樹海深部13
ハイエルフの村から少し離れたが、まだ追ってくるハイエルフは少ないようだ。さっきのマジックシールドで消耗しているせいか、少数のハイエルフ達に少しずつではあるが、距離を詰められている。
攻撃を仕掛けてくることはないが、このまま人数も増えてくれば、やばいかもしれない。
先に2人に逃げてもらうか?今のハイエルフ達は、シュナを捕まえる事を優先するはずだ……。だが、こっちを優先して集団に囲まれれば、勝てる気がしない。
「シュナ、ロッテ、先に洞窟の方へ向かってくれないか?さっき消耗しすぎたせいで、負担になってる。」
「アキノっち、負担とか言わないの!!ウチのために頑張ってくれてるんだから、そんなふうに思わないよ。それに、ここでアキノっちを置いてったら、逃げれるかもしれないけど、アキノっちがやられちゃうかもしれないし……アキノっちがいなきゃ意味ないよ……。」
シュナが悲しげな表情を見せ、訴えてくる。
「ア、アキノさん、し、失礼しましゅ!!」
ロッテが、顔を赤らめながら、噛みつつ、僕を持ち上げお姫様抱っこをする。
「ちょ、ロッテ!?」
女の子にお姫様抱っこされるとか、めちゃくちゃ恥ずかしいし、かっこ悪い。
「す、すみません…このままアキノさんを置いてはいけないですし、このほうが、あの……魔力も早く回復しますよね?」
確かにそうかもしれないが……ロッテもお姫様抱っこをした事で、自分に流れてくる魔力が上がった事もあり、確信しているようだ。
「そうなんだが……すごく恥ずかしい……。」
「アキノっち、わがまま言わないの!!ほんとはウチがしたいくらいなんだから……。」
いや、少しズレてるような?
「が、我慢して下さい。魔力がある程度回復するまででいいですから、このままでいさせて下さい。」
顔を赤くしながらも、このままでいさせて下さいとか、少しでも嫌な気持ちにならないように気を使ってくれてるんだな。かっこ悪いけど、ここは甘えさせてもらうか。
「ロッテ、ありがとう。少しだけよろしく頼むよ。」
「は、はい!!あ、あの…もう少し体を寄せてもらえますか?」
「あ、ああ。ごめん、軸に近づいたほうが動きやすいか。」
ここまでくれば、もう恥ずかしいのは一緒だ。ロッテの肩を持って、体を近づける……。
いい匂いはするし、色々柔らかいし。顔も近いし、これはこれでやばい。ロッテには魔力で、丸わかりなんだろうな……。それもかなり恥ずかしいが……。
「あ、あの……もし、ハイエルフ達が攻撃してきたら、アキノさんにお願いしてもいいですか?」
「もちろん、両手も塞がってるし、それくらいはさせてくれないと申し訳ない。」
シュナが先導しながら逃げていく。さっき通ってきたとはいえ、同じような木ばかりなので、どこがどこか全くわからない。
普通にシュナだけで来た方が早かったのでは?と思ってしまう。今更だけど。
ジギルと言われたハイエルフの姿は今の所見えないが、そのうち追いかけてくるだろう。もしかしたら、シュナを捕まえるのは私だとかいって、他のハイエルフにお膳立てさせて、おいしいところだけ持っていくつもりかもしれない……。さっきの戦いで、魔力も消耗してるはずだしな。
全く追いつかないせいか、たまに進路を妨害するためにの攻撃は仕掛けてくるが、やはり直接の攻撃はしてこないようだ。
こっちもかなりとばしているので、追いかけるのがいっぱいで、まともな攻撃ができないというのもあるかもしれない。
このまま洞窟まで逃げ切れるかと、思ったその時、木々が動きだす。
「シュナ!!気をつけろ!!トレントがくるぞ!!」
「りょ!!」
言うが早いか、シュナはすでにトレントに対応して、聞き取れない言葉を紡ぐと前に向かって、魔法を放つ。
「やば!!やり過ぎたかも……急いでる時は、調節ムズい。でも、まあ結果オーライっしょ。」
シュナが放った魔法は、前方のトレント数体の体をえぐり、貫通し、その先の木々も数十メートルほどえぐり、人が通れる位の空間ができていた。
ツバキほどではないにしろ、ちょっとやりすぎだろ……。てか、シュナって、ジギルより余裕で強いよな……たぶん。
だが、その空間もすぐに塞がっていく……。新たなトレント達が道を塞いだのだ。
「ロッテ、もう大丈夫だ。ありがとう。」
「は、はい。わかりました。ありがとうございます。」
ありがとうございます??まあいいか。
ロッテのおかげでだいぶ回復した。こんな時にお姫様抱っこされて何もしないなんてかっこ悪すぎる……。あんまり時間をかけても、後ろからハイエルフから追いつかれるしな。少しは役に立たないと。
「ていっ!!」
「はっ!!」
「よっ!!」
前に出ていく前にシュナが次々と魔法を放っていく。
「シュナ、そんなに魔力を使って大丈夫か?無理しないで、任せてくれ。」
「ううん、これくらいなら余裕だよ。アキノっちこそ、全快じゃないっしょ?ウチに任せて。愛の力で、魔力が溢れてくるから。」
「リンクな。」
やっぱりすごいな、ハイエルフの魔力は。リンクしてるとはいえ、そんなに魔力が増えるのか?シュナの言う通り、愛の力って?いやいや、それはないだろう。
それにしても、魔力はすごいが、環境とかお構いなしだな。すごい量の木々がボロボロになってるんだが……。
まあ、向こうのハイエルフ達もトレントを使いまくってる時点で、そういうことは考えないという事なんだろうな。
なんにしろ、シュナが魔法を使いまくるせいで、森が穴だらけになり、直線的に洞窟へ向かう事ができている。
トレント達が全く足止めになっていないのがすごいところだ。僕もほとんど役に立ってないが……。
追いつかれる事もなく、洞窟の辺りまで逃げることができた。あとは、出来るだけ引きつけてどんどん穴に落としていくだけだ。
結局ここでも、シュナに頑張ってもらうしかない。なんか今回、ほんと留守番してたほうが、よかったんじゃ?
シュナはペースを落とし、離れすぎず、近付かれすぎずを保ちながら、どんどんと、洞窟の方へと誘導していく。
シュナを中心にハイエルフ達が一定の距離を保って、囲んでいこうとしてるのがわかる。全方向から、一気に捕まえにいくつもりなのだろう。
この辺りまでくると、数なのか、距離なのか、魔力なのか、トレント達は現れなくなった。
そして、洞窟の入り口辺りまで逃げると、ジギルが待っていたと言わんばかりの表情で立っていた。
途中でペースを落としたとはいえ、かなりとばして来たのにここに来ることを確信して先回りしてるとは、ジギル…もしかしたら、ただ痛いだけの奴ではないのかもしれない。
「待ってましたよ。シュナ様。ここは、我々ハイエルフにとっては天敵ともいえる洞窟。逃げるなら、ここしかないと思ってました。さあ、もう逃げ場はありません、大人しく私と結婚して下さい。」
ん?
結婚?
この場は、捕まって下さいだろ?やっぱりただの痛い奴だったか……。
「ジギル………うざ!!捕まんないし、結婚もしない!!そういうところが嫌っていってるのわかんないかな?」
「な……。」
固まるジギル。
必死に色々考えてるのだろう。
「またまた〜。ここには他の者もいますからね、照れなくても大丈夫ですよ。それとも、そうやって、私の気を惹こうとしてるんですか?」
あれ?ハイエルフの村でも、ハッキリ断ってたよな?どうやったら、そういう思考になるんだ?ショックすぎて、記憶飛んでる?
「うざ。口で言ってもわからないか……。記憶飛んでるし……。ア〜キノっち〜。」
ボソッと呟いたと思うと、甘い声で僕の名前を呼び、近づいてくる。そしてそのまま、首の後ろに手を回し、ギュっと抱きしめてくる。が、その表情は、少し不安げで抱き締めてくる腕も恐る恐るといった感じで震えていて緊張しているのがわかる。ジギルからじゃ見えないだろうが……。
「シュナ……。」
「ジギルの気を引くため…今だけ。ごめんね、アキノっち。」と、耳元でささやく。
「わかった。」と返し、シュナの背中に手を回し、優しく抱きしめると、「ん…幸せ過ぎてヤバいかも。」と返ってくる。
なんでこんな僕を思ってくれるんだろうか。シュナはストレート過ぎて、嘘とかじゃないのもわかる。正直こんな美少女に思われるのは嬉しい……が、こんな状況の時にきゅんきゅんしてはいられない。
「な……は?………え?」
ジギルは、ショック過ぎたのか、口をパクパクさせていたかと思うと、目を白黒させそのままフリーズ。立ったまま、動かなくなってしまった。他のハイエルフ達も、どうしていいのか、動かずにいる。
すると、「うわ。」とか「なんだ!?」といった声が、僕達を囲んでいるハイエルフ達から聞こえてくる。
どうやら、みんなが落とし穴にハイエルフ達を落とし始めたようだ。遠くの方から聞こえてくるというところをみると、落とし穴に気付いて逃げ出せないように、外から落としていっているようである。
混乱の中、どんどんと数を減らしていくハイエルフ達。そしてついには、ジギル1人になる。シュナから離れ、近づいていくと、立ったまま、気絶しているようだ。器用な……じゃない。よっぽどショックだったんだろう。
「シュナ、縛ってこのまま洞窟に連れていくか?」
「いや、触るのも近づくのもキモい。こんな奴、落とし穴にポイだよ。」
そういうと、シュナは魔法陣を起動させ、ジギルを穴に落とす。」
「ふう、スッキリした。」
相当嫌われてるな、ジギル。可哀想に……いや、自業自得か……。
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
年末年始でバタ付き、前回の更新からだいぶ時間がかかってしまいました。




