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樹海深部12



 シュナと共に、ハイエルフの村を目指す。少し離れて、ロッテがついてきている。


 ひたすら森だが、シュナは迷わず進んでいる。よく迷わないものだ。ハイエルフの村は大樹の根のあたりにあるという話だが、空は木々で覆われているため、あまりよくわからない。森の民と言われるだけはある。


「アキノっち、もうすぐ着くよ?準備はいい?」


「ああ、ダメ元でまずは交渉を試みる。」



 村までは、たまたまかなんなのかわからないが、ハイエルフに出会うことはなかった。トレントも大人しく?しているようだ。


 村は、大樹の根というか、大樹の根元に存在している。根が、所々ボコボコしているが、それらを避けて、木造の家が何軒か作られている。村の規模としては、そうおおきくはないが、閉鎖的で、長寿となれば、数が一気に増えたり、激減する事もないだろうから、そんなものかもしれない。


 村の入り口に行くと、見張りが一応立っていて、シュナを見つけると騒ぎだした。


「シュナ様!!よくぞご無事で……戻る決心をしていただけたんですね!?今報告に……貴様!!人間か!?まさか、シュナ様を連れ去ったのは……。」


 敵意を剥き出しにし、今にも攻撃してきそうな勢いだ。



「まて、話がしたい。代表に取り次いでもらえないか?」


「人間の話など、聞く耳持たん!!」


 そういうと、見張りは掌に光の玉を作り、空へと打ち上げる。

 攻撃を仕掛けてくるかと一瞬身構えたが、どうやら違うらしい。他のハイエルフ達への合図か何かだろう。



 となれば、当然……。


 わらわらと、ハイエルフ達が集まってくる。さすがにここで囲まれるとまずいが……。


 集まってきたハイエルフ達の中から1人、男が前に出てくる。代表……ではなさそうだが、それなりに地位のあるやつなんだろう。若く見えるが、他のハイエルフよりも、貫禄がある。 金髪というよりは、銀髪に近い、髪はストレートで長く、サラサラヘアのイケメンである。まさにハイエルフといった見た目だ。


「ふん!!貴様が、シュナ様を連れ去ったという人間か?よく我らハイエルフの村へのこのこと現れたな。そんな事をすればどうなるかくらいはわかるだろう?

 それとも、怖くなって、シュナ様を送り届けにきたのか?その行動は認めるが、どちらにしろ貴様に未来はない……。シュナ様、こちらへ……。」


 シュナに戻るように促す。



 どっちにしても帰す気はないって事か……まあ、分かってはいたが……。


「ジギル、ウチは帰る気なんてこれっぽっちもないんだから!!ジギルと一緒になるってのも、マジありえない!!ウチは自分で王子様を見つけた!!アキノっちとずっと一緒にいるんだから、邪魔をしないで!!」


 そういうと、シュナは僕に腕を組んで、ジギルと呼ばれたハイエルフに向かって、アッカンベーをする。


 久しぶりに見たな。そんなの元の世界でもなかなかやらないぞ……。そして、この男が、シュナと一緒になるという男なんだろう。


「な!?は……何を言っているんだ、シュナ様。シュナ様は私と一緒に……。く、人間、貴様!!何をした!!シュナ様が私から離れるなんてあり得ない!!」


 激しく動揺し、勝手な事を言うジギル。前に襲ってきたハイエルフ達から報告は聞いていなかったのだろうか?


「ふ、ふん。まあいい。どの道貴様はここで終わる……。だが、人間風情に我らが寄ってたかって、というのも品がない。よかろう。私が相手になってやる。貴様を倒せば、シュナ様も戻ってくるはずだ……。」


 勝手に決めつけて、勝手に始めようとしている……。どいつもこいつも、人の話聞かないやつなのか?今あったばかりだが、こんな性格ならば、シュナじゃなくても嫌だと言うかもしれない。


 ジギルが、聞き取れない詠唱のようなものをはじめる。

 どうやら、ほんとに聞く耳は持ってないようだ。頭が不足しているとは思うが、ハイエルフの魔法だ。油断はできない……。


 ジギルが、魔法を詠唱している間に、こっちも対策をとらければいけない。さすがにシュナを巻き込む事はないだろうが……。


「シュナ、少し離れていてくれるか?正直相手の実力がわからないから、シュナを守りながらというのは厳しい。」


「ウチを守ってくれるつもりだったの?じゃあ、もっとくっついちゃおうかなぁ!!なんて。ウチだって自衛位はできるよ。でも、邪魔にならないように少し離れてるね。アキノっちなら余裕っしょ。ジギルまじうざい。」


 戦うことになるのは仕方がないが、これではおびき寄せることができない。どうしたものか……。


 シュナと喋っているのをイチャイチャしてると勘違いしたのか、ジギルの詠唱が強くなる……。相当怒ってるっぽい?

 ツバキじゃあるまいし、この辺一帯を吹っ飛ばすとかはないよな……。


「人間!!死ぬがいい!!」


 こちらに向かって手をかざし、魔法を解き放つ!!



 さすがに、ツバキみたいな事はしないようで、広範囲ではなく、一点集中。光の矢のようなものが一瞬で僕の所に迫ってくる。

 避けるのは間に合わない、が、頭の中には、マジックシールドを描いている。


 それを体の前に展開する。相手の威力がわからないため、はじめからシールドは全開だ。


 光の矢が、シールドに当たり目の前で止まる。が、そう簡単に消滅してくれるわけもなく、勢いは弱まりつつも、少しずつ矢が迫ってくる……。


 さすがハイエルフ……凄い威力だ。魔力がどんどん削られる……気を抜いたら一気にやられるな。


 ハア、ハア、これ以上はきつい……。


「アキノっち!!」


 マジックシールドが砕け散り、威力をだいぶ弱めた光の矢が飛んでくる。避けようとするが、力が入らない……。


 マジックシールドで弱められ軌道がずれたのか、頬をかすめ後ろへ飛んでいく。

 木々にやすやすと穴を開けていき、しばらくしたところで、光の矢が消滅する……。


 弱めてあの威力か、あんなのまともに喰らったら、消滅するだろ……。



「ハア、ハア、まさか耐え切るとはな。人間風情と侮っていたが、なかなかやる。ならばこうするまで……。やれ!!」


 何かの合図だろうか、ジギルが、手を上げる。


 ………………。



 なにも起きないようだ……。


「なにをしている!!早くやらないか!!」


 ジギルが声を上げるが、返事もなにもない。そして、



「あなたが探しているのは、この人達ですか?」


 ロッテが縛り上げた数人のハイエルフをジギルの前に引きずり出す。


「な!?」


 口をぱくぱくさせ、驚きを隠せないでいるジギル。



 おそらくは、自分が強力な魔法を撃ち、倒せればそれでよし、倒せなければ、弱ったところを隠れていた集団のハイエルフの魔法で倒すつもりだったのだろう。

 下賤なと、見下していた割には、用意周到だな。実際、今撃たれればヤバかっただろう。


「ロッテ、助かったよ。ありがとう。」


「い、いえ、アキノさんのお役にたてて嬉しいです。」


 俯き照れるロッテ。


「くっ、くそ!!魔族が人間の味方をするだと!?」


「てか、ジギル、1人で相手をするんじゃないの?仲間を隠れさせておくとか、サイアクなんですけど。ジギルと一緒になんて、マジありえない。」


「ぐぅ………。」


 なにも言い返せずにいるジギル。


 それを見て、シュナがニヤリと笑う。


「でもぉ、一度だけチャンスをあげようかな?……ウチと鬼ごっこをするの。」


「シュナ様、鬼ごっことは?」


「ウチが逃げるから、ジギルとハイエルフのみんなでウチを捕まえることができたら、そのまま村に戻る。ウチが逃げ切ることができれば、自由にしてもらう。どう?」


「そんな簡単なことでいいのですか?いいでしょう。長と皆に連絡を。動けるものは、シュナ様を捕まえるぞ!!」


「はっ!!」




 なるほど、考えたなシュナ。姿を現して逃げれば単純に追ってきたかもしれない。だが、あくまでも一部だろう。ハイエルフのみんなと言うことで、駆り出される人数は増えるはず。捕まれば大人しく戻るというのだから、尚更だろう。


 ハイエルフ達との鬼ごっこが始まる。

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