樹海深部15
とりあえず、結界は完成したため、洞窟へと向かう。残りの人質を解放するためである。
向こうで解放するとなにをされるかわからないため、1人ハイエルフの村から位の高いハイエルフを連れて行く。その場で、他のハイエルフに言い聞かせるためだ。
とはいっても、洞窟の中で解放する分にはなにもできないだろうが。でた途端に魔法でも撃たれたら鬱陶しい。
「お帰りなさい、結界は無事出来たようね?」
「ああ、問題なくできた。オーブと台座のおかげだ。ありがとう、フェルス。」
「べっ、べつに……役に立ったならいい。」
べつにとは言っているが、嬉しいのは隠しきれずに声も少し高くなり、表情にもでている。
「アキノくん、無事だったんだね。よかった……。」
「戻ってきたってことは〜、ハイエルフの人達を解放するんですね〜。」
「お兄ちゃん達、お帰り!!ハイエルフのみんなはこっちだよ。」
そう言って、案内をしてくれるアクア。
奥へ行くと、縛られたハイエルフ達がかためられている。その中にはジギルもいるようだ。
ショックから立ち直ったのか、意識は取り戻しているようだ。何かを言いたそうにしているが、さるぐつわをしているため、モゴモゴ言っているだけでよくわからない。
とりあえず、現在の状況を説明してもらい、他のハイエルフ達が余計な行動を取らないようにしてもらう。
ハイエルフ達は、上の決定には逆らえないらしく、納得していない表情のものもいたが、従うことにしたらしい。
ジギルただ1人を除いては。
「おお、シュナ様。私を助けにきてくださったのですか?ありがとうございます。ささ、村へ戻って早速式を……。」
ジギルはあいも変わらず通常営業である。
「うざ……話を聞いてなかったの?」
位の高いハイエルフにどうにかしろと視線を送るが、首を横に振り無理だという仕草を見せる。
どうしたものか……無視してもいいが、ずっとこの調子でいられても鬱陶しい。
「そうだ。アキノっち、結界の確認をジギルにしてもらえばいいんじゃない?こう見えて、魔法だけは得意だから。ウチらは村で休んでればいいし。」
こう見えてって……確かに魔法はすごいものがあった。下手をすればやられていただろう。魔法が得意であれば、そういうことをさせるのは適任かもしれない。ただし、それを本人がやるかどうかだが……。
「それはいい考えだが、そいつがおとなしく従うとは思えないが……?」
「それはウチに任せて。」
そういうと、ジギルに近寄っていくシュナ。そして上目遣いで甘えた声をだす。
「ねぇ、ジギルゥ?ウチらが頑張って結界を作ったんだけどぉ〜、その結界の強度と効果をしばらくの間調べて欲しいのぉ〜。ジギルにできる?もし、しっかりこなせれば、ウチもジギルの事見直しちゃう……かも?」
「…………はい。このジギル、命をかけてやりきりましょう。」
あ、あっさりと落ちた。
シュナ……悪い女……。
ここに、シュナに対してやるな、と思うものはいても、ジギルに同情するものはハイエルフの中にもいないようだ。
ジギルは日頃からこういうやつなんだろう。できるのに残念なやつだ。
「シュナ様、もし、もしですが、結界が壊れるようなことがあれば……?」
「うん?アキノっちが作った結界なんだから、ジギルには破れないと思うけど……。でも、もしそんな事になれば、ジギルと一緒になってもいいよ?」
「なっ!!」
しばらく固まるジギル。
「誠心誠意やらせていただきます!!」
「シュナ、いいのか?そんな約束して。」
「いいの、いいの。できっこないんだから。それにウチはアキノっちの事を信じてるから。」
どうしてそんなに信頼できるのかわからんが……。まあ、よほどの事がない限り、破られることはないと思うが……ジギルだからな。ほんとに命をかけて破りそうだ。
レイラにも事情を詳しく話し、しばらくハイエルフの村に留まる事を報告する。
「というわけで、この洞窟から出られるようにするのはもう少し待ってくれないか?」
「今までどれだけ待ったと思ってるの?たった、10日やそこら伸びても、どうって事ないわ。あなたの性格なら、解放されて戻ってくる必要がなくても、きちんと戻ってくるだろうし、心配もしてないわ。」
「もちろん、戻ってはくるが……。向こうにいる間に対策でも練っておくよ。」
「あなたのそういうところ、嫌いじゃないわ。何もないでしょうけど、気をつけてね。」
洞窟を後にし、ハイエルフの村へみんなで向かう。もちろんレイラは残して。何人か洞窟に残そうとしたが、全員で村にくるようにという事で、ぞろぞろと村へと向かっている。
ちなみに、ジギルは張り切って1人で結界の確認に向かった。しばらくすれば村に戻ってくるだろう。……まあ、べつに戻ってこなくてもいいが、確認を任せている以上、役目は果たしてもらわないと困るが。
村へ行くと、長が出迎えてくれた。
「戻ってきたようだな。ふむ、なるほど……これはこれは……。人間、よくもまあこんなに色々な種族を連れているものだ。本来なら決して交わらぬだろうに。それもお前の力ということか……。我等ハイエルフ達に害をなさぬというなら、何も言うまい。時がくるまで、ゆっくり過ごすがいい。」
今度は客人として扱うようだ。ただし、村からは出るなと。
何にせよ、10日ほどは外に出られない。今はやれる事をやるしかない。
洞窟で、魔法、魔術が使えないのであれば、己の肉体のみで戦わなければいけない。ユズハの異能を使う事ができれば、一気に身体能力が上がり、楽に戦うことはできる。この10日間は、ユズハの異能を自由に使えるように訓練しないとな。とはいえ、具体的にどうすればいいのかはわからないが。
もちろん、戦うのは僕のつもりだが、これから先魔法が使えなくなる事も考えて、みんなにもユズハの動きを覚えてもらおう。
みんな元々自己流で動いているため、はじめは苦労するかもしれないが、覚えておけば、役に立つ事もあるだろう。戦うスタイルに合わせて、使える動きを取り入れればいい。
みんなも強くなれば、僕1人でたおせなかった場合でも、なんとかなるかもしれない。
「とりあえず、今日のところはゆっくり休んで、明日から色々ためしていこう。」
「りょ。んじゃあ、ウチの家に案内するよ。みんなついてきて。」
「シュナの家にこんな人数で行って大丈夫なのか?」
「とりま問題ないよ。これくらいの人数なら、泊まれると思うし。ママは気にしないと思うし、パパは……微妙だけど、なんとかなるっしょ。長に頼まれたって言えば、断れないと思うし……。」
「泊まれるところがあるのはありがたいが……。」
「いいの、いいの。行こ。両親にアキノっち合わせておきたいし……。」




