樹海13
ダークエルフの村に来て数日が経った、別になにもせずいたわけではない。村で、僕らの姿を興味本位で見にくるダークエルフ達もいたが、警戒をしているとか、攻撃的な態度ではなく、純粋に興味本位という感じだ。
話してみた感じも、威圧的とかでもなく、悪く言えば馴れ馴れしい、よくいえばフランクといった感じで話が通じないような印象は受けなかった。長のお客という事になっているため、多少の遠慮はあるのかもしれないが……。
僕らがやろうとしているのは、簡単に言えば、武闘会。ルールを決めた上で戦って、この村で強いやつを決める。ってやつだ。
村にいる限りでは、ダークエルフ達でケンカなどもなく、それなりに仲良くやっているようにみえる。
エルフ達に対して恨みがあるかはわからないが、どちらかといえば、それこそ惰性、力はあるが矛先がないからエルフ達にぶつけているようにもみえる。
つまりは、その矛先を作ってしまえばいいわけだ。
そして、ダークエルフ達は祭りや、イベントは好きだという。この大会でアルヴが力を示せば、ダークエルフのみんなも聞く耳を持つかもしれない。
それでもダメなら、その時に考える。
イベント当日。村は熱狂に包まれた。娯楽が余程ないのか、ほとんどのダークエルフが集まってきているという。
参加人数としては、32人ほど。基本的には若い男女が参加するようだ。若者とはいえ、見た目だけの話で、エルフ達は長寿な種族なため、実際の年齢は分からない。
両エルフの長だって、アルヴ達よりは年上に見えるが、充分若いと言える見た目をしている。
本当はもっと参加人数はいたのだが、人数が多すぎても大会が長引くだけだと思い、予選を事前に行ってある。予選を勝ち抜いたのが、32人という事だ。その中には当然アルヴも含まれている。
アルヴは、その性格からハイエルフの血が流れているとはいえ、周りからは弱いと思われている。予選を勝ち抜いてきたという事だけでも、驚きであろう。
試合はトーナメント式で行う。人数を絞ったとはいえ、総当たりでは、時間も体力も使ってしまうからだ。
そして、試合は始まり、順調に勝ち進んでいくアルヴ。アルヴは決して弱いわけではない。それなりには戦える。あくまでそれなりにだが。ポテンシャルはもともと相当高いのだろう、エルフの村に行っている間も含め、僕らと手合わせをしながら凄い勢いで成長していった。
ほかのダークエルフ達の実力はわからないが、充分に通用するはずだ。現に今の所、苦戦する様子はみられない。
そして、アルヴが勝ち上がるに連れ黄色い歓声がどんどん大きくなる。もともとモテていたアルヴが、強いと分かってさらにファンが増えてきたのだろう。
男たちもそんなアルヴをみて、嫉妬や嫌がらせでもするかと思いきや、少しずつアルヴの実力を認め応援する者も現れた。
そして、準決勝まで進んだところで、強敵とぶつかる事になる。妙に戦い慣れた相手である。おそらくはエルフ達に率先して攻撃を仕掛けているやつの一人なのだろう。
「くっ!!」
膝をつくアルヴ。
「お前がここまでやるとは正直思ってなかったよ。だが、ここでおしまいだな!!」
ダークエルフの魔力が膨れ上がっていく……。どうやら、大技で決める気らしい。
そして、魔法が完成し、アルヴに向かって放たれる!!
アルヴに着弾し大きく砂煙が上がる。完全に勝った気でいるダークエルフ。しかし、煙の中から動く物体が……。気付いた時にはもう遅い!!
アルヴが一気に間合いを詰め一閃。
勝負有りである。
さすが準決勝だけあって、無傷というわけにもいかず、アルヴもそれなりに傷を負っている。体力も魔力も消費してきているだろう。
ついに決勝まで勝ち上がってきたアルヴ。
決勝の前に、しばらくインターバルを入れる。
お互いの体力を少しでも回復させるためである。そして、待たされる事によって、決勝への期待感もさらに増すだろう。
控え室に一人で向かい体を休めるアルヴ。そしてそこへ向かう影がいくつか。気配を潜め、そっと覗き込む。
「アルヴ、お前強かったんだな。まいった、まいった。てっきり、弱いものだと思ってだからな。」
にやにやとする周りのダークエルフ達。
「だが、さすがに連戦して、その傷ではまともに戦えないよなぁ?」
戦闘態勢に入るダークエルフ達。……どうやら、傷を負ったアルヴを亡き者にしようという事らしい。……寄ってたかって汚い奴らだ。
そんな奴らはどうなるかというと……。
「ロッテ、フィリア、ユズハ!!」
「「「はい!!」」」
「うっ!!」
「ぐっ!!」
「ぐげっ!!」
「………」
まあ、こんなもんだろう。
「皆さん……ありがとうございます。」
「さて、お前ら、なぜアルヴを襲ったのか吐いてもらおうか?」
ビクッと体を震わせるが、だんまりを決め込むダークエルフ達。まあ、そのうち何人かは、気絶してしまい、喋れないのだが……。
「決勝の相手に頼まれたか……それとも、この前アルヴの命を狙った連中……といったところか?」
顔を背け、目を合わせようとしないダークエルフ達。
ふむ。
「ユズハ、ちょっと外で見張りをしていてもらえるか?」
「ん、うん。わかったよ。」
さて、と。
床に魔法陣を描いていく……。
「さて、あまり手荒な事はしたくないが、お前らがそういう態度をとるなら、仕方がない。一人づつこの魔法陣に乗ってもらう。」
「ア、アキノさんこれって……?」
耳元で小さく聞いてくるロッテ。怪我させたりするものじゃないよと言うと安心するロッテ。
「この魔法陣に乗ると、どんどん魔力を吸い取られていき、そのうちぽっくり逝ってしまうというものだ。誰から試してみたい?気絶している奴らは幸運かもしれないな。」
青ざめるダークエルフ達。
そして、アルヴに口を聞いていたやつを魔法陣の上に座らせる。すると魔法陣がうっすらと光りだす……。
「わ、わかった。話す話すから!!止めてくれ。」
当然、エルフの魔力全部吸い取るなんて芸当はできない。ある程度消費させる事は出来るが。ただのハッタリである。
得体の知れない、自分達より強い奴らという事で、疑いながらも従う事を選んだようだ。
一度折れれば早い。ペラペラと喋りだす。こいつらは、どうやらエリシアと逃げている時に襲ってきた奴らのようである。
アルヴはハイエルフの血を引きながらも弱く、頼り甲斐がない。にもかかわらず、やたらとモテる。好きになったダークエルフに何度か告白をしたが、その都度、アルヴがいいと断られる。
そして、いつしかアルヴに恨みを持つようになった……。こいつらは、そういった集まりらしい。
要は、自分がモテないのはアルヴのせいだと言って嫉妬しているだけだ。だが、それだけに留まらず、アルヴを襲うまでとは相当歪んでいる連中だ。救いようがないな。
「……私は、そういった恋愛みたいなものはよくわかりませんが、少なくとも、人のせいにして拗ねて、自分達の事を省みる事をしない。挙げ句の果てに危害まで加えようとする人など、好きになるとは思えません。みるべきは自分達の性根でしょう。」
フィリアに言われ、ガックリと肩を落とすダークエルフ達……。
こいつらは、長の所へ連れていき処罰をしてもらう事にする。




