#5 アレックスは50000ゴールドを失う
俺はアレックス。街で兵士をやっている。
ひょんなことから王様に目をつけられて
魔王討伐の旅に出ることになった。
魔王が攻めてくるまで3日ある。
そこで俺は情報を集めることにした。
幸いなことに出店のおばちゃんに周囲の事を聞いた。
有力な情報を教えてもらった。
いわゆる最強アイテムの在処だ。
そこまではいい。だけど俺は道に迷ってしまった。
道に迷って1日ずっと無駄な時間を浪費した。
3日のうち1日を無駄にしたってわけだ。
それで俺は焦って発狂した。
俺にできないことはないはずだったから、
できない俺が許せなくて気が動転したんだ。
勇者にはよくある話さ。
だけど俺のロジカルシンキングで難なく解決した。
これで俺も1つ成長したというわけだ。
それで、だ。
地図の誤解はわかった。
正しい方角、正しい地図の読み方もわかった。
おそらく霊峰スキゾフレニア前のどこかにいるだろう。
だが現時点での居場所がわからない。
さて、どうしたものか。
アレックスは考えていた。
馬を走らせていくべきか。それとも誰かが通るのを待つか・・・。
いや、考えていても拉致はあかない。
アレックスは考えるより行動するタイプの人間だった。
「即断即決。今まで俺はそうやって苦境を乗り越えてきた」
アレックスは馬に乗りその場を離れようとした。
ふとそのとき向こうのガレキの山に人影が見えた。
よく見ると中年の男と小さな子供だった。
「やあやあ、ここに人がいらっしゃったんですか」
向こうからこちらに挨拶してきた。
「え?ああ、少し道に迷いましてね」
「それならうちについてくるかい。街まで連れてってあげるよ」
アレックスは目を輝かせた。
「本当ですか!ありがたい話だ、ぜひともお願いするよ」
「ただ・・・」
「ん?なんですか?」
「まぁ、ハハハ、なんというか、お金を少々頂ければ、ですが」
「金ですって?」
「はは、何のことかと思えばそんなことですか」
「ご心配なく。ここに一生遊んで暮らせる分の金がありましてね」
アレックスはポケットに手を伸ばした。
────ない。
「あれ?」
アレックスは別のポケットをさぐった。
しかしどこにもない。
「馬に吊り下げたままかな?」
馬の近くにもない。
寝た場所の周辺にもない。
「え?え?え?」
「どうしたんですか?」
「金が、金がないんですよ、50000ゴールド、国王陛下から頂いた」
「なんですって、ハハハ、きっと良い夢でも見たんでしょう」
「いい夢じゃない!ちゃんと、魔王が、3日後にくるから、はやくしないと!」
「悪夢も見てたんですか?」
「ちがう!れっきとした事実だ!国王陛下直々の命令だぞ!」
「はやくどうにかしてくれ!国庫から出た金なんだ、どうしてくれるんだ!!」
中年と少年は顔を見合わせた。
「よくわかりませんが、あなた、多分疲れておられるんでしょう」
「街までお送りますよ、ブサメンという大きな街ですが」
「やめろクソ、離せ!まだどこかにあるはずなんだ」
「嫌だ、俺の50000ゴールド!俺の50000ゴールドが!」
「ああああああああああ!!!!!!!!」
アレックスは親の葬式ぶりに声をあげて、哭いた。