樹海14
いよいよ決勝戦が始まる。
どうやら勝ち上がってきたのは女のダークエルフらしい。やはり、美形でスタイルも良く、巨乳でさらに露出も高い。タツヤ辺りなら、うおー!!とか言って興奮するんだろうな。
決勝戦ではあるが、日をあけているわけではないため、多少のインターバルはあったものの疲れや傷は残ったままである。
もちろん、アルヴの傷を癒したりはしていない。あくまで、アルヴ自身が自分の力で勝たなければ意味がないからだ。
「はじめ!!」
アルヴがまず距離を取ろうとするが、逆に女ダークエルフは一気に距離を詰める。そしてそのまま攻撃を……。
仕掛けない!?
ムギューー!!
女ダークエルフはアルヴを思い切り抱き締める……。
どういう事だ?鯖折り……じゃないよな。
「アルヴ、好きだ!!私と結婚してくれ!!私はこのために勝ち上がってきたんだ!!」
試合中に公開プロポーズ……だ…と?
一気に盛り上がる会場。
そして、注目されるのはアルヴの返事である。
「気持ちは嬉しいけど、ごめん。それには答えられない。」
優しく相手の両肩を持ち、引き離すアルヴ。
……しかし、ほんとにモテるんだな。
「……………そうか。じゃあ、この試合に勝って、あんたを手に入れるとするよ!!優勝すれば賞品があるんだろう?心配しなくても、私を好きにさせるから大丈夫!!」
なんとも強引だが、私を好きにさせるという自信もすごいな。
女ダークエルフには残念だが、こういう所が、アルヴは苦手なんだろうな。
「ごめん、それもできない。この試合、勝たせてもらうから!!」
両者が距離をとる。仕切り直しである。
…………結果はアルヴの優勝。女ダークエルフは決勝にくるだけでやっとだったのだろう。両者とも消耗は激しかったが、アルヴにはまだ少し余裕があった。もし、相手にもう少し体力が残っていたならやられていたかもしれない。
勝負はついた、会場が歓声に包まれる……。
女の健闘を讃えるもの、告白の勇気を讃えるもの。アルヴの強さを認める者。認めざるを得ない者。様々な歓声と、感情が飛び交っている。
そして、
「皆さん、お話があります。聞いて下さい!!
……今日、僕はこの大会ができて、とても楽しかったです!!皆さんはどうですか?」
「面白かったぞー!!」
「またやってー!!」
「今度は勝つ!!」
肯定的な意見が飛び交う。
「ですよね、皆さん楽しめましたよね?エルフの村を襲うのはもう辞めにしませんか?」
…………………………。
シーンと一気に静まり返る。
「昔は色々あったのかもしれませんが、今、エルフ達は僕等に何かをしてきますか?直接的な恨みなんかありますか?自分達から仕掛けておいて、怪我をしただのというのは問題外です。分かりますよね?
力の矛先を変えませんか?力はお互いに高めあっていきましょう。そして、強い力は正しく使いましょう!!」
周りを伺うダークエルフ達。反対の声は上がっていないが……もう一息か?
「今回のイベントを考えてくれたのは、ここにいるアキノさんです。そして、僕がここまで強くなれたのも、アキノさんと、お仲間の皆さんのお陰です。それから、アキノ達のいた村や町では、美味しい料理や見たこともないような建物や、施設が色々あるようです。興味が湧いてきませんか?戦争を止めるのであれば、招待してくれるそうですよ。」
ざわつく会場。聞こえてくる声は肯定的なものが多い。なんとかうまくいく……か?
「そのアキノってのは、人間なんだろ?俺たちは誇り高きダークエルフじゃないのか?人間のいう事聞いて、ホイホイついていくのはどうかと思うんだがな!!それに、これはエルフ同士の問題だ、他の種族に口を出されたくはないな!!みんなもそう思うだろ!?」
そうきたか……。確かに、部外者と言われればそれまで。あとは、ダークエルフ達がどういう決断を出すかというところだが……。
ざわつく会場。さっきのダークエルフの声に賛同する者達もでてきている。ざわつきは一向に収まる気配はない。
アルヴも次の言葉を発せないでいる。
そして、アルヴの声に賛同する者達と、従わない者達で2つに別れていく会場。
まさに一触即発、今度はここで争いが起きてしまいそうな勢いである。
これはどうしたものか……。
「黙って聞いておれば、ごちゃごちゃごちゃごちゃと。人に言われたことでコロコロと心変わりしよって、自分で決めれば良かろう!!」
2つに分かれたダークエルフ達の間を歩いてくる影が4つ。聞き覚えのある声、見覚えのある姿。
いや、こんな所にいるはずない。いるはずないが……間違いない。ツバキにアクア、ネージュにフェルスである。
「ふん、お前らは強いつもりなのかもしれないが、それはここだけの話だ。危機感がなさ過ぎる。外からの襲撃にはどう対処する?強いから平気か?森が守ってくれるから平気か?妾は、アキノほどできた人間ではないからな。分からない奴には、無理矢理にでも分からせてやるわ。」
いきなりやってきて、大口を叩く部外者に四方八方から罵声が飛び交う。
「ふん、やはり、口で言っても分からんようだな。」
そう言って、胸の谷間から扇子を取り出すと、尻尾が輝き出す……。
ちょ、まさか、ここで狐火を使う気か!?
「ツバキ!!」
「おお、アキノよ。会いたかったぞ。まあ、見ておれ。」
いや、止めたかったんだが……。
一気に膨れ上がる魔力。尻尾が増えた事によって、魔力量も大幅に上がっている。
いや、まじでまずいぞこれ……。
不幸中の幸いか、この会場は村の外れである。とはいえ……
ツバキがいつものように胸を張りながら、村の外、村からはそれなりに離れた辺りに向かって扇子を振り下ろす……。
「狐火!!」
青い炎が真っ直ぐ向かっていく。
シンッ
ドゴォォォォォォォォォォォ!!!!!
一瞬時が止まったように静かになり、とてつもない爆発音。
そして一瞬のタイムラグからの爆風が襲ってくる。僕とフィリア、ロッテはとっさにみんなの前に出て少しでも被害が少なくなるようにシールドや、風の魔法で爆風を防ぐ。
当然、全てを守りきれるわけもなく、吹っ飛ぶダークエルフや、家。中には自らの魔法などで守っている者もいるようだが……。
やり過ぎだ……ツバキ。
爆風がおさまると、森の一角が綺麗に無くなっている。そして、いつものクレーター。二人で使った狐火よりは威力が少ないようだが、すごい被害である。
そして、爆発はしたものの、森に火が広がるというがなかったのはせめてもの救いである。
「ふん、どうだ?外の世界は広いぞ?そこのアキノは人間ではあるが、妾よりもずっと強い!!」
しばらくざわつきがおさまらない会場。
ツバキの元に行くと、気が抜けたのか、ふらっと倒れそうになり、それを優しく抱きとめる。
「やり過ぎだ、ツバキ。」
声をかけると、満足そうな顔をして気を失う。
こうして、武闘会はアルヴが優勝はしたものの、ツバキによる被害により、それどころではなくなり、うやむやのまま解散となった。
用意してもらった一室に集まり、お互いのいきさつを話す。
「ふん、いつまでも帰ってこんからこちらからきてやったわ。」
「ツバキもフェルスお姉ちゃんもずっと心配してたんだよ?」
「バッ、バカ!!アタイは別に心配なんて……。」
「相変わらず〜、何かに巻き込まれてますよね〜、アキノさんは〜。で〜、アキノさんの横にちょこんとくっついてる、可愛らしい子は誰ですか〜?」
ネージュが聞いてるのは、知らない面々ばかりなので、緊張して横にいるユズハのことだろう。
「ああ、この子はユズハ。僕やタツヤと同じ世界から来た人間だ。発動条件とかはまだよくわかってないが、異能をもってる。」
「えっと、は、はじめまして、アキノ君と同じ世界から来ました。よろしくお願いします……。」
みんなを見て、それぞれに頭を下げるユズハ。
「ちょ、アキノ君!!みんなアキノ君の仲間なんだよね?みんなそれぞれ特徴違うし、なんでこんなに美少女、美女ばっかりなの!?アキノ君の趣味!?」
「いや、趣味?とか言われても……。それぞれみんな事情を持ってて……一緒に行動する大事な仲間ではあるけど……。」
「あ、そ、そうだよね。ごめん。あまりにもみんな綺麗だったり、可愛かったりするからつい……」
………なんだろうな、この複雑な空気感。
「よくここがわかったな?森にいるとはいえ、この森はとてつもなく広いぞ?」
「そうなんだよ、こんな広い森、闇雲に探しても見つかるわけないってボクは止めたんだけど、ツバキがずっとお兄ちゃんはこっちにいる気がする。って、どんどん行っちゃうから、仕方なくツバキの後をついて行ったんだ。」
「そしたら、なにやら騒がしいところがあって、立ち寄ってみたら、アキノ達を見つけた……。アタイらが見てたのは最後の戦い辺りからだ。」
「ふん、愛の力だな。」
得意げに胸を張るツバキ。
そしてそれを華麗にスルー。
「森に入る事はできたのか?出る事はできなかったが……。」
「いいえ〜、入れませんでした〜。フィリアさんのお母様に助けて頂いたのです〜。」
「お母様に!?」
「ええ、またどこかで女の子を連れてくるかもしれないって〜。」
……………。
やめてよ、この空気。
「ア、アキノさん、こ、これからどうしましょうか?」
ナイスだロッテ!!
「とりあえずは、アルヴと長と話し合ってみるしかないかな。なんか掻き回すだけ掻き回して、うやむやになってしまったからね。」
トンットンッ
「アキノさん、ちょっといいですか?」
アルヴが来たようだ。何か動きがあったか?
「ああ、今行く。みんなちょっと待っててくれ。」




