樹海深部6
木の近くに寄ってみると、そこにはユズハの姿があった。こちらに背を向けているようだが……気付いてないのか?
さらに近付き、声をかける。ユズハももしかして……。
「ユズハ、無事そうでよかった。怪我はなさそうだな。」
「ん、アキノくん。よかった、アキノくんも無事だったんだね。」
どうやら、普通っぽい?
「気付いたら1人で心細かった……。アキノくんなら、絶対来てくれると思って、この伝説の木の下でずっと待ってたの……。」
ん?
「知ってる?この伝説の木の下で、女の子から告白されると2人とも幸せになるんだって!!」
「ちょっとユズハ、それって……。」
「ん、こんな感じのゲーム、アキノくん達昔やってたよね?こんな感じじゃなかった?」
「いや、確かにそういう感じだけど……。よく覚えてたな。でも、これは伝説の木じゃないだろ?」
「うん、そうだね。でも、そうなるといいかなって……。」
後半が小声で聞き取れなかった。
「なんて?」
「ううん。他のみんなも心配だけど、今は…今だけは私を見てて欲しいの……。ずっと震えが止まらなくて、少しの間だけでもギュッと抱きしめて欲しい……だめ…かな?」
こんな所に1人でいたら心細いだろう。さっきのも、恐怖を紛らわす為の冗談ってところか。僕なんかでいいのかとも思うが、少しでも気がまぎれるなら……。
ユズハに近づき、軽くハグをする。震えもおさまってきた。ユズハからいい匂いがしてくる……。ハグしてわかるが、格闘技をやっているとはいえ、やはり女の子。こんな異世界に突然やってきた衝撃は僕にはわからないだろう。
「ん、もっと強く。」
耳元で囁くユズハ。
いや、こんな状況でそんな事言われたら……。色々と雑念が浮かんできそうになるが、それらを頭から追い払い、さっきよりも強く抱きしめる。
しばらく沈黙が続く………。
「ん、ありがとう。アキノくん。震えも止まったよ。アキノくんすごいね、不安もなにもかも包み込んでくれて、心から安心できた。また、不安になったらお願いしようかな。なんて。」
この世界に来て一番の笑顔を見せるユズハ。その表情に引き込まれてしまう……。
「ん、どうしたの?」
「いや、なんでもない。役に立てたならよかった。いつでもって言うわけにもいかないけど、これくらいならお安い御用だよ。」
とか言いながら、内心はバクバクだけど。
「ん、ありがとう。」
2人の間にゆっくりとした時間が流れる……。
いや、ユズハも落ち着いたみたいだし、今はみんなを早く探さないと……。
と、そこでまたしても霧が発生する……
なんか心地いいな、何かに撫でられてる?頭の下にも柔らかい感触がある、何かと思い触ってみると……。
「ひゃ、ア、アキノしゃん、くすぐったいです。」
ん?ロッテの声?てことは?
目を開けてみると目の前にロッテの顔がある。ということは、今触ったのは……。
どうやら、ロッテに膝枕をされているらしい。
「ロッテ、これはどういう……?」
「あ、あの……気がついたらアキノさんが近くに倒れていたので、膝枕を……。」
「こんな地面で膝枕したら、足が痛いんじゃないか?すぐどくよ。」
「い、いえ、すぐに動くと危ないですよ。しばらくこのままでいて下さい。わ、私はこのままで……このままがいいです。」
ロッテなりの気遣いか。でも、女の子に痛い思いさせてるのも嫌なんだよな……。
ロッテの表情は明るく、機嫌が良さそうで、痛くはなさそうだけど。
「てか、ロッテ、ずっと撫でてるよね?」
「あ、す、すみません。ご迷惑でしたか?」
「いや、ご迷惑もなにもなんのご褒美だと思うくらいだけど、ちょっと…いや、すごく照れくさい……。」
「じゃあ、いいですよね?」
ロッテが小悪魔的な表情を浮かべ、顔を除き込んでくる。そして、顔に柔らかいものが2つ当たっている。
……ロッテ反則だろそれは。だいぶ古くなってしまったが、惚れてまうやろ〜。ってやつだ。
普段は控えめなロッテがこんな事してくるとは思えない。やはり、みんななにかされてるのか?
「ロッテ、ありがとう、もう大丈夫だから、みんなを探そう。」
「……そう…ですね。はい。みんなを探しましょう。」
ロッテの膝枕を解放してもらい、みんなを探すために立ち上がるが、
「あっ……」
立とうとした瞬間、足が痺れたのか、ロッテがこちらに寄りかかってくる。
「大丈夫か?ロッテ。」
「は、はい。すみません。少しこのままで……。」
今度は、小悪魔的な表情ではなく、上目遣いでらこちらを見つめている。ロッテの仕草の一つ一つが、ツボにハマってくるな……。
極力平静を装っているが心臓がバクバクいってしょうがない。
そして、上目遣いでこちらをしばらく見つめたあと、スッと両目を閉じる……。
いや、これって……フェルスの時と同じ……これはやっぱりそういう事なんだろう。いや、だが、したらしたで問題が……だが、しなきゃしないで失礼……か?
ああ、もうわからん!!正解がわからん!!
覚悟を決めるか。
ロッテの両肩をもって、顔を近づける。ヤバいほんと可愛いな。唇が近づいたその時、またしても霧が発生し2人を包み込む。
今回ばかりは助かった…のか?
意識が薄れる中で唇になにかが当たった気がするが、よくわからな…かっ……
ん?なんだ?手足の自由がきかない……。縛られてる?
朦朧とした意識のなか周りを確認すると、どうやら、縛られているようだ。しかもかなり厳重に。格好としては、十字の板のようなものに両手足を縛られているようだ。
この洞窟の黒幕の登場か?なにが目的なんだ?いずれにしろ、まずい状況だという事に変わりはないが……。
「あら、お目覚めのようね。」
目の前に現れたのは赤い髪の人間?の女だった。髪は長くストレート、顔は整っていて目つきは鋭いが、十分に美人と呼べるレベル、?すらっとしたスタイルで白衣のようなものを着ている。
「お前がこの洞窟で色々仕掛けてきたのか?他のみんなはどうした?」
「ええ、そうね。色々と楽しませてもらったわ。どうせ暇だし、少し話し相手になってもらおうかしら?
他の子たちも無事よ。安心しなさい。暴れたりしないでちょうだいね。まあ、その状態じゃあ、なにも出来ないでしょうけど。とりあえず、危害を加える気はないわ。大事な話し相手ですもの。」
「そう言うなら、この状態を解放してくれると助かるんだがな?」
「うーん、それは出来ないわ。あなた達の実力はじっくり見せてもらったもの。私なんかじゃ、あっという間にやられてしまうわ。」
「洞窟内の様子を見てたって事か?土人形も霧もお前の仕業か?お前も人間なのか?」
「あらあら、そんなに急いで聞かなくてもゆっくり話してあげるわよ。時間はたっぷりとあるもの。」
暇つぶしというが、本当のところはどうかわからない。一応、みんなも無事という事らしいが……。
「じゃあ、まず、仲間の無事を確認させてくれないか?」
「心配性ね。まあ、疑う気持ちはわかるけど。最後まで話を聞いてくれたら、解放するわ。どうにかするつもりなら、もうとっくにしてるわよ。……わかるわよね?」
確かに、僕らを殺す目的なら眠らされた時点でやられているだろう。なんにしろつきあうしかないか……。
「ああ。」
「素直な子は好きよ。じゃあ、まずはその質問に順に答えていこうかしら。」
仕事の関係で更新がかなり遅れてしまいました。
これからはもう少し更新できると思います。
あと10日ほどで、初投稿から2年になります。
投稿数は少ないですが、ここまで続けてこれたのはみなさんのおかげです。これからも続けていこうと思いますので、よろしくお願いします。




