01
俺の住む街では、ある一つの噂が流れている。
それは、夕方から夜に現れる銀色のバングルを身に着けた少女に出会うと、殺されるという謎の噂。
実際に街では何人かの行方不明者が居る。行方不明になった人は未だに一人として家族の元に帰っていない。
更に不気味な事に消息不明になっている人間は必ず、ある街の裏路地で必ず姿を消している。
警察がその裏路地を調べたところ、血痕は全く無く、失踪者達の荷物までも消えている。
まるでそのまま何処かに消えてしまった様な……。
一週間前に俺の幼馴染の里中佳奈美が姿を消した。消えた日の夕方、その裏路地に友達と一緒に噂の真相を確かめる為に連れられて、その友達と共に姿を消した。
無論、荷物は見つかっていない。
そして俺は今日の授業を終えると、噂の裏路地に向かった。
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時刻は六時四十六分。人一人見当たらず、何の音も聞こえない。
路地裏に着いたものの、この後如何すればいいか分からない。
そこら辺にでも周ってればいいかな。
溜息を吐いて、歩き出そうとした瞬間……。
「貴方は誰?」
背後から女の声がした。
「顔を見せなさい。」
後ろから刺されるんだろうか……。とりあえず今は従うしかない。
背後の女に顔が見える様に手を挙げ、目を瞑りながらゆっくり後ろを向いた。
「っ!?貴方目を開けなさい!?」
何だろう?今彼女が凄く驚いた気がしたんだが……。まぁこっちには拒否権なんて無し、従うしかない。
俺は恐る恐る目を開けた。そこに居たのは幼馴染の佳奈美だった。
「お前、今まで何処にい……」
「やっと会えた。」
「へ?」
「やっと会えたよ。この世界にちょくちょく来てたけど、この場所から余り離れられないから。」
様子がおかしい。この世界とか意味分からない事言ってるし……。
「お前誰だ……?」
「あっそっかー。こっちだと初対面だもんね。」
「言ってる意味が分からない。この世界だとか初対面だとか何処か頭でも打ったか?」
「別に打ってないよ。取り敢えずせっかく会えたから、連れて行かなくっちゃね。」
彼女はポケットからバングルを取り出した。
「連れて行くって何処に!?」
「私達の世界だよ。大人しくコレをはめてもらうよ。」
そう言うと彼女はすぐさま間合いを詰め、無理やり俺の腕にバングルを付けようとする。
それを俺は必死に抵抗する。
「何すんだよ!?止めろ!」
「貴方には、私達の世界に来てもらわなきゃ困るの!」
「だから私達の世界って何なんだよ!?」
「私達の世界は、私達の世界だよ!」
「だからそれが意味分かんな……うわっ!?」
「きゃあ!?」
お互いに態勢を崩した。その瞬間、首元にバングルが当たった。
『承認シークエンスに入ります。』
何かの機械ボイスっぽい声が聞こえた。その瞬間、首元に何かが纏わり付いた。
『ERROR……ERROR……この世界では適していません。このナンバーズが生まれた世界へ転送します。』
「腕じゃなかったけど、取り敢えず身に着けたね。」
『転送シークエンスに入ります。』
何が起こってるんだ?全く理解が追いつかな……。
「うわっ……」
地面にワームホールみたいな穴が開き、吸い込まれる様に落ちて行った。
落ちていく中で、「私も後で合流するから。」という声が聞こえた所で、俺の意識は途絶えた。