-はるのいろどり-
-はるのいろどり-
『枝垂れ紅葉と蒼空』
まるで虹のよう
蒼空に映える紅葉の彩り
自然の妙
山の恵み
春のおくりものを受けとった
そんな気持ちになる
日を浴びる枝垂れ紅葉はとても美しく、
彩り豊かな、その生命の輝きを映すように、
鮮やかに、鮮やかに、
見つめている眼の中へと、その命が映る
春の息吹きを感じる蒼空
虹を映す枝垂れ紅葉
春を浴びる
-◇◇◇-
『紅葉とツツジ』
茜と紅
新緑に映える赤
赤い実をつける紅葉
燃えるような赤き葉の色
艶やかな紅き実の色
秋かと錯覚を覚えつつ、ツツジをその奥に見つけた
ああ、やはり生命の息づく春だ
鮮やかな緑と赤い花
そして燃えるような紅き葉
燃えるような赤い、春の日を見る
-◇◇◇-
『ツツジの赤』
ツツジには日の光が似合う
日を浴びて、生き生きと、のびのびと、
嬉しげな気持ちが、伝わるよう
赤い彩りは日を受けて、
周りを照らすように、光を放っている
元気に咲く花から、元気をもらっている
赤く色づくツツジ
生きる力の赤く彩られた光から
日の光と生命の光を受けとる
花笑み
ふと、そんな言の葉が浮かんだ
-◇◇◇-
『コケ』
日陰の緑
苔たちの広がる緑のカーペット
杉の葉のような苔の間から、
緑色の星形の傘が伸びてくる
苔の花、蒴
胞子を付ける、花のようなもの
胞子ができるのはもう少し先
苔の花の季語は夏
その頃には、
杉の葉のような苔からも、
苔の花が咲くのだろう
夏が楽しみだ
-◇◇◇-
『華鬘草』
ハートの連なり
赤い鈴の並ぶ様にも見える
仏具の華鬘に見えるところから、ケマンソウ
そう呼ばれる花
なぜ好きか、理由はわからないけれど、
好きな高山植物、コマクサの花に似ている花
花のかたちが釣られた鯛にも見えるので、
タイツリソウとも呼ばれているらしい
赤い身体と白い尾びれの鯛にも見えるのか
ちょっと鯛には見えない気がする
釣り上げられ、木陰で並ぶ鯛の群れ
大漁、大漁
そう思いつつ、そっと花の連なりを眺める
-◇◇◇-
『朽ち木』
倒れた樹
かつて生きていた生命の跡
今はたくさんの命の苗床
苔たちの楽園が広がる
枯れた樹を土台に芽吹いた苔たち
いろいろな姿をした苔たちが、
葉を付けなくなった幹に根付き、
緑の色を広げてゆく
生命は受け継がれてゆく
新たな春の息吹きが訪れる
-◇◇◇-
『タンポポ』
旅立ちのときが近づいている
ゆるやかな春の風に乗って
綿毛を付けた種は、
やがて新しい世界をめざす
春風と共に、高く高く舞う種
ゆく先は山だろうか?
海まで行けるのだろうか?
道の脇か、それとも川縁か
知らない世界、見たこともない景色
綿毛の種たちは風と共に、
どこまでもどこまでも、旅をゆくのだろうか
仲間や兄弟たちと一緒に行くのだろうか?
それとも、
どこへも行かずに、
母草のタンポポの傍らへと根を降ろし、
兄弟たちの旅立ちを見送るのか?
遠くへと旅立ち、
あちらこちらを風と共に旅したのちに、
ここへと戻り、母の隣へと根付くのだろうか?
春の旅立ちと冒険の夢
そんな景色へと想いを馳せる
-◇◇◇-
『芽吹き』
蕨に似た可愛い芽を見つけた
小さく握りしめた手の様な芽吹き
盆の頃に通りかかると、
青々としたシダが大きく葉を広げている
そうした景色を芽にしている石垣の傍らだ
今はまだ小さくて、弱々しげに見えるけれど
やがて精一杯に手のひらを開き、日を浴びて、
大きく大きく日の光を掴み取るのだろう
がんばれ……
石垣の苔の隙間から覗いた小さな手へと、
ちいさく声援を贈りたくなる
急な坂の石垣へとしゃがみ込んで眺めた、
穏やかな春の日差しの中の事
-◇◇◇-
『金魚の池』
水音が聞こえる
小道を近づくと、
大きく育った金魚の姿が目に入る
寒い冬を越して、じっと春を待ち
暖かな日差しに温んだ池で
春の日を楽しんでいるようだ
ぱちゃぱちゃという音と
広がるいくつもの波紋を見ながら
主人の訪れと勘違いされたのかと感じた
ふと、笑みが浮かぶ
舞い踊る艶やかな姿と、
揺らめく波紋と、
暖かな春の日差しと、
金魚たちの涼やかな姿
水面と金魚との共演
穏やかな春の宴を満喫する
-◇◇◇-
『おどるおどる』
舞い踊る金魚
水音たてて
水面を揺らす
水面が揺れて
景色が踊る
踊る踊る
踊る金魚
水面と共に
舞いを舞う
春の喜びの舞いを
-◇◇◇-
『石斛』
子供の頃の記憶
庭の五葉松の枝から宙に下げていた、
両の手で抱えるほどのセッコクの塊
土に植えない花
針金で浮いている草
宙に浮かせたシノブ玉は、
とても不思議なものだった
タケノコやツクシのような節のある茎
厚い丈夫な花びらと淡い色合いの花
淡く色づく白い花
あの頃の家にはたくさんの樹や草や花があった
今はもうなくなった家の景色
もういない父と祖母
あの頃のように咲くセッコクを見ながら、
あの頃のことを懐かしく思い出す
思い出はあの頃の春の景色へ
今と同じように、あの頃も穏やかな春だった