ。
「近く通ったから、ちょっと寄ってみた。ナポリタン頼むよ。大大盛りで」
「大大盛りなんてないけど、まあいいや。ちょっと待ってくれ」
その日は、朋子が料理の補佐をしていた。
直哉が朋子に「ナポリタン、大大盛りで」と言った。
「大大盛りってありましたっけ?」
「うん、あいつにだけ。普通盛りの2倍位で」
朋子が大笑いした。
直哉は朋子が大笑いしたのは初めて見たような気がした。
だんだんと心を開いてきているようで嬉しかった。
直哉が出来上がったナポリタンを幼なじみに持って行った。
「お待ち。大大盛り!」
皿をテーブルに滑らすように置いた。
「さっき、お前が話していた女性は朋子さんに似てるな」
幼なじみが首をかしげている。
直哉は焦った。
それをこいつが朋子に言ったら、朋子が混乱するだろう。
「ち、違うよ。何言ってるんだよ」
「そうだよな。朋子さん、お前のせいで出て行ったんだもんな。戻ってくるわけないか」
一般的に、幼なじみっていうのは遠慮がなく思ったことを口にする。
「当たり前だろ。さあさっさと食べてくれ。今日は混んでるんだ」
「おう、分かった。また今度飲みでも行こうぜ」
幼なじみは、ナポリタンを食べ始めた。