ずっと、ここに13
ずっと、ここに13
直哉は、朋子にかつて夫婦だったことを伝えるべきか迷った。
しかし、今は記憶が戻ってないので、自分の力で自然に戻るのを待った方がいいと思い、黙っておくことにした。
直哉の担当している店のバイト3人が最近急に辞めてしまった。
コロナ禍で客足が減っている中で、あまりシフトを入れられず、結果バイト料もたいした額にならなかったのが原因だ。
しかし、3人一緒に辞められると、店が回らなくなる。
募集をかけたが、応募が来ない。
このままでは、店の営業時間を短くしなければならないが、本部が許さないだろう。
家のリビングでどうしようか悩んでいた。
「直哉さん、何か、ありましたか?さっきから上の空ですよ」
朋子は直哉が深刻そうな顔をしていたので心配をした。
「うん、実は仕事のことでね」
そして、直哉は事情を説明した。
「もし、私でよければ、雇ってくれますか」
朋子は直哉に真剣なまなざしで言った。
「でも、朋子さんは少し休んだほうがいいんじゃないかな」
「いいえ、もうケガはすっかり良くなりました。お世話になっているので、何か直哉さんのお役に立ちたんです。お願いします」
朋子は懇願した。
直哉は迷ったが、了承することにした。
朋子が一緒に働いてくれるのは嬉しかった。
それと、本部からの叱咤激励という名の叱責をうけるのが嫌だったのも理由のひとつだ。