ずっと、ここに12
ずっと、ここに12
それから、そこの店で働くことになった。
朋子は客のたわいのない話も興味深く聞き、そして美人だったこともあり、朋子目当ての客が増え、店長も喜んだ。
店は繁盛した。
そして、5年ほど経ったところで、そこで知り合った一回り年上の男性とアパートで同棲をするようになった。
八木といい、背が高く、とても優しい人だった。
朋子は自分の過去を話すと、涙を流して聞いてくれた。
ただ、酒を一定の量以上、飲むと人が変わった。
「てめえ、いつまであの店で働いているんだよぉ、ふざけんじゃねぇ、男がいるんだろ!」
朋子のことを罵った。
朋子はこの人は悪くない、酒が悪いんだと思い込むようにしていた。
そして、酒が抜けるのを待った。
朝になると元の優しい人に戻っている。
そうだ、この人の本当の姿はこっちなんだと無理に思っていた。
ある夜、八木はまた酔っぱらって帰ってきた。
朋子は怯えた。
また、罵られるのか、でも我慢しよう。
案の定、八木は朋子を怒鳴り始めた。
朋子はじっと耐えていた。
八木が大声を上げた。
「なに、てめえ、黙ってるんだよ!」
言っていることが支離滅裂だ。
急に激痛が走った。
顔を殴られた。
手を出されたのは初めてだ。
一発、二発、三発と容赦なく、思いっきり拳で殴ってくる。
さらに、何発殴られたか分からない。
殺される。
朋子は外に逃げ、アパートの二階から一階へ階段を降りようとしたとき、後ろから追いつかれてしまった。
もみ合いになり、二人とも階段を転げ落ちた。