表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

女騎士のミッション

女騎士のミッション

作者: 夏木舞冬

始めての小説です。処女作なので処女をテーマにしました

女の子の声がざわざわ聞こえる。

ふと視線を送ると数人の女の子に囲まれた赤髪の騎士が見える。

女の子達より頭ひとつ大きな騎士はセナ•ローゲル 第二騎士団所属の騎士だ。

「お疲れ様!こんな所で立ち止まってどうしたの?」

同僚のラナーシュ•ヘイルに声をかけられてハッとする。

私の視線の先を確認して「あぁ、また女の子に囲まれてるのね!ビシッと言ってやれば?」

少し呆れ顔をするラナにため息まじりに答える

「別に言う必要もないわよ」

「そう?私が婚約者だったらビシッと言ってやるけどなぁ」

女の子に囲まれる騎士セナは私エリーゼ•バンダルの婚約者だ。

父親同士が騎士学校からの親友で私達が子供の頃に婚約者になった。

子供の頃から一緒に剣の稽古をして騎士学校も一緒で騎士になってからも同じ職場。

セナにとって私は婚約者というよりは戦友なんだと思う。

その証拠に未だに婚姻の予定はない。

我が国は大陸の大きな王立国で周囲を5つの国に囲まれてる。

友好国ばかりではないので騎士は重要な職業だ。

14歳から3年間騎士学校に通い卒業後は1年間は見習い2年目からは新人なので婚約者のいる騎士は大体3年目くらいから結婚するのが普通であるにも関わらず…私達は3年目を迎えた。

「こっちに来るみたいよ?」

セナがこちらに歩いてきた。

「よっ!これやるよ!」女の子達からの差し入れだろうか…

有名菓子店の箱をセナが差し出してきた。

はぁ…お菓子に罪はないので箱を受け取り「甘いもの嫌いなくせに何故受け取るの?」と睨むように言うと「可愛い女の子からの差し入れを断るなんて騎士のする事じゃないだろ?」

と笑顔で答えるセナ。

「あっそ!ご馳走様!ラナ行きましょう」

私はラナと歩きだした。

セナはいつの間にか女の子に人気の騎士様になった。クセのある赤髪に少し垂れ目がちなアッシュグレーの瞳。

騎士らしい高い背に引き締まった身体すらりと伸びた手足。

祖父は騎士団元帥で父親は副団長だ。一代限りの騎士伯を実力で先祖代々賜ってる。

セナ自身も剣の腕は同年代では敵なしだ。


更衣室で着替えてるとラナがこれから飲みに行こうと誘ってくれたので行くことにした。

明日は私もラナも休日だ。

二人で廊下を歩いてると話声が聞こえた。

あの女は良かっただとか、胸がどーだ、こーだ。

騎士団に所属していると男達の下世話な話も馴れたもので気にもならなくなった。


気にならなくなったはずなのに、とても気になる発言が聞こえてしまった…

「この前の女が処女だったんだよー!マジ処女は勘弁だわ」

わはははーと皆の笑い声と共に…

この声は間違えるはずない!セナの声だ!

処女は…勘弁…

今時、処女性を気にするのは王族と高位貴族位なものだが・・・

子供の頃からずっと一緒の婚約者の言葉に衝撃を受けた。

衝撃を受けたまま王都にある大衆向けの酒場でラナとエールを飲む。

もやもやした気持ちで何杯目かのエールを飲んだところでラナに問いかけた

「今時、処女って笑えないの?」

ラナはエールを吹き出しそうにしながら「ちょ…っ…さっきの気にしてるの?」

「べっ・・別に気にしてるわけじゃないけど…」

「がっつり気にしてるじゃない!」

「気にしてるんじゃなくて、気になっただけよ!」

はぁ~とため息をつきながら「男によるんじゃない?まぁ私は逆に童貞君大歓迎よ!」ニヤっとしながらエールを飲み干す

ラナはウェーブがかった金髪碧眼の涼し気な目元に妖艶な雰囲気で経験豊富だ。

「気になるなら愛しい婚約者に、さっさと捧げなさいよ」

私は盛大にエールを吹き出してしまった。

愛しの婚約者・・・そう・・・悔しいけれど私は子供の頃からセナが好きなのだ

だけど初恋を拗らせ素直になれず…騎士としての矜持もあり甘えたりなど出来ない。

だからこそ戦友みたいな感じになっているのだ…

「ラナーシェとエリーゼじゃない!!」

声をかけてきたのは同じ騎士団に所属しているダンの婚約者のハンナだった

「久しぶりね!ダンとは上手くいってる?」

「まぁそれなりね!ところで!私の友達が今日騎士団に見学に行ったらしいんだけど相変わらす赤髪の騎士様は大人気だそうね!」

「「・・・」」二人で微妙な空気になってるとハンナが怪訝な顔で訪ねてきたのでラナが今まで話していたことを面白可笑しく話し出した。

私は黙ってエールのおかわりを飲み干し更に追加した。

「私もラナーシェに賛成だわ!さっさと済ませなさいよ!今時結婚まで清い関係って・・・」

「婚約してるんだから結婚してから相手が下手くそだったら最悪よ!」

「赤髪の騎士様に限って下手はありえないでしょ!?」

「それもそうかー」

二人は笑いながら何でも無いような事みたいに話してる・・・

だけどね?上手い下手って何基準?そもそも処女は勘弁って言ってたのよ?

「私決めたわ!」高々に宣言する。

二人の視線が何を?って言いたげだけど・・・

「処女が勘弁なら処女じゃなくなればいいのよ!!」

「「はぁ???」」

そうと決まればはやかった。

ハンナの平民の同世代の子達は自分達で相手を探して結婚するから毎週の様に出会いを求めて酒場に繰り出すそうだ。

今もハンナの友人はハンナを置いて2階の時間貸し宿に行ってるそうだ。

なので友人が戻ってきたら紹介してもらって来週からご一緒させてもらって私も相手を探すことにした。

そんな私にラナは「いや…そもそもさ、セナはエリーの事言ってたわけじゃなくない?」

そうだけど!誰か限定ではなく処女全般に対して言っていたのだ。

酔った勢いも手伝って変なスイッチが入った。

「友達を紹介するのはいいけど本当にいいの?後悔しない?」

「いいの!逆に処女で嫌な顔されるほうが嫌よ!」

かくして私のミッションは決まった!

「まぁ気が済むまでやってみたら?失敗するに100ギルかけるわ」

「もぉ~ラナーシェったら!じゃぁ私は成功するに100ギルよ!」

その後無事に友人を紹介してもらい来週会う約束をした。



約束の週末ラナに休みを代わってもらい待ち合わせ場所に着くとハンナの友人のリリアナともう一人いた。

ブレンダだと紹介された。

リリアナは亜麻色の肩までの髪でこげ茶の瞳小柄でほっそりしている

ブレンダは黒目黒髪のエキゾチックな雰囲気だ。

先に出会いのルール?的な事を教えてもらった。

毎回必ず宿に消えるわけじゃない事、どこかに行く時は言付ける事、お互いの素性はペラペラ話さない事など・・・

とりあえず私は騎士であることは伏せて王城で働く公務員ということにした。


初日…私は惨敗だった…スムーズに話す2人をよそに何を話していいのか分からず笑顔で見てるだけ…次の週末も…その次も…

はぁ・・・私こんなだったけ?別に男性と話すのは苦手ではない。

でも出会いの場で好まれる会話が苦手だと気付いた…。

「その様子だとうまく行ってないみたいね?もうバカな事はやめたら?」

仕事が終わり着替えてるとラナから図星の一言だ…

「そうね思ったより難しわね」

今日もリリアナ達と約束している。

2人は私に気を使ってるのか、いつも最後まで私といてくれる。

今日はいつもの大衆酒場ではなく男性が好むビリヤードや妖艶な歌姫がいる酒場だ。

「今日は落ち着いた店だからエリーもリラックスして楽しめるといいわね」ブレンダがほほ笑みながらグラスをむける。

今日は気安く話かけてくる男性もいなくてゆったりとした曲を聴きながらのんびりと3人で飲んでる。

完全に2人に気を遣わせてしまった。

「化粧室に行ってくるわ」2人に告げて席を外したら店員と酔った客が揉めてるようだ

騎士として止めたほうがいいか…

近づこうとしたら男性の腕が伸びてきた。

顔を向けるとフワフワのチョコレート色の髪の細身の男性が「危ないから僕たちに任せて」とウィンクしながら店員の方に近づき一人が店員をかばうように立ち、ウィンクした男性が客の方に行き「外で話そうか」と喚いてる客を外に引きずり出して行った。

見た事ない顔だったが騎士だろうか?


席に戻りしばらく飲んでいると先ほどのチョコレート色の髪の男性が横を歩いてく、つい目で追ってしまったら目が合った。

「あれ?さっきの子だね」ほほ笑みながら声を掛けられた。

「あっどうも」咄嗟にどうもって…我ながらセンスがない。

「カイルー!!」後ろの方から誰かを呼ぶ声がする。

チョコレート色の髪の彼が右手を上げて応えてる

「友人が呼んでるのでまたね!」ウィンクしながら行った彼を見送ると「何?何?」とリリアナが興味深々で聞いてくるので先程の事を説明する。

ブレンダが「彼いい感じじゃない!」いい感じなのか?見た目は確かに整っているけど…なんか軽そうな気がする…

私のミッションは成功の兆しがしないまま時間だけが過ぎていく。

次の週も同じ店に行くと、あのチョコレート色の髪の彼カイルと会った。

その次の週も…

1か月が過ぎた頃には顔見知り程度にはなり少しづつだが会話もするようになった。

まぁ当たり障りない会話ばかりだけれど。


ラナと昼食を食べる為に騎士棟の食堂に行くと赤い髪が見えたセナだ!

「なぁお前さー毎週末いったい何してるんだ?」

「えっ…何って…?」一瞬ドキっとする。

「いつも誰かに変わってもらって休んでるだろ?」

あぁ流石にバレたか…騎士という職業柄休みは不定期で週末が休みのわけじゃない。

「私にも色々あるの!」何の言い訳にもなってないが…本当の理由なんて言えるわけもない…

「何だよ色々って?家族になにかあったのか?」家族…幼い頃から家族ぐるみの付き合いなのでセナは心配してくれたのだろう。

「違うわよ!個人的な理由よ」

「へー…まっ変な男に引っかかるなよ」頭をポリポリしながらセナは離れて行った。

「何?今の?」ラナの方を向きながら呟くとラナは呆れたように「エリーが毎週酒場で目撃されてるからじゃない?」「えっ!?」意外な盲点だった…よく考えれば王都の酒場は騎士仲間だって居る。

「そろそろ2か月だし潮時なんじゃないの?」潮時…何の成果もないまま?そんなのは嫌だ。

もうただの意地になてる事は自分でも分かってる。

「もう少しだけ頑張るわ」はぁ…と息を吐きだしながら「頑張る方向性変えない?」方向性?

「意味が解らないわ」ラナ曰く攻略で婚約したのに婚約者がが自分の想い人なんて奇跡は贅沢だ。それも人気がある男性。処女は1度だけなのだし2回目からは処女じゃない。

気にする事じゃないんだから、さっさと捧げるかとっとと結婚しろと…

「私達って子供の頃に婚約したけど…セナは忘れてるかもしれないわ」

どうゆう事だとラナは気概な顔をしてる。

私達は7歳で婚約したのだけど…今日に至るまでデートもした事もないし贈り物もしたことがない。

誕生日のプレゼントもだ…貴族は婚約者同士なら頻繁に婚約者同士でお茶会もするが…私達はしたこともない

16歳のデビュタント以降一緒に夜会にも出席した事もない。

婚約者らしい事など皆無だ。

子供の頃から一緒に剣の稽古をしてライバルのように競い合ってきた。

騎士になってからは女の子にモテるようになり遊んでる噂を耳にした。

私はセナが好きだけど…セナの気持ちはわからない。

子供の頃から家族ぐるみの付き合いだから、その辺の令嬢と同じ扱いじゃないだけだ。

幼い頃の二人を思い出しながら微妙な気分で昼食を食べ終わり午後の訓練も終わりの頃隊長が号令をかけた。

「再来週の騎士試験の為の人員について張り出してある!各自確認して備えるように!」

王都の騎士学校以外に騎士になるには地方の2年制の学校を出るか1年に1度の騎士試験を受けるかしかない。

「流石に週末休めないわよ?」ラナがどうするの?と言わんかりに告げた。

潮時…ラナが昼食の時に言った言葉が頭に浮かんだ。


その週末リリアナ達にあと1回でこの会を辞める事を伝える。

すっかり仲良くなった2人は寂しがってくれた。

ミッションは成功してないが2人との友情は日々強くなった。

「じゃぁ今日は大衆酒場にしましょう」リリアナの提案で一番大きな酒場に向った。

いつもと同じ様にエールを飲んでいると何人かに話かけられたが…やっぱりうまく話せない。

もう諦めようかな?と思っていると「奇遇だね!」チョコレート色の髪の男性が話かけてきた

「カイル!」「こんな所で会うと思わなかったよ」

カイルといつも会うのはビリヤードがある店だ。

大衆酒場でカイルに会うなんて私も驚いた。

いつものようの当たり障りない会話をしてカイルは友人の所に戻った。

「ねぇ彼って本当に素敵よね!」ブレンダが言う

「もうこの際彼にしたら?」リリアナも続ける。

急にそんな事言われても…悩んでる私をよそにリリアナが続ける「後1回って言ってたけれど…自分で行動しなきゃ何も始まらないわよ?」確かにそうだけれど…ブレンダが私を見ながら「もう諦めて婚約者に捧げる方がいいんじゃないの?」その一言で私の中の何かが弾けた!

かと言って素面じゃ無理…エールを一気に飲み干し勢いつける!これでダメなら諦めよう

飲みすぎてフラフラになりながらカイルに話かける

「カイル時間ある?」

カイルは少し驚きながら「もちろんあるよ?時間があるからここで飲んでる」

それからカイルの横に座って何杯目か分からないエールを飲んだ所までは覚えてる



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


パチッ…目が覚めると知らない寝台の上だった。

えっ!?

隣を見るとチョコレート色の髪が見える…

え…え?ええぇ!?

落ち着け私!!取り合えず逃げよう!!

気付かれないようにそーっと寝台を出て床に脱ぎ散らかしてある服を着る

「ん~っエリー?」気づかれた!!バクバクする心臓を感じながら慌てて部屋を飛び出した。

無我夢中でラナの家まで来たみたいだ

ノックを何度かすると眠そうなラナがドアを開けてくれた。

「エリー?どうしたのこんな時間に?」部屋の中に入れてもらい事情を説明する

ラナが淹れてくれた紅茶を飲みながら「記憶にないけど…シタのかしら?」

「それは分からないけど痛みや不快感はあるの?」そう聞かれるとよく分からない。

痛みはないけど体の不快感はある。飲みすぎからくるものなのか…

「とりあえず痛みはないわ」

考えても答えは出ないまま家に戻る事にした。


次の週末はリリアナに断りの手紙を出した。

騎士試験の準備で我が第二騎士団も忙しく、何より偶然にでもカイルに会いたくなかった。

何となくセナにも会いたくなくて淡々と過ごしていた。

騎士試験も無事に終わり120人の参加者の内30人が合格となり1か月間の研修は第二騎士団で行われる。


同僚たちと廊下を歩いている時だった「エリー!?」急に呼び止められた。

「…カイル!?」驚ろいた…目の前にカイルがいた

「王城で働いているって騎士だったの?」「えぇ…」同僚達の視線が痛い。

どういう態度をとっていいのか分からず挙動不審になってしまう。

「あれから会えなかったから会えて嬉しいよ!」どうしよう気まずい…ダラダラ汗が出そうな感覚がする。

「エリーもう行かないと」ラナが助け船を出してくれた。

「それじゃ行くわね」平然を装ってその場を去る。

カイルが着ていた服は訓練生の制服だ。


仕事を終えこれからどんな顔をしてカイルに会えばいいのか…そんな事を考えながら更衣室に向かう途中数人の騎士が歩いて来た。

「エリー!!」嬉しそうに駆け寄ってくるのはカイルだ。

「知り合いか?」ハンナの婚約者のダンが私とカイルに視線を送る。

「さっき話してた女性ですよ!」カイルがダンに答える

「えっ…あれエリーゼの事だったのか…」困惑しながらダンが後ろを振り返る。

カイル以外の騎士も視線を後ろにむける。

そこに居たのはセナだった。

見るからに不機嫌そうな顔をしている。

え?何?さっき話してたって…まさか!動揺を隠せずオロオロしているとセナに腕をつかまれた

「ちょっと来い!」セナに腕をひかれながら連れて行かれる

カイルが止めようと腕を伸ばしたところをダンが止めている。

そのまま裏庭に着いたとき「何やってんだよっ!」セナが大声で詰め寄る「なっ何って…」「一緒に泊まったんだろう?」サーと血の気が引く。

処女は捨てたかったが、こんなふうに露呈するとは思わなかった。

「セナに関係ないでしょう!」「関係あるだろうっ!婚約者なんだぞ!!」セナは苦しそうな顔をしながらも私の目を捕えてる。

「アイツが好きなのか?」今度は悲しそうな顔で尋ねてくる

「別に…好きじゃない…」「じゃぁ何でそんな軽率な事するんだよ!!」

「だって…」処女は勘弁…頭に浮かぶ…「だってなんだよっ!」「セナが処女は勘弁って言ってたんじゃない!!」あぁ言ってしまった。

「…はっ?…」セナがフリーズしながら何かを考えてる。

しばらく間が空いてセナは額を手で覆いながら「あれか…」ボソと呟く…

「あのなーあれは娼館での話だ…」「娼館?」はーと息を吐きながら「娼館ってのは…その…そーゆー事しに行く所だろ?それなのに相手が処女じゃ…その…な?」

無理やり言い訳してるのだろうか?私だって娼館は知ってるし、騎士連中がよく行くのは知ってる。

娼婦はいわばプロであり処女のわけがない。

「そんな事ありえないわ!」「たまにあるんだよ!店に入ったばっかりの子を常連が…って今はそんな話じゃないだろ!」

「・・・」私が黙っていると「もしかして…お前アイツと…?」

ドキっと心臓が跳ね上がる。

何も答えられない…私にも分からないのだ…

「クソっ」ドンっと壁を叩く音がした。

その瞬間セナは走り出していった。

何故こうなってしまったのか…後悔があふれ出る。処女を捨てたいと思ったけど…セナにあんな顔をされると思わなかった。

トボトボと更衣室に向かう。


廊下が騒がしい。何かあったのだろうか?

ダンとラナが走ってくる。

「エリー!何があったの!?」「えっ?」「セナがカイルに決闘を申し込んだぞ!」ダンが慌てた様子で告げる。

決闘???何故???

「どうゆうこと!?」「私も詳しくは分からないけど、多分エリー絡みでしょう?」

「とりあえず行こう」ダンに促され演習場に向かう。

向かいながら今日話してた内容をダンが教えてくれた。

好きになった女の子と宿に泊まったが朝起きたら消えていて家も知らなくて探していたら今日騎士団で再会したと…

「まさかエリーゼだとは思わなかったけどな…」「そうなの…でもなぜ決闘に?」「そりゃ婚約者を獲られたらそうなるだろ?俺達は騎士だ」「婚約者と言っても名前だけよ?」「えーっと…認識の違いはセナと話し合った方がいいな…」


演習場に着いた時には2人が向き合って剣を構えていた。

カキーンカキーンと剣が交わる音がする。

「あのセナ相手によくやってるな!」

しばらくして剣が地面に落ちた。カイルの剣だ…

セナが拾いカイルに渡してる。

二人が私に気づいて近づいてきた。

「セナ…どうして?」バツの悪そうな顔をして頭をポリポリしている。

口を開いたのはカイルだった…「エリー僕達は何もなかったよ。酔って寝てしまって家が分からないから泊まっただけだよ」

何故かホッとした「ふふっ僕は失恋したみたいだ」ウィンクしながら去って行く。

「後は2人で話せよ」ダンがセナの肩に手を置きポンポンした。

セナは相変わらずバツの悪そうな顔をしてる。


皆が去った後時計を見ながら「この時間ならまだ居るな…行くぞ」何処に行くのだろうか?

でも今は何て声をかけたらいいのか分からずにセナの後を着いて行く。

着いたのは団長室だ。セナがノックをすると「誰だ?」中から声がする「セナ・ローゲルとエリーゼ・バンダルです!」「入れ」ドアを開け中に入る「2人揃ってどうしたんだ?」

セナが騎士の礼をとり「バンダル団長!結婚の許可を!」へっ!?結婚?「ちょっと待ってよ!」

「待たない!」「急に何なのよ!」私達が言い争っていると「娘は納得していないみたいだが?」

「俺はもう待てません!」「だから何でそうなるのよ!」「好きだからに決まってるだろう?また変な虫が付く前に結婚する!」ごっほんと咳払いをしながら「とにかく!落ち着いて話合いなさい2人が納得すれば結婚はもちろん認めるよ。少し席を外すから」父が出て行ったのを確認しながら「急に意味が分からないわ」

「分かるだろ!」「いきなり結婚って…」「婚約者なんだから問題ないだろう?」「婚約者らしい事なんて1度も無かったじゃない!」「らしい事?」「二人で出掛けた事もないし、贈り物すらなかったわ!」

「それは…学校でも職場でも毎日顔を合わせてるのに休日に誘うのも…贈り物はお互い様だろ」

「それでも…」「エリーは俺が嫌い?」悲しそうな顔で尋ねてくる…私はセナが好きだけど…セナは…?

すーっとセナが床に片膝を着き「エリーゼ・バンダル」真っ直ぐに私の目を見つめる。

「ずっと好きだった俺に君の夫になる栄誉をくれないか?」

伸ばされた手を見つめる…涙で霞む…「私でいいの?バカな事をしようとしたのに…」

「俺のせいだろう?未遂で済んで良かったよ…手を取っては貰えない?」

私はセナの腕を取る「私で良ければ」「お前が良い」笑顔で抱きしめられた。

ガチャリとドアが開く「まとまったかな?」父と副団長が入ってきた。

「愚息をよろしく頼むよ」


私のミッションは失敗してしまったが…半年後に達成された



FIN






























設定が甘くてすいません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ