入隊1日目です!
「ユリです。若輩者故、至らぬ点も多々あると思いますが
ご指導の程宜しくお願い致します」
そう言って頭を下げると、
「俺っ、アスラン=リーブス宜しくね、ユリちゃん♪」
「可愛いねー恋人いるの?え?いない?俺!立候補するよ!ジョンって呼んでね」
「おい、どけよっ、ユリちゃん僕、レオナルド、レオって呼んで!」
次々に俺だ僕だと自己紹介してくるが、さすがブロングランク、緩いな。指揮官もその様子を見てアクビしているし、緊張感がまるでない。
ブロンズランクは午前中に軽く訓練して、警備や見回り、事務仕事など交代制で勤務するらしい。あまり体を動かさないから筋トレしとかなきゃ鈍りそうだ。
お昼を知らせる鐘が鳴る。今日から食堂が使えると昨日ローラから聞いて楽しみにしていたんだ。
ダッシュで食堂に向かうと
まだ誰も来ておらず1番のりだった。
トレーを持って厨房を覗くと
「おや?もしかしてアンタかい?新人に女の子が入ったって聞いたけど」
白いエプロン姿の40代くらいの女性。栗色の髪を後ろで一つに束ねて、少しふっくらとしている。優しそうなお母さんという印象だった。
「はいっ!ユリと申します」
「あたしはステラ、細いねぇ
量は少なめの方がいいかね?」
「いえっ!特盛りで!」
「特盛りぃ!!?初めて聞いたよ、特盛りって、このくらいかね?」
お皿に炒め物とご飯を入れて見せてくれるが全然足りない。
「いえ、もっと!」
「もっと!!?じゃ、このくらいかい?」
注ぎ足してくれるがまだ足りない。
「もっとですっ!」
「えぇぇぇ!!?」
お皿にこれでもか!と盛りに盛られた料理を見て大満足で席につく。
「お前は牛か?何人前だそれ」
頬袋に炒め物を詰め込んで咀嚼しながら振り向くと、アベルだった。
「ほぅも」
軽く頭を下げて、また食事に戻る。
「・・・・まぁ、いいお前に聞きてぇ事があんだよ」
テーブルにトレーを置くと向かいの席に座る。
「お前ビーナス孤児院にいたか?」
「!!」
驚いた、なんでそんな事知ってるんだろう?頷くと
「やっぱりか、お前行方不明者リストに載ってんぞ」
「!!?」
目を剥いた。行方不明!?なんで?まさか両親が私を探してる?とか?
「奴は正式な手順を踏まずにお前を攫った誘拐犯ってわけだ」
ニヤリと笑う。
ぎゃあ!違った!そっちか!
カルロが誘拐犯になってる!
「ふぁんんへふー!」
ブンブンと首を横に振る。
否定せねば、いつここに来るか分からないのだ。
「・・・言いたい事はなんとなく分かるが、お前、自分から奴に付いて行ったのか?」
「ほぅへふー」
何度も頷く。
「なんで付いて行った?」
眉間にしわ寄せ「解せぬ」と顔が言っていた。ごっくんと炒め物を飲み込み答える。
「私、人身売買のグループに捕まりそうな所をカルロに助けてもらったんです!」
一瞬驚いた顔をしたアベルが
「・・・・そうか」
俯き静かにそう言って立ち上がる。
「リストからお前の名前は外しておく」
そう言ってトレーを持ち上げる。
「食べないんですか?」
「食欲が失せた」
「あ、じゃあ、私が」
「まだ食うんかい!!?」
驚愕の顔で突っ込まれるが、
捨てるなんて、もったいない。この日妊娠3ヶ月になったおなかをポンポン鳴らしながら、入隊1日目を無事終えた。ゲフッ。