樹海深部14
さて、どうするか。あらかたのハイエルフ達は穴に落とされ、縛られている。洞窟内では魔法が使えない非力な人間と大差はない。
ジギルは、穴に落ちても気絶したままである。ツバキが縛っていたが、話を聞いてツバキですら嫌悪感を示していた。
「これで、ハイエルフ達の戦力はガタ落ちだ。ハイエルフ数人を縛ったまま連れていって、交渉してみるか……。」
「アキノっち、ウチが言うのもなんだけど、それって交渉って言わないんじゃ?」
「こっちは平和的に解決したかったのに、相手は拒んだ、そして実力行使をしてきた。なら、問題ないだろう?話を聞かないなら、聞くようにすればいい。」
「ふふ、あなた、言ってることは間違ってないけど、やってることは悪人てゆうか魔王みたいよね。面白いからいいんだけれど。」
レイラが笑いながら話しかけてくる。
いや、言われるまでもなく自分でもなんか悪役っぽいなとは思っていたんだが……改めて言われるとひどい……よな。
「魔王は、すごくいい人だぞ?」
「?」
レイラには伝わらなかったのか首をん?と傾げている。
「これから、ハイエルフ達の村に向かおうと思う。連れて行くのは、シュナ、フィリア、ロッテ、それからツバキにしようと思う。」
「「「はい。」」」
「妾も行っていいのか?また留守番かと思っておったぞ?」
嬉しかったのか、胸をはり、少しニヤけながらも、疑問を口にするツバキ。
「ああ、洞窟で頑張ってくれたからな。それに、いざと言う時にツバキがいれば強力な脅しになる。」
「脅しってあなた……認めちゃってるじゃない。」
「お兄ちゃんはほんとに吹っ飛ばしたりしないから大丈夫だよ。ツバキだけだと、ほんとにやりそうだけど。」
「アキノくん、気をつけて……ね?他のみんなも。」
数人元気のなさそうなハイエルフを縛ったまま連れて行く。もちろん魔法も使えないように口を塞いである。
ジギルはまだ気絶したままだが、口を塞いでいてもうるさそうだし、色々とめんどくさそうだから、洞窟に置いてきた。
行ったり来たりと面倒だが、大半のハイエルフ達の魔法を使えなくするには仕方がない。
人質もいればおとなしく話も聞いてくれるだろう。
ハイエルフの村に着くと、老人が出迎えてくれた。どうやら、ハイエルフの村の長らしい。
「お前がアキノか?シュナを誑かし、魔族らを引き連れてハイエルフの村をめちゃくちゃにしようとしてるようだな?」
「は?なに言ってるの?ウチがアキノっちについていってるの!!」
シュナが食ってかかる。
「それが誑かされていると言っている。」
「ほんと聞く耳持たないんだから、これだから嫌なんだよ、この村は!!なんでもかんでも決まり事。そうなってるから仕方がない。何にもしないでただ従ってるなら、生きててもしょうがないよ。」
「なら、村を守らず死ぬと言うのか?」
「ほら、全然話が伝わらない。考え方が古いってのがわからないかな。色々やってみる、村を良くしていこうって事はこれっぽっちも考えてないんだから。」
「村を維持するのは当たり前じゃないか?」
「もう!!まじウザい!!」
「ふむ、妾が聞いていてもイライラするな。いっそのこと、村ごと吹っ飛ばしてしまおうか。」
予想通りというかなんというか、物騒なことを言うツバキ。
「まて、ツバキ。それは最終手段だ。」
「アキノさん……。」
一瞬困ったような顔を見せたが、その後そんな事はしないですよね、わかってますよ。と、こちらに意図がわかるような器用な表情をするフィリア。
「ある意味で、維持は衰退と同義だって事は知っているか?まあ、なんにせよ、こちらとしては平和的解決を望むが、返事は?」
長は深く瞳を閉じ、しばらく考えると静かに口を開く。
「ふむ、人質を取っておいて平和的解決か……このままでは維持すらもできぬか。なにが望みだ?」
「まずは、ここの結界の外にまで影響しているトレント……木の魔物達の暴走を止める事、僕らを結界の外に出してもらう事、それからシュナを自由にしてやってほしい。」
「前の2つはそう難しいことではない、だが、最後の一つは到底受け入れられん。村の維持がかかっておるからな。」
「だいたい予想通りだな。まずはトレントだけでも止めてもらうとしよう。結界の維持が目的なんだろう?それに対しても策はある。」
一瞬目を見開くが、すぐに平静を装う長。
「策だと?我々ハイエルフが代々守ってきた結界に代わるものが、人間如きにできるはずもなかろう?嘘をつくならもっとマシな嘘をつくんだな。所詮は人間か……シュナを連れ去って散々弄びたいだけなんだろう?」
「ア、アキノさんはそんな事しません!!できないような嘘も言いません!!」
静かに聞いていたロッテが、長に食ってかかる。
「ふむ、まあ大きな口を叩くのだから、多少の事はできるのかもしれんな。あくまで多少だろうが……。どこまでやれるか見せてみろ、人間。」
「わかった。時間がかかるから、その間にトレント達をなんとかしておいてくれ。準備ができたら呼ぶ。」
さて、実際にできるかどうか……巫女が篭るという場所につれていってもらうと、1人の巫女が、結界を維持するために祈りを捧げていた。
こちらに気付くと、怯えた表情を見せるが、シュナが事情を説明すると、若干不安げながらも、協力してくれる事になった。
ちなみに、ずっと祈りを捧げていなければならないわけではなく、少しの間であれば、祈りをやめても、すぐに結界がなくなるわけではないらしい。だが、徐々に弱くなっていくのは間違いないので、ここから離れるわけにはいかないようだ。
今結界を張っている巫女に、いつものように一度魔力を流してもらうように頼んでみる。社が魔力を吸い取り、外へ流れていくのがわかる。
「ありがとう、一度交代してもらってもいいか?」
巫女がシュナをみると、シュナはコクリと頷く。
「はい。」
巫女に代わり、魔力を流してみる……すごい勢いで、魔力をごっそり持っていかれる感覚がある。
ハイエルフじゃないとできないのかとも思ったが、そうでもないらしい。リンクしているからかもしれないが。ただとんでもない量の魔力が必要な事がわかった。
もしかしたら、ハイエルフ達は、もっと効率よく魔力を流す事ができるのかもしれない。あれだけの魔力を持っていかれ続けたら、すぐに魔力がなくなってしまう。
ふむ。なるほど……という事は……あれをこうして……
「アキノさん?」
しばらく考え込んでしまっていたようで、フィリアの声で気がつく。
「ああ、ごめん。今あるものもいかしながら、構成すればさらに魔力の消費を抑えられるかもしれない。やってみてどうかってのもあるけど。」
フェルスに用意してもらった、オーブと、台座を用意し、ハイエルフ達が作った結果の細かいところは良くわからないが、魔力を消費して結界を作るという事はわかる。それを邪魔しないように、より効率良く魔力を使えるようにアイリスと共に考えた魔法陣を修正を加えながら描いていく……
よし、これでどうだ?
魔法陣を起動する。
そして、巫女にもう一度、魔力を流してもらう。
すると、魔法陣が光り始め、オーブと台座も反応して輝きだす……そして、その増幅された魔力が結界に流れていき……
「どうだ?」
「……ごいです。すごいです!!ほとんど魔力の消費をしてないのに、いつも以上に結界が強力になってます。これなら、巫女に選ばれた私達でなくても、結界を張り続ける事が出来るかもしれません!!
ですが、魔力をある程度流し続けなければならないって事は、ここを離れられないので、楽にはなりますが、あまり変わらないのでは?」
どうやら、無事成功したようである。
「そこは大丈夫だ。魔法陣とオーブで、魔力を増幅し、徐々に魔力を結界に流しながらも、空気中にあるエネルギーも魔法陣の力である程度結界を補えるようになっている。幸いここはエネルギーが凄く濃いから、よほど大丈夫だと思う。
魔力量によって、1日に1度か2度魔力を補給すれば今まで通りの結界は張れるはずだ。」
「アキノっちマジ神!!ヤバい。凄すぎるよ!!これなら、ここに缶詰にならなくても、交代で魔力を補給する事ができるね!!ウチも自由になれる!!」
嬉しそうなシュナをみると、頑張ってよかったと心から思う。みんなの協力があってこそだが。
「あとは、長に確認してもらうだけですね?アキノさん。」
フィリアも心なしか嬉しそうだ。ロッテも同じく嬉しそうである。ツバキは自分のおかげだと言わんばかりに満足そうな顔しながら、胸を張っている。
長のところに行き、結界が問題なく作動し、魔力の消費も抑えられたということを伝える。長も始めは信じられないという表情で、疑っていたが、自ら魔力を注ぐ事で納得したようだった。
「とりあえず結界を維持できる事はわかった。まさか人間なんぞにそんな事ができるとは思いもしなかったが……だが、お前達が去ってすぐに消えましたでは話にならん。それに、ほんとに結界がきちんと作動しているのか確かめなければならん。
結界が張れているように見せかけて、逃げられたらこの村は危機に陥ってしまう。よって、しばらくはこの村に滞在してもらう。
確認ができるまでは、村から出る事は許さん。」
相変わらず上からだな。立場をわかってないのか?まあ、言ってる事はわからないでもないが……。
「仲間が離れた所にいるんだが、連絡をしたい。1人でもいいから、村を出る許可をくれないか?そこに残りの人質もいる。連れてきた方がいいだろう?
それから、この村でそれなりに権力があるやつを1人連れて行きたい。ジギルとかいうやつがまた暴走するとも限らない。こちらの監視も兼ねてどうだ?もちろん、そいつが余計な真似をしないように、帰ってくるまでは人質はこっちで預からせてもらう。」
「ふん。……いいだろう。では、こちらから1人出す。そちらから1人選んでもらおうか。ただし、お前はダメだ。何をしでかすかわからんからな。魔族もよほど信用できんが、どういうわけか、お前が引き連れているようだし、お前自身が行くよりはマシだろう。」
一応許可は出したが、ツバキははじめから外されているらしい。魔力量のせいなのか、態度のせいなのかはわからないが。
「ちなみに、しばらくってのはどれくらいだ?そんなに長居する気はないんだが……?」
「ふむ、そうだな……。50年位と言ったところか……。」
「爺さんになるわ!!寿命の長いハイエルフと一緒にしないでくれ!!却下だ却下。長くて10日くらいだな。それ以上は無理だ。
人間風情がというくらいなら、魔法に長けているハイエルフ達が本気で対策をすれば10日もあればなんとかできるだろう?まあ、10日やそこらで魔法陣が壊れる事はないだろうが……。ここまでの事はしたんだ、あとはそっちでなんとかしてくれ。あとの事は知らん。こっちには人質もいるし、村を吹っ飛ばす事もできることを忘れるな。」
「ふん、言いおる。まあ、確かに人間風情に我等ハイエルフが劣る事などあり得ん。いいだろう、人間に頼らずとも我等だけでもできるということを分らせてやろう。」
今更かよ、と思うが口にはしない。すでに結界は巫女に頼らなくても維持できるようになっている。魔法陣がすぐに崩れる事はないが、もしかしたらというのもある。対策を練ってもらうのはいい事だ。あとは、
「シュナを解放してもらうぞ。」
「それは皆が無事に帰ってきて、開放してからだ。」




