ずっと、ここに1
ずっと、ここに1
明日月曜日から土曜日まで京都に出張だ。
また出張のため衣類などの着替えの準備をしなければと思うと立川直哉は憂鬱だった。
出張は気が進まなかったが、今回は全国店長研修なので仕方がない。
直哉は、イタリアンレストラン「ボーノデリシャス」の店長をしていた。
全国展開をしている会社で、、直哉は東京荻窪の店長をしていた。
入社してから五年目だ。
直哉は今年三十才になる。
二十二才の時、学生結婚をして、お金がなく、阿佐ヶ谷の直哉の実家で結婚生活を送っていた。
妻は学生の間でも評判の美人で性格も穏やかで優しかった。
しかし、その二年後に離婚届を置いて妻は出て行ってしまった。
直哉の女性関係が派手で妻の堪忍袋の緒が切れたのだ。
その時は勝手に出て行きやがってと妻を恨み、離婚届をさっさと役所に提出した。
しかし、直哉の母親は悲しんだ。
母親は妻とは良好な関係でとても仲が良かった。実の親子のようだった。
直哉は次第に、自分の身勝手さに気がつき、妻に対して申し訳ない気持ちになった。
それ以来、結婚はしていない。
直哉が住んでいる、この杉並区阿佐ヶ谷の一軒家は、昨年に一緒に住んでいた母親が亡くなった後、直哉が一人で住むことになった。
父親は、直哉が大学生のころに亡くなった。
この家は、一人で住むには、広すぎる。
一階は、20畳あまりのリビングダイニング、8畳間、6畳間、二階は、8畳間が3部屋あった。
母親がいたときには、掃除などは母親がしてくれていたので、整理整頓がされており、綺麗であったが、直哉が一人になってからは、散らかし放題で、掃除もろくにしていなかった。
何がどこにあるのかも分からないくらい荒れた状態になっていた。
今は、主に一階で過ごしている。
二階はめったに行かないが、こちらも荒れていた。