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第16話 沢山の少し

 二日目が終わって以降は、あまり変わらない日々を過ごしてきた。

 とにかく運動をして、痩せることを目標として過ごし、転生してから一週間が経過した。


 やっていることといえば運動くらいなものだが、ラースの記憶からこの世界のことをある程度は分かるため、一から勉強しなくて良いのは助かる点だ。

 とはいえ、一応この世界のことに関する本を読むぐらいはしているが。


 今日も変わらず運動をしていたが、今回は少し趣向を変えてランニングをする場所を変えていた。

 いつもは離れの近くでしか運動を行っていなかったが、本館の近くなども通りフェルディア伯爵家の敷地内を大きく使っている。


 

 ちなみに俺はこの一週間、伯爵家の敷地内からは出ていない。

 外に出て運動したり、街を見て回ったりしようかとも思ったが、敷地内は広く十分運動出来るスペースはあるし、街に関してはラースの記憶から見慣れたものだからである。

 実際に見ることはまた違うとは思うが、特に外に出る用事もなかったためタイミングを掴み損ねているという理由もある。


 と、それはともかく敷地内で運動をしていて、ランニング中に本館の近くで休憩をしている時のことだった。



「なぁ、ラース様が改心したっていう話、どう思う?」

 

「あー、あれな」


(………!)


 使用人の二人組が休憩中なのか雑談をしていた。

 ただの雑談なら特に気に留めることも無かったが、話題が俺のことだけあって気になってしまう。


「つっても、すぐに使用人連中の間でも話題になったけど、よく分からないって結論になっただろ」


「そうだけど、あれから結構経ったし改めてどうかっていう話だよ」


 やはり、俺が改心したと言ったことが気になっているのだろう。


「そうだなぁ、でもあれからラース様と話した訳でもないしな。お前もそうだろ?」


「まあ、それはそうなんだけどな」


 二人の言う通り、俺は二日目に皆に向かって謝罪して以降は本館の人とは関わっていない。

 

 そもそも罰として離れで暮らしているのだから、こちらから本館に出向くことが良いのかどうか分からないという理由が大きい。

 それでイメージ改善が出来るのか、と言われれば微妙なところだが。



「あーでも、毎日ひたすら運動してるってのは聞いたな」


「運動?ダイエットとかってことか?」


「まあ、そうなんじゃねーの?」


「………あれから毎日続けてるってことは、やっぱ本当に真面目になったってことか?」


「……まあ確かに、特に問題も起こさず、大人しく過ごしるってだけでも前とは違うしな」


 どうやら俺が運動をしていることは既に広まっているらしい。

 いくら離れの近くでしか行ってこなかったとしても、一週間も経てば誰かが気付くだろう。


 

 と、それはともかく、俺は今までの生活が少しだけでも評価されているということに嬉しくなっていた。

 アンナ以外とは特に関わっていない現状で、イメージ改善が出来るか悩んでいたが、自分の知らないところで見てくれているということもある。

 それに、ただ真面目に生きているというだけでも確かにラースとは大きく異なる。焦らなくても良いんだと思えると、気持ちも楽になる。


 しかし、そんな風に光明が差した時だった。



「でも、未だに全然信じてないやつも居るけどな」


「まあ俺たちはラース様から直接何かされたってことも無いけど、そうじゃない奴らは簡単に信じられなくてもしょうがないよな」


「だよな。………おい、そろそろ時間だ」


「危ねぇ!行くか」


 そういって二人は仕事に戻っていった。


 明るい理想から一気に現実に引き戻された感覚に陥る。

 二人の言う通り、ラースのことを信じていない人はまだ大勢いるだろう。今までの態度が態度だったのだから、それは当たり前のことだ。

 先程の二人がまだ好意的な姿勢だったため、危うく大きな勘違いをするところだった。


(まだ、たったの一週間だろ)


 そうだ、まだ一週間しか経っていないのだ。確かに短い間でも変化はあるかも知れないが、それで結論を急ぐのはあまりに浅はかだ。 

 失った信用は取り戻すには、もっと長い目で見ることが必要だ。


 そうやって自分を戒め、気持ちを新たにする。


 だがそれと同時に悲観しすぎる必要もないと俺は感じていた。

 特に何かをした実感はないが、毎日の運動も真面目に生きていることも、あの二人が肯定的に捉えてくれたということは、俺のこれまでの努力が身を結んでいる証拠だ。


 まだほんの少し、兆しが見えたという程度。未だに俺に嫌悪の感情を向けている人達だって居る。

 それでもやることは変わらない。これからも自分に出来ることを頑張ろう。

 そうやって沢山の"少し"を積み重ねて、人は大きな結果を得るんだろう。


 そんな想いを胸に、俺はまた走り出した。

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