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第19話 平静を装って

 セドリックに提示された数である百回を目指してそれぞれの型の素振りをする。

 初めはゆっくりでも良いから、とにかく型を綺麗になぞることを意識した。

 これが予想以上に難しく、時間をかければ正確に行うことは出来るが、このままでは時間が掛かりすぎてしまう。


 そう考えていた時だった。


「既にラース様もお気付きかと思いますが、規定の数を夕方までに終わらせることは不可能でしょう。身体が型を覚えれば自然に振るうことができ、掛ける時間も短くなりますが、素振りとは本来それほど難しいものです」


「ええ、正直素振りを甘く見ていました。ここまで神経を使うものなんですね」


「ええ。ですが、それは正確に行なっているという証明です。……騎士の中にも素振りは適当に行なってしまうという者も少なくありません。しかし、剣を扱う上で素振りは最も基礎であり、同時に大切なものです。どうか丁寧に行って下さいませ」


 そう告げられ、俺は「はい」と返事をして素振りを続ける。

 しかし、予想通り一つの型を終わらせるだけでも相当時間が掛かってしまい、元々遅い時間から始めたことも相まって、教わった型の半分も終わらせることが出来ないまま日が暮れてしまった。


「ここまでとしましょう。あとはお手隙の時間があれば、残りを終わらせて頂けば宜しいかと」


「分かりました。……本日は指導して頂き、ありがとうございました」


「いえいえ、私も楽しめましたよ。今後、素振りを行う時や型を確認して欲しくなりましたら、気軽に私の元へいらして下さい。いつでも、とはいかないかもしれませんが、今後もラース様への指導は私が請け負いましょう」


 流石にそれはお世話になりすぎでは、とも思ったがセドリック自身が暇があると言っていたこともあって、素直に頷いてしまう。



 

 

 その後はまたいつも通り、風呂に入りアンナと夕食を食べる。

 普段ならこの後はお茶を飲みながら談笑するか、自分の部屋に戻って休んでいたが、


「じゃあ、俺はこれからまた外で運動をしてくるから、アンナは先に部屋に戻っていて良いよ」


 素振りの続きをしなければならないためそう告げると、アンナは心底驚いた表情をして、


「まだなさるおつもりなんですか!?午前も午後もずっとされていたじゃないですか!……そろそろ休まれても良いのでは?」


 そう詰め寄ってきた。


 だが、


「実は今日、セドリックさんに剣の振り方を教わってね。そのメニューがまだ続きだから、今日の内に終わらせたいんだよ」


「剣?剣術を習い始めたということですか?」


 俺が簡単に事情を説明すると、アンナがそう尋ねてきた。

 確かに剣の振り方と聞けば、剣術を習っていると勘違いしてもおかしくないだろう。


「いや、あくまで素振りの仕方だけだよ」


「なるほど、そういうことでしたか。……ですが、お身体は大丈夫なのですか?」


 アンナは俺の言葉に納得しながら、尚もそうやって心配してくれる。

 その気遣いがとても嬉しく感じられ、むしろやる気が出てくる思いだ。


「せっかく時間を取って貰って、教わったからね。決められた回数ぐらいこなさないと。身体の方も、流石に疲れはあるけど問題ないよ」


 そう言うと、少し不安そうにしながらも、


「……承知しました」


 そう首肯してくれた。

 と、そこで同時に、



「………あの、宜しければ見学させて頂いても宜しいですか?」


 と、そんなことを言ってきた。


「見学って、素振りをってこと?あまり面白くもないと思うけど……」


「構いません。ただ、ラース様の頑張っているところを見たいと思ったんです」


(…………)


 そんな風に言われると嬉しくはあるが、妙に気恥ずかしいというかむず痒く感じる。


 アンナも自分が中々恥ずかしいことを言ったと思ったのか、「えっと、今のは……」と頬を朱に染めながら口籠もっていた。


 

 

 まあ、とにかく見学すること自体はアンナがそれで良いのなら拒否することでもない。


 なので、


「分かった。じゃあ、早速外に行こうか」


 と、気恥ずかしさを隠すように、平静を装いながらそう言った。

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