樹海深部3
見た所普通の洞窟のようだが……。
注意しながら中へ入ってみる。さすがに入ってすぐ魔物がいるということはないようだ。洞窟内は、若干暗いが、ヒカリゴケがあるおかげで、進むことができる。目が慣れてくれば問題ないレベルだろう。
試しに魔法を使ってみる。
「光よ!!」
……何も起きない。魔力を消費した感じはあるが、光はでない。やはり魔法は使えないらしい……。ちなみに、魔法を使えば消費するが、自身の魔力が奪われていくとかはないようだ。肉体強化も試してみたが、どういう原理かやはりうまくいかず、もし戦闘となれば、強化なしの自力で戦わないといけないということである。
敵の強さにもよるが、回復も使えないとなると、厳しいかもしれない。
そもそも、すでにハイエルフ達と交渉するのは難しい状態になったため、この洞窟にいる意味はあるのか?というところだが、ここならハイエルフ達が集団で追ってきたとしても、入ってくることはまずないと思ったからここに来た。いざという時に逃げ込むことができるかという確認も兼ねている。
逃げ込んできたはいいが、魔物が強くてかないませんでしたでは、話にならない。
「アキノさん、魔法…使えませんね…」
どうやら、フィリアも同じように試してみたようだ。
「ア、アキノさん、私も駄目みたいです。風も強化も無効化されます。」
ロッテ、そして、ほかのみんなも同じく、魔法が使えないようである。
「ほんとに魔法が使えないんだな。そうなると、ある程度戦えるのは、僕とフィリア、ロッテにフェルスということだな。ユズハも戦えるかもしれないけど、魔物によっては危険だしな。
ユズハ、アクア、ネージュ、ツバキは後方に下がってもらって、シュナは…戦えないよな?」
「アキノっち!!ウチを誰だと思ってるの!?魔法無しで戦えたら、逃げまわらず、とりまここに隠れるっしょ?」
「それな。」
「アキノ君……。」
なんでアキノ君まで使ってるの?的なニュアンスで僕の名を呼ぶユズハ。
入り口付近には魔物らしきものはいないようだ。洞窟の広さはそれなりにあり、高さ、幅共にこれだけの人数で移動しても問題ない多少の戦闘なら大丈夫そうである。
しばらく進むと、一体の魔物?を発見する。甲羅を背負っているようだ。亀……か?
普通の亀の様に緑だったり茶色だったりではなく、甲羅は黒く、ツヤっとしている。大きさとしては陸ガメくらい?乗ろうと思えば乗れるサイズである。
動きは亀だけあってゆっくりだ。そして、その亀と目が合ってしまう。
「来るか!?みんな、油断するな!!」
…………
…………
…………こない。
目が合って、しばらくこっちをジッとみていたが、まるで何事もなかったように、洞窟の奥へと歩いて行った。
「魔物なのに〜、襲ってきませんでしたね〜。」
「ここの魔物はおとなしいのか?」
「ふん、妾がいたから恐れをなして逃げて行ったに違いない。」
いつものように無駄に胸を張るツバキ。
「ボクも戦えないから、人の事は言えないけど、この洞窟ではボクもツバキも立派なお荷物だよ!!」
「いや、お荷物だとは思わないが。」
「アクアの事はアタイが守ってやるから安心しな。」
「ありがとうフェルちゃん!!」
「お、おう……。」
自分で言っておいて、素直にお礼言われて照れてるフェルス。
しばらく道なりに洞窟を進んでいると、所々にさっきの亀を見つけた。最初に見た亀よりはどれも大きくなかったが、一瞬気にするだけで、同じく何事もないように動いていた。
亀以外はいないのか?
さらに進むと、壁がキラキラしているところが出てきた。もしかすると、これが宝石の原石かもしれない。
「ふむふむ、これはなかなか良さそうな石だな。武器や防具に組み込むと良さそうだ。ドワーフの村の近くの鉱山よりも純度がたかそうだな。エルフ達が使ってた2本の杖にも宝石が嵌っていただろ?あれもおそらくこの洞窟で採掘したものだろう。」
「さすが鍛冶屋の娘ってところか、よく見てるな。」
「う、うるさい。こんなん常識だろ!?それよりも……だ。この辺の原石を迂闊に漁るとやばい気がする……。」
「どういう事だ?」
「普通、鉱石なんかは掘り当てるもんだ、ここがもし人の手の入っていた洞窟だとして、いかにも採って下さいと言わんばかりに並んでる物を放っておくか?となると、掘り出せない理由があるはず。罠なり、敵が襲ってくるなりな。」
「ヤバ!!フェルっちすご!!」
「フ、フェルっち……。」
考えすぎかもしれないが、フェルスの言うことも一理ある。とりあえずここはそのままにしておいた方が良さそうだな。
さらに奥へと進むと、通路ではなく、少し開けた場所に出る。
天井も高く部屋というか、小さなドームのような空間になっている。
その部屋の中辺りに進んだ所で、異変が起こる……。
地面やら壁がボコボコと膨らんできたのだ。そして、その膨らみは、腰の高さくらいの大きさになり、土の塊から姿を変えていく……。
少しずつスマートになっていき、子供くらいの大きさの人形のようになった。
不思議な踊りは踊ってこなさそうだが、この土人形?達は、僕らを敵と認識しているらしい。
「来るぞ!!」
「「「「はい!!」」」
土人形達は、個々の強さはそうでもないようだ、だが、問題は倒しても倒しても、何事もなかったかのように再生し向かってくる。
「何体倒せばいいんだ?もう50以上は倒したぞ?」
「これじゃあ、きりがないですね。魔法も使えないですし……。」
強くないとはいえ、かばいながらずっと戦い続けるのはなかなか消耗する。さらに、いつまで続くかわからないというのも精神的にきついものがある……。ここの魔物というよりは、ここから先に行かせないように守ってる?
「ア、アキノさん!!見て下さい!!再生する人形達の中に大きさの違うのが何体かいます!!」
ロッテの言う通り、今までの土人形は子供くらいの大きさしかいなかったが、背丈が大きい人形、逆に小さい人形もちらほらと混ざっている。
大きい人形がフェルス向かっていく。
「くそっ!このでかいの動きは遅いが、力が強いぞ!?」
「フェルス、大丈夫か!?」
でかいのは力が強い……じゃあ小さいのは……?
「アキノ君危ない!!」
フェルスの方に気を取られて油断したか!?




