ずっと、ここに15
ずっと、ここに15
朋子は16時に仕事を上がり、直哉の家に戻り、掃除、洗濯、夕食の準備をした。
直哉が19時に家に着くころには、夕飯が出来上がっていた。
「疲れた日は、夕飯は外で食べよう。無理しなくていいよ」
直哉は朋子を気遣った。
「全然、大丈夫です。ありがとうございます」
朋子は和やかに応えた。
直哉は食事の後、リビングに行き、なんの気なしにテレビを見ていた。
ふと、仏壇を見ると、綺麗に整理されていた。
直哉は母親が亡くなってから、仏壇の掃除をしたことがなかった。
「朋子さん、仏壇の掃除してくれたの?」
「はい。優しそうなお母さんですね。飾ってある写真見ました」
朋子は洗い物もしながら応えた。
「ありがとう。朋子さんが綺麗にしてくれてお袋も喜んでいるよ」
「直哉さんはお付き合いされている方はいないのですか?」
朋子は皿を拭きながら聞いてきた。
直哉はどう答えるか迷ったが、本当のことを言う良い機会だと思った。
「バツイチだよ。別れてから、付き合った人はいないよ。結婚していた彼女に対して本当に申し訳なく思っているんだを俺が全部悪かったんだ」
「奥さんにどんな悪いことしたんですか?」
朋子は掘り下げて聞いてきた。
直哉は続けた。
「浮気だよ。後悔している」
「たぶんですけど、今の直哉さんが真剣に謝れば、奥さんも許してくれるのでは」
朋子は直哉の目をジーっと見た。
直哉は、その言葉が出てくるのが意外だった。
本当に彼女は許してくれるのか。
朋子は記憶が戻り、自分が直哉の元妻本人だと知ったときに許してくれるのか。
「やり直したいと思っている」
直哉は心からの本心の気持ちが口に出た。
朋子は微笑みを浮かべた。
「さあ、明日も仕事だ。早く寝よう」
直哉はそう呟いて、自分の部屋に戻っていった。