初めての戦闘2
はぁ、はぁ
とにかく走って逃げる。振り返ると、巨大なイノシシ。大イノシシって、こいつか!!まんまだな!!
てか、デカすぎだろ。イノシシというか、サイとかカバと変わらない大きさじゃないか?キバがすげーよ。
こんなんに突っ込まれたら、トラックに轢かれるようなもんだ。間違いないくあの世行き。走ってばっかだな今日。
すごい音立てて追いかけて来るんだけど。やっぱイノシシってのはホントに猪突猛進なのか?
「ロッテ、フィリア!!ギリギリまで引きつけて1、2の3で左右に分かれるぞ!!」
「はい!!」
「1、2の3!!」
目の前には木、これで動きが止まってくれれば………。
バキバキバキバキッ!!
へし折っていった〜〜〜!!!!
ダメだ、大木でもないと足止めにもなりやしない。しかも、方向転換してこっち来た。そのまま走り去ってくれよ!!
何度もすんでのところで躱し、木にぶつけるが、ビクともしない。んもう、しつこいな〜
闘牛かよ!!と、脳内で突っ込みを入れる。牛だけに"んもう"ってか、イノシシだけども。 てか、自分でもびっくりなんだけど、ピンチになると、言葉使いも悪くなるわ、変な小ボケ入れるわ。なんなん?自分。
ドスンッ!!
やっとの事で大木に当ててやった。流石に大木の方が強かったらしい。動きが止まった所へ、思いっきり大剣を振り下ろす。
まさに一刀両断ってやつだ。大剣の癖に切れ味もそれなりにあるらしい。普通大剣といえば、叩き潰すイメージだが……。
ウサギ相手にダガーは使えるが、こいつにはかすり傷にしかならないだろうな。
持って帰るのは厳しそうだから、あとで回収しにきてもらおう。
「「アキノさん、大丈夫ですか⁉︎」」
ロッテとフィリアが駆け寄ってくる。よかった、無事だったようだ。
「なんとか、倒せたね。ふぅ……」
「なんとかじゃなくて、傷を早く見せて!!」
「傷?確かに最後避けきれなくて、少し…かす…った……け…ど……」
倒す事に精一杯で気がつかなかった。脇腹が抉れて……る?気付くと痛みがやってきた………
「 アキノさん!!アキノさん!!」
「め、目を覚まして下さい!!」
呼ばれている声がして目を開けてみる。
横には2人の天使が寄り添い、僕の名前を呼んでいる。
「可愛い天使が2人………天国?」
「私達は天使ではなくて魔族です!!目が覚めましたか?アキノさん。」
「よ、よかったです。本当に……。」
ああ、そうか。大イノシシに脇腹をやられて、意識を失ったのか…。
2人とも心配そうにこちらを見ている。
傷…は?治って…る。
「傷はフィリアが?」
「はい。」
「ありがとう、でも魔力をかなり使ってしまったんじゃない?」
「いえ、アキノさんの命にはかえられません。それに、思ったりよりも消費してないのです。今も回復していってますし。ただ、もう一度同じ位の回復をしようと思うと、厳しいですね。」
異能のせいなのかなんなのかよくわからないが、相当な魔力を回復してるらしい。このレベルの怪我でも治してしまうんだから、相当凄いんだな魔法って。フィリアが凄いだけかもしれないけど。
けど、フィリアの回復がなければ死んでいたかもしれないって事だよな。いきなりの出来事とはいえ、もっと慎重にならないと。
そういや、薬草的な物はないのだろうか?あればある程度の傷位なら魔法でなくとも済むだろうに。薬草の事も考えておかないとな。
「とりあえず、今日のところは戻ろうか、あまり消耗してもいけないし。」
「そうですね。」
「は、はい。そうしましょう。」
帰りの道中にて
「そういえば、魔法って僕も使えるのかな?使えれば、戦闘にも使えそうだし。ちなみに、ロッテはどういう魔法を使うの?」
「わ、私は風の魔法が得意ですね。あとは、ちょっとした身体強化くらいであれば。人間でも魔法のようなものを使う者達はいるので、適性があれば使えるかもしれません。わ、私達は魔法を使えるのが普通なので、人間の場合はその辺りはよくわからない、ですけど。」
「なるほどね、練習すればもしかしたら使えるかもしれないって事か。使える属性とかは決まってたりするの?」
「私達魔族の話でいうなら、特にないですね。ある程度なんでも使えますが、それぞれ得意な魔法というものはあります。あとは、個々の好みというのが大きいと思います。」
流石、魔族というか魔法が使えるのが当たり前なんだな。魔法は使ってみたいよな、やっぱり。夢がある。
「そういうのに詳しい人っているの?色々と聞いてみたいんだけど。」
「ええ、あくまで噂ですが、魔法全般と人間にも詳しい者がいるというのは聞いた事があります。ただ、かなり変わり者という事なので、すんなりと話してくれるかどうか………。」
「そっか、とりあえず明日会ってみようかな。魔法があるかないかでは、戦い方も変わってくるし。」
「わかりました。では、そうしましょうか。」
屋敷に着いたら、早速調理だな。さて、魔物の肉がどう化けるか。美味いのか不味いのか、そもそも食っても大丈夫なのか。
期待と不安があるが、やってみないとわからない。食べてみないとわからない。
幸い、ハーブ類も散策中に見つけたので、ある程度の調理が可能になった。
豆類もあったので、醤油や味噌ももしかしたら作れるかもしれない。
やること、やれることが盛りだくさんだな。
ウサギ肉は食べた事ないけど、国によっては食されてるしな。大イノシシの肉はイメージだけど、臭みを抜かないといけなそうだ。回収頼んでおいたけど、イノシシは明日だな。
先ずはウサギ肉を使って料理しますよっと。
もちろん、ロッテ、フィリア、昨日参加してくれた10人にも来てもらっている。
もし、ウサギ肉が美味くて、魔力の回復を見込めるなら、食料調達班を作らないとな。なんにせよ食べてみるしかないか。
「よし、こんな感じでどうかなっと。」
匂いは良い感じだ。臭みもなく、むしろ食欲をそそる。鶏肉に近いってのを聞いた事があるので、問題はないと思うが………。
食べてみるか。やっぱ作った人が最初に食べないとな。
………。
「え、なにこれ、うまっ!!」
確かに鶏肉に似ている。しかし、美味いなこれ。毒は無さそうだ。………遅効性でなければ。
しかも、なにか気持ち力が湧いてくるような……。って、いくらなんでも、そんな早く効果はでないか。
「うまくできたようだから、みんなも食べてみてくれるかな?」
みんなそれぞれ口に入れる。みんなの感想も上々だ。
「初めて魔物を食べました。こんなに美味しくなるなんて、流石アキノさんですね。」
「ほ、ほんとです。こんなに美味しいもの食べたの初めてです。」
「アキノさん、魔力の回復すごいですよ!!今までの料理と比べ物にならないくらい!!」
「口に合ってなにより。やっぱり魔力の上がり方がかなり違うんだね。魔物って言うくらいだから魔力も身に宿ってるのかなと思ってね。」
ウサギ肉は成功だ。イノシシの方はどうなんだろ。明日が楽しみだ。
「魔力回復ってどれ位?街のみんなはその辺の魔物達と戦闘しても大丈夫そう?」
「そうですね…定期的に食べれるのであれば、一角ウサギ程度なら、マイナスになるような事はないと思います。」
となると、食料調達兼、防衛班を作って動かしていっても問題ないわけだ。少しずつ人数を増やしていって、食料を安定させて、魔族全体の魔力量を増やしていける。
問題は、一角ウサギ以外の敵だな。他に大イノシシしか戦ってないけど、大イノシシだと恐らくきついだろう。魔力がある程度回復してくれば、魔法でなんとかなるかもしれないけど。
ま、そこもおいおいだな。
とりあえずは、ガイゼルさんの魔力をメインに上げていくのがいいだろうな。魔王が他の魔族より弱いってのは話にならない。
ロッテと、フィリアは僕と行動してることによりさらに魔力量は増えるだろうが。
明日は人間にも魔法にも詳しいという人物?に会って色々と話を聞いてみたいが、変わってるという事だから、一筋縄ではいかないんだろうな〜。