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樹海深部1



「大丈夫か?」


「ありがとう……ウチの王子様!!」


「は?」


「「「!!!!!」」」


 いきなり意味がわからない事を言い出すエルフ。そして、みんなの視線が一気に集まる。


「アキノ君……もしかして知り合い……?」


 え?また違う女の子とも知り合い?みたいなニュアンスで聞いてくるユズハ。


「いや、初対面だけど……。」


 確かに僕の周りには女の子は多いが、今回は初対面である。


「追われて逃げてる時に強そうな男の人にぶつかる……これって運命じゃない?それに、ぶつかった時ビビッと電撃が走ったし〜、これはもう運命としか言いようがないっしょ?」


 口調が妙に軽いな、金髪ロングなんだけど、毛先辺りがふわふわっとウェーブかかってて、まつ毛凄いし、化粧が濃い。しかもシャツに短いスカート。……なんか、昔みたことあるようなギャルみたいな感じだな。喋り方?格好?なんか違和感はあるけど……。

 だが、似合ってるかどうかと聞かれると、めちゃくちゃ似合ってはいる。

 


「てか、電撃って……確かに…まじか……リンクしてる…な…。」


「えっ、マジで!?王子様も電撃感じた?ヤバくない?マジパない。それに、なんだか力が溢れてくるし、これが愛ってやつ!?マジヤバい!!」


 目をキラキラさせて、こっちに向かってブイサイン。……なんだろう、色々混ざってる?


「王子様ってなんだ?てか追われてるのか?」


「うん、追われてる。ウチ、やればできる子なんだけど、いい加減相手してるのめんどくなって逃げてきた。ウチの運命の相手は王子様。間違いない!!」


 微妙に会話が噛み合ってるような噛み合ってないような……。


「!! 来るよ!!」


そうこうしてるうちに、どうやら追っ手が来たらしい。


「みんな、とりあえずこの娘を守るぞ!!」


「「「はい!!」」」



 とはいえ、追っ手の姿は見えないが……?いや、木々が動いている。どうやら追っ手はトレント達のようだ。

 


 それぞれ相手をするが、数が多い。しかも、森の深部だからなのか個々が強くなっているようだ。

 だが、こちらも数はそれなりに多い。強くなっているとはいえ、苦戦するほどではなかった。


「で、なんでトレントに追われてるんだ?」


「てゆーか、みんなちょーつよ。みんな見たことない種族ばっかだし、マジウケるんですけど。」


 いや、ウケないだろ。


「?まあ、いいや。トレントってあれの事?ウチが家出したから、あれを使って連れ戻すみたいな?」


「ちょっとまて、そのためだけにトレント達は使われてるのか?僕らも襲われたし、エルフ達の村も襲われてたぞ?」


「ウチがあちこちに逃げ回るから、探索範囲広げすぎて、暴走みたいな?マジダルい。」


 この娘を捕まえるためだけにトレント達を使ってるのか?しかも結界の外まで影響でてるとか?色んな意味でとんでもないなハイエルフ。


「今更だけど、君はハイエルフだよな?」


「うん、ウチはハイエルフ。一応、巫女って事になってる。」


「巫女?」


「巫女っぽくないって思ったっしょ?」


 まあ、図星ではあるが。巫女ってかギャル?


「巫女って、もっとこう……いや、なんでもない。言葉遣いとその格好が気になるんだが?」


 そういえばツバキも巫女なんだよな……なんとなく巫女っていうと、落ち着きのある清楚なイメージがあったんだが……ボタンさんはそれっぽいんだけど。


「ああ、これ?可愛いっしょ?よく見る夢でこんな格好してて、毎回ちょっとずつ違うんだけど、喋り方も面白そうだからマネしてみた。」


 ……夢で?僕らのいた時代の夢を見たって事か?だが、なぜギャル系?言葉も新旧混ざってるし。なんでマネしようと思ったんだ?よく分からん。


「……異世界の夢を見るって事か?僕のいた場所、時代にそういうような流行があった。なあ?ユズハ。」


「ん、確かにギャルといえばギャルだよね……格好と喋り方からして。私はギャルの事はよく知らないけど。」


 まあ、ユズハはそういうのに縁がなさそうだもんな。


「異世界?ん〜確かにこの世界とは違うとは思ったけど、夢だし気にしなかった。って、王子様達は異世界の人?まじウケる!!王子様が異世界から来たとかヤバいんだけど!!」


 なんか疲れるな。


「で、君の名前は?そもそもなんで追われてるんだ?」


「ウチの名前はシュナ。追われてる理由は、色々あるんだけど、簡単に言えば、無理矢理結婚させられて、子供作って、あとは人身御供みたいな?そんなんダルいから、逃げてきたの。そしたら、王子様と出会ったってわけ。」



 無理矢理結婚させられるとか、どこも似たような事があるんだな。しかも子供が出来たら、何かしらの犠牲になるという事か?

 話し方からの印象は軽いが、穏やかな話じゃないな。トレント達をなりふり構わず使っている事からして、ハイエルフ達にとっては相当大きな事なんだろう。


「ひどい話だな。人身御供って、何かの生贄とか儀式に使われるとかか?あと、王子様やめてくれ。僕はアキノだ。」


「王子様の名前はアキノ……アキノっちね。改めてよろしく、アキノっち。」


 アキノっち……王子様から一気に変わったな。まあ、王子様という柄でもないが。


「ちょっと長くなるんだけど、アキノっちなら話してもいいかな。未来の旦那様だし。ていうか、アキノっちと他の…ハーレム?はなんでこんなとこにいるの?ここには入れないはずなんですけど。」


 みんなの視線が僕に集まっている……。

 下手に口を挟むと話が進まないからか、みんな口を開きはしないが……。ツバキあたりは空気を読まず口を挟んできそうなものだが静かにしている……ハグが効いてるのだろうか。

 しかも、旦那様とか言いながら普通にハーレムとか言ってるし。シュナには一対一っていう認識はないのか?


「ハーレムじゃなくて、仲間!!僕らは森から出られなくなった事と、トレント達の暴れる原因を探るためにここにきた。」


「そうなんだ。じゃあ、ウチと関係大アリだね。ヤバ!!やっぱり、運命だよ!!」


 シュナの話を聞くと、この森の深部の出入りの出来なくなる結界は、代々巫女が張っているらしい……。巫女になれる血筋はある程度決まっていて、シュナもその1人だそうだ。


 前述とかぶるが、巫女は一定の年齢になると、結婚させられ、子供を産むと、巫女の社に隔離され、何十年もの間ひたすら村の為に結界を張り続けさせられるという事だ。


 エルフにとって、数十年というのはけっして長い年月ではないだろうが、自由を奪われるというのは当然嫌だろう。


 シュナは無理矢理結婚されられそうになったところで、やっぱり無理!!と相手を魔法で吹っ飛ばして逃げてきたのだという。本人いわく、村の為とはいえ素直に従う他の巫女達が信じられない。自分の相手は自分で探すとの事だ。

 巫女に選ばれる者は少なく、順番や適齢期が決まっているらしく、シュナがいなくなると、森を守る結界がなくなってしまう。

 ちょっとやそっとではやられるはずもないが、お高くとまったハイエルフ達は外界と極力接したくないらしい。シュナを見る限りでは想像できないが、ハイエルフというイメージからしてそうなのかもしれない。


 逃げたしたシュナを捕まえる為にトレント達を使い、森からも逃げれないように結界をさらに強化した結果、深部意外にも結界が作用し、出入りができなくなってしまったと。

 そして、深部においては、トレント達はシュナしか襲わないが、深部より外のトレント達は、結界の干渉なのかなんなのかはわからないが、コントロールが効いていないんではないかということだ。


「なるほどな……。」


 まあ、シュナの気持ちはわからんでもないが……。しかし、エルフもハイエルフも似たような問題を抱えてるんだな。



「シュナ、さっきも言ったが、僕達はトレント達を止めて、この森から出入りが自由にできるようにしたい。どうすればいい?」


「……ウチと一緒にいれば、結界の出入りはできるよ?ヤバイくらい魔力は消耗するから、一回出たらしばらくは出入り無理だけど。トレント達は……ウチには無理かも。」


 ふむ、トレント達はハイエルフの所へ行かないと無理か……。出入りにインターバルがかかるとなると、その間にトレント達の被害が出る事も考えられる。あまり時間をかけてられないな……。


「なあ、シュナの気持ちはわからんでもないが、ハイエルフ達のとこに戻すのが一番なんじゃないか?元々、シュナが逃げてきたからこうなった訳だし。」


 フェルスがもっともな事をいう。

 だが、だからって引き渡すというのもな……。


 シュナは自分のせいだという自覚はあるからか、口には出さないが、助けを求める目でこっちを見てくる。


 どうしたものか……。話し合いは…たぶんできないんだろうな。頭固そうだし。わからないけど。


「アキノさんはどうしたいんですか?私達はアキノさんが決めた事に従いますよ?」


 フィリアがそう言うと頷くみんな。


「ありがとう、みんな……。そうだな、規律とか決まりとかって、守らないといけないとは思うんだけど、全部が全部守らないといけないわけでもない。時代遅れの悪習だってあるはずだ。できることはやってみたい。」


「ア、アキノさんならそう言うと思ってました。」

「お兄ちゃんはやっぱりそうじゃないと!!」

「ふん、ずっと社の中というのも難儀だからな。」

「ですね〜。」

「ほんとアキノはいろんな事に首を突っ込むな〜。」

「アキノくんこっちの世界に来ても変わらないな〜。でも、そのせいでこんなに美女、美少女がいっぱい……ううん、私もできることがあれば協力するね。できることは少ないかもしれないけど。」


 みんな僕がそういう風に言うとわかってたんだろうな。


「えっ?助けてくれるって事?ヤバ!!まじ感謝!!みんな、ありがと!!アキノっちはやっぱりウチの王子様だね!!」


 と言いながら、腕を組んでくるシュナ。


「ちょっ!?アキノくん!?」


 ユズハがツッコんでくるが、これはシュナが勝手にやってきたんだ。


「シュナ、くっつく必要はないだろう、離れてくれ。」


 嬉しいから嬉しくないかと言われれば、タツヤじゃないが、そりゃあ嬉しい。だが、状況ってものがあるだろう。


「ううん、アキノっちはウチの王子様だからいいの!!」


 ふむ。会話になってないな。みんなの視線が痛い……どうしたものか……。

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