02
『適正な世界へ転送が完了しました。これよりインストールを開始します。』
「おーい、大丈夫ー?生きてるー?」
誰かの声が聞こえる。俺はどうなったんだっけ?
確か……佳奈美を探しに噂の路地裏に行って、そこで佳奈美に……
「そうだ佳奈美!!」
俺はすぐさま体を起こした。
「うおっ!?」
「此処はさっきの路地裏?夢でも観てたのか?」
「夢じゃないと思うけどなぁ。」
「え?……っうわああああああ!?」
ビックリした全然気づかなかった。
「そんな人をお化けを見た様な反応しなくても良いじゃない。」
そこに居たのはさっき出会った。佳奈美によく似た女だった。
「お前誰だよ!?」
「私の名前は里中佳奈美だよ。」
名前まで一緒!?こんな偶然があるのだろうか……?
「お前の好きな食べ飲み物は、二ミリ矢サイダー……。」
「おお、よく知ってるね……って当たり前か。」
「俺だけが知る佳奈美の秘密は、髪の毛で隠れていて周りにはなかなか気づかれないが、右耳の後ろに……」
「ほくろがある……でしょ?」
やっぱり間違いない。此奴は俺の知っている里中佳奈美と同一人物だ。
「この状況を説明してくれないか?後、お前の正体も。」
「分かったよ。ただし質問は一つ一つね。まずは何が知りたい?」
「お前の事について。」
「だから私は里中佳奈美だってば。」
「あー、分かった。じゃあ質問変えて、此処は何処だ?確か俺は穴に落ちたが……。」
「此処は貴方から見れば裏世界だね。一部では異世界なんて言われてるみたいだけど。」
「裏世界?やっぱり夢でも観てるのか?」
「ちゃんと説明するから。まず、貴方が生きている世界をAとして、私達が生きてる世界はB。つまり貴方から見れば私は、パラレルワールドの住人なんだよね。要するに、貴方の世界では起こらなかった事がこの世界では起きている。まずここまでは分かった?」
「ああ。」
俺はあのワームホールの穴を潜ってBの世界……パラレルワールドに来てしまったらしい。
正直全然信じられないけど。
「次に貴方の首に付いているバングルについて。」
それが一番謎だったんだ。これを付けた瞬間、それから穴に落ちた。多分これが関係しているのだろう。だが、それ以外の事は俺には知らない。
「それでこれは一体何なんだ。」
「それは、コード・ナンバー……通称CDNって言って、貴方の番号を表す物。」
「番号?」
俺は首を傾げた。
「この世界の私が住む街、時加計市には、九百九十九までの番号を当てられた者達が居るの。」
「って事は、何か悪い事した連中に当てられる囚人番号的なやつか?俺悪い事した覚え無いんだけど。」
「多分囚人番号より立が悪いかも。」
その言葉を返した彼女の表情は何処か悲しげだった。
「どういう意味だ?」
「これは別に番号には意味は余り無いんだけど、この装置自体に意味があって、これを身に着けている者は、長くは生きられない。」
「はぁ!?じゃあ俺は……」
「心配しなくていいよ。直ぐに付けたばかりじゃ、それなりに生きれるから。」
「お前はどうなんだよ?」
「私はー……後五年位かな。」
「そうか……。」
彼女が悲しげな表情を見せた理由が分かった。もし俺が彼女立場だった、絶対にその絶望に耐えられない。
でも彼女は辛さを顔に出すものの、必死耐えている。きっと、俺をこの世界に呼んだ理由がこのバングルと関係がありそう気がする。
「何かあっさり信じるんだね。」
「顔に出てるから分かる。」
「嘘!?マジかーあははは……。」
「理由。」
「え?」
「俺をこの世界に呼んだ理由だよ。それを教えろ。出来る事ならするから。」
「あ、うん。えっとね、実は私にはあるメンバーに属していて、そのメンバーの中にあなたも居たの。数か月前に姿を消したんだけどね。」
「消えた理由は?」
「分からない。ただ貴方の部屋の机から手紙とバングルが置いてあった。」
「手紙には何て?」
「色々書いてあったけど、重要なのは貴方が今、付けているバングルで時を超えて、そのバングルを裏世界の俺に渡せだったか書かれていて私はそれを実行した。ただそれだけ。」
思ったより曖昧な理由で、俺をこの世界に連れて来たらしい。これじゃあまず、何をすればいいか分からないぞ。
「その手紙は今何処にある?」
「貴方の家だけど?」
「じゃあまずは、その手紙を俺自身が読まなきゃな。お前の説明じゃ当てにならない。」
「えーひどーい。」
「良いから行くぞ。」
幸い今いる場所は、さっきの裏路地みたいだ。これなら道は分かるな。
俺は裏路地を抜け、自宅へ向かった。その後ろを佳奈美も付いてきた。
「そういえばお前、今までこっちの世界に送った人間はどうした?」
「ん?貴方がこの世界に来て、寝てる間に全員元の世界に返したよ。」
その返事を聞いて俺は心の中で安心した。