樹海深部2
「はいはーい、お兄ちゃんはみんなのお兄ちゃんだから、独り占めしなーい。」
アクアが、僕とシュナの間に割って入る。
みんなの?
「え〜、イイじゃん減るもんじゃないし〜。運命の人とはくっつきたいし。」
「そうかもしれないけど、お兄ちゃんは節度をわきまえる人の方が好きだと思うよ?」
「ほんと?」
「まあ、どちらかといえばそうだな。」
「んじゃあ、とりあえずくっつくのは諦める。でも、アキノっちがくっつきたくなったらいつでも言ってね?」
意外と素直にきいたな。僕からくっつくとは言わないだろうし、いいか。どのみちこの大所帯じゃ、そういうシチュエーションもなかなかないだろうし。
「とりあえずは、それぞれ自己紹介からですね。あとは、これからどうするか……ですね?」
フィリアが話を進めてくれ、それぞれシュナに自己紹介を始める。
そうなんだよな。話をするにしても、なんか聞く耳持たなそうだし、手土産でも持ってくか?いや、何を持っていけば喜ぶかわからない。多種族の事は拒むだろうしな。
そもそも、話ができる状態に持っていけたとしても、交渉材料がない。少なくとも、現状維持か、それ以上のメリットがないとシュナを解放などしてくれないだろうし……。
「シュナ、ハイエルフ達が喜ぶ物とか事とかなにかないか?」
「ん〜、どうだろ。あ、宝石類は希少だから喜ぶかも。杖とかに組み込むと魔力がアガるみたい。」
「なるほどな。その宝石ってのはどこにあるんだ?」
「この森にある洞窟なんだけど、そこに宝石類があるって話。ただ、ヤバくて誰も近づかないよ。洞窟内には、魔物が住んでて、なぜかそこでは魔法が使えないから、ウチらはお手上げってわけ。」
なんで魔法が使えないんだろうな。魔力を増やす宝石があるなら、魔力を抑える宝石もあるの……か?
「ハイエルフ達は、普通に戦えないのか?特にダークエルフ達は魔法以外の戦闘もしていたが?」
「ん〜、多分だけど。総魔力の違い?みたいな?ウチらは魔力が尽きる事なんてそうそうないから、全部魔法で解決しちゃって武器とか使うのダルいみたいな。」
なるほど。となると、ハイエルフ達は魔法が使えなくなると弱いってことか。まあ、全部魔法に頼ってればそうか……。
となると、結界ってのは外界とのシャットアウトのほかに、この洞窟を守るって事も含まれているのか?
魔力を上げる貴重な宝石類を他の種族に取られないように。そして、この洞窟を研究され、魔力を封じる方法でも生み出されればハイエルフ達はなんの抵抗もできなくなる……。
となれば、結界は必要。シュナが戻らなければ、ハイエルフ達は滅ぶ可能性はあると。
そこまで考えれば、必死にシュナを捕まえようとしている理由もわかる。
……あくまで全部推理の域をでないが。
「その洞窟に案内してくれないか?」
「りょ」
うーん、なんだろう。そのうち、おこ、とかマジ卍とか言ってきそう……。それらももはや古いのだろうが。
と、シュナに案内され洞窟を目指していると、数人のハイエルフが現れる。
「シュナ様、村に戻り式の続きをなさって下さい。お相手も怒っておりません。なかなかいい魔法だったとむしろ褒めておりました。今ならばまだ、今回の事は不問ということなので、私達と村へ戻りましょう。」
ハイエルフ達の腰が低いな。シュナに戻ってきてもらおうと必死になんだろう。しかし、相手も相手だな、むしろいい魔法だったとか、変態さんか?
「いや!!あんな人と結婚するのも嫌だし、ウチのこと理解してくれるとも思えない。自由を奪われるのも嫌!!それに、ウチの王子様はもう見つけた!!相手はここにいるアキノっちなんだから!!!」
そう言って、腕を組んでくるシュナ。
うぉっ!?飛び火した!?これじゃあ交渉どころじゃなくなるんじゃ?
「!?……こんなところに人間が!?それに他の種族も!?下賤な人間共が……シュナ様をたぶらかしたか!?かくなる上は。」
ほら、もう戦闘態勢にはいっちゃった。
攻撃を仕掛けてくる以上戦うしかないが、ほどほどにしないとな。
「やるぞ!!ただし、やりすぎないように!!」
「「「はい!!」」」
「下賤な者共が我らに勝てるつもりでいるのか?笑わせてくれる。我らの魔法その身をもってあじあ…」
ドゴォッ!!
喋っていたハイエルフが魔法によって吹っ飛ぶ。やり過ぎじゃないかあれ?しかも喋ってる途中とか。ちなみに他のハイエルフ達も巻き添えをくらって吹っ飛んでいる。
「え、マジ?ヤバいんだけど!!ウチ、かなり加減したつもりなのに……これが愛の力ってやつ?」
「リンクのおかげな。それよりこんな状況になった以上まともに話はできない。その洞窟は近いのか?」
「うん、そんなには遠くないはず。」
「案内してくれ。みんなはこっちへ。あとは……」
水と、熱と、風、あと冷気で……いけるか?
「霧よ!!」
辺り一帯に霧が発生する……どうやら成功したようだ…が、霧がどんどん広がっていき視界もかなり悪くなり、どこまで広がったのかすらわからなくなってしまった。
シュナじゃないが、リンクしたからか、魔力が膨れ上がり、コントロールをミスったようである。
ふむ、これはしばらく晴れそうにないな。
「アキノさんこの魔法は?」
フィリアが聞いてくる。
「みんなの魔法を使って組み合わせてみたんだ。なんとかうまくいったようだけど、やり過ぎた……。」
「ア、アキノさん。こんな広範囲に霧を発生させるなんて凄いです!!」
いや、ロッテならなんか器用にできそうな気もするけど。
ツバキは意味もなく胸を張ってる気がする…。あんまり見えないけど。
「アキノっちスゴ。人間ってこんな事できるの?」
「シュナお姉ちゃん、お兄ちゃんは、特別なんだよ。普通の人間は魔法自体使えないよ。」
「凄いですよね〜。ほんと〜に〜。」
「マジ神!!すごくない?さすがウチの王子様!!」
「そのやりとりはいいから、案内してくれ。視界は悪いが、大丈夫か?今ならハイエルフ達も追って来れないはずだ。」
「り」
さらに短縮しやがった。まあいいけど。しかも視界が悪いから迷子にならないようにとか言ってまた腕を組んできた。
そして反対側の袖をユズハがちょこんと摘んでいる。ユズハは迷子になるといけないからな、まあしょうがないだろう。
ほかの仲間はきちんと付いてきているようだ。
視界不良のため、時間はかかってしまったが、どうにか洞窟に辿り着いた。
「ここがその洞窟か……。」




