#1 アレックスは冒険に出かける
俺はアレックス。この街で剣士をやっている。
ギルドのクエストをこなして生計をたてている。
金には興味ないから定職にはついてない。
世間の評価には疎い。だからあまり気にしていない。
今日はいい天気だから、散歩に出るとしよう。
「お待ちくだされ、アレックス殿」
「おや、いつも朝9:00~夜の20:00まで城の正門を守っている衛兵殿ではないか」
連日の残業からか、顔がやつれている。
「アレックス殿、緊急の用ですぞ。いますぐ王のもとに参られよとのこと」
「やれやれ、またいつものことだろう。今すぐ向かうとお伝えしてくれ」
「わかりました、では」
律儀な犬だ。俺はゆっくりと門に入った。
「よくぞ参った、アレックスよ」
「陛下、今日も一段とお元気なご様子で」
「私のことはどうでもよい、この街のことが心配なのだ」
「何かあったんですか」
「うむ、先日この手紙が私宛てに送られてきてな」
「どれどれ」
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拝啓 ニート・デ・ヒキコモリ3世 殿
貴殿の領地は肥沃に恵まれ誠に羨ましく候
ついては兵を送り3日後に滅ぼしにいくから
覚悟しとけよ
大魔王 アスペルガーより
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「チェーンメールかなんかですか?」
「ただのいたずらではない。見よ」
王は窓の外に目をやった。
「あの丘に見えるであろう。異界の者共だ」
王都の西方にどす黒いものが見えた。
なるほど、あれが魔王の兵というわけである。
そしてその遥か向こうには魔王の城と思われるアスペルガー城がある。
「あれをどうにかしろと?」
「そうだアレックスよ、見ての通り一刻の猶予もないのだ」
「我が国の若い兵は皆、戦後世代だから戦のなんたるかを知らぬ」
「外のコボルト殲滅ごときも怖気づく始末」
「それで、傭兵に金撒いてお願いするというわけですか」
「そうだ。こういう汚れ仕事はお前みたいなプー太郎に頼むに限る」
「そうですか、大変ですね。まあいってきます」
「期限は3日。それまでに準備を整えてくるのだ。そして魔王を殲滅せよ!」
こうして俺の小規模な旅が始まった。