樹海12
樹海12
「……という感じで話はまとまったよ。」
あの後、エルフの長としばらく話をし、ダークエルフの方へもアプローチをかける事を説明した。そして、いくつか頼み事し、フィリア達の元に戻ってきたところである。
「そんな事が……。でも、エリシアさんも無事怪我もなく、話も無事終わったようですし、よかったですね。さすがアキノさんです。」
「お、お疲れ様でした!!ア、アキノさんの事ですから無事なのはわかってましたが、大きな怪我もなく戻ってこられてホッとしました……。」
「改めて、お帰り。アキノ君。心配したんだからね。」
安堵の表情を浮かべ、ニコッと笑いかけてくるロッテと、フィリアと、ユズハ。少しの間離れていたが、改めてみると、三人とも凄く可愛いな。エルフも当然美形なのだが、勝るとも劣らない容姿をしている。
そして、残りの二人はというと……。
「エリシア!!」
「アルヴ!!」
無事に戻ってきたのが嬉しいのはわかるが、熱く抱擁してしまっている。
ロッテもフィリアもユズハも、少し顔を赤らめながら直視するのは悪いと思っているのだろうが、興味の方が上回っているらしく、チラチラと二人の事を見ている。
「ラブラブだなオイ!!」
「「あ……。」」
言われて冷静になり離れる二人。まあ、別にいいんだけど。
「で、エルフの方はなんとかなった、次はダークエルフの方を説得しなければいけない。おそらく、エルフ以上に厳しいと思う。今更ではあるが、アルヴ、覚悟は出来ているか?」
「……はい。エリシアにばかり苦労をかけて、自分だけできませんでは、格好つきませんから。」
ロッテとフィリア、ユズハを見ると、頷く三人。エルフの村に行っている間に、きちんと修行をつけていてくれたようだ。
「よし、ダークエルフの村に向かうか。」
「はい。」
アルヴに案内されてダークエルフの村へと向かう。
エリシアには一度村に戻ってもらい、村の様子を見てもらっている。ダークエルフの村にエルフがいるのを見られてしまうとややこしくなるためだ。
エリシアにはエルフの村にそのまま残ってもらっていてもよかったのだが、アルヴにあって直接話したいとの事だったので、面倒だが、一度来てもらったというわけだ。
エルフの村から方角的には北へと向かう。やはりというか、それなりに距離は離れているようである。
「村はもうすぐです。」
どうやら村に近づいたようだ。まだ少し距離はあるが、灯りが見える。
アルヴには単身村に戻ってもらい、まずは説得をしてもらう。すんなりといくはずもないが、まずは意思を伝えなくては始まらない。
アルヴを影から見守る事にする。
村に入るなり露出多めの女ダークエルフに声をかけられたようだ。
……内容は聞こえないが、アルヴにベッタリくっつこうとしているようだ、アルヴ自身はそれを嫌がって、距離を取ろうとしている。なんとか諦めてくれたのか、離れていくダークエルフ。
そして、村を進むとまた女のダークエルフが現れ同じような展開をこの後何度か繰り返す。
……モテるなアルヴ。
だが、真面目な感じのアルヴからすれば、こういうのは苦手なのかもしれない。
男のダークエルフも何人かいたようだが、気にも留めないか、軽く挨拶をする程度。アルヴを襲ってきた連中はここにはいないようである。
何度か絡まれながらも、無事?目的地に着いたようである。
「お母様、戻りました。」
「ああ、アルヴ。無事だったのですね。ここ数日ずっと姿を見なかったので心配したのですよ。」
アルヴのお母さんらしき人物はダークエルフらしく褐色の美人である。アルヴに雰囲気が似ていて、やわらかい印象を受ける。この人が長、という事だろうか……。ダークエルフの印象とは離れている気がするが……。
「お母様、お話があります。」
「どうしたのですか?改まって。まずは休んで、それから話を聞きましょう。」
「いえ、このまま話をさせて下さい。」
少し間を置き、困惑する表情を見せながらも、重要な話だろうと察し、話を聞く態度を示すダークエルフの長。
「私にできることは限られてますが、聞きましょう。」
「はい……。お母様にも迷惑がかかると思い、ずっと黙っていましたが、僕はエルフとの戦争をやめたい、やめさせたいと思っています。」
覚悟を決め話出すアルヴ。そして……
「ええ、私もそう思っているわ。」
「え?」
「え?」
二人の頭にはてなマークが浮かんでいるようだ。
「え、じゃあなんで戦争はなくならないのですか?」
「確かに私はダークエルフの長ではありますが、ダークエルフ自体が基本的には本能に従って行動種族だという事はあなたも当然わかっているはず……。
あなたは、凄く謙虚で優しい子ではあるけれど。
例え、長の私がみんなになにかを言ったとしても、強制力はほとんどないわ。」
「え、でも、みんなよく相談にくるじゃないですか?それは、長の意見や許可をもらいにきてるんですよね?」
「そう、あくまで便宜上ね。本当は許可などなくてもやりたいでしょうけど、長の許可があるという事で、説得力がましますし、イベントなどで、多くの人を巻き込めるからです。
例え、私が戦争やめましょうと言ったところで、はい。辞めます。なんていう人はごく一部でしょう。それ以上の娯楽や対価があれば話は別でしょうけど。」
「そんな……。」
戦争を終わらせるどころか、長としての権限も飾り物だと分かり、がっくりと肩を落とすアルヴ。そういう事は、すべて長に任せて知らなかったのであろう。
「ごめんなさい。アルヴ。私にもっと力があれば……。」
「でも、お母様にもハイエルフの血が流れているんでしょう?」
「ええ、そうなのですが、ある時から魔法がほとんど使えなくなってしまったのです。簡単な魔法であれば問題ないのですが……。力を示そうにもこれでは……。」
「そう……ですか……。分かりました。アキノさん達、出てきて下さい……。
と、言う事です。」
「!!人間と…魔族!?」
僕達とフィリア達を見て驚く長。
まあ、そうだろうな。エルフの時と同じだ。この森の住人にとって他種属は珍しいのだろう。
「この方達は僕の恩人です。信頼できる方なので、安心して下さい。後できちんと説明します。」
戸惑いつつもとりあえずコクリと頷く長。
「事情はわかった。どっちにしても、力を示すか、娯楽を用意するか、対価を用意しないとどうしょもないって事だな。
長の影響力が少ないだけで、やる事はあまり変わらないから安心してくれ。」
てっきり、長が先導しているものだと思っていたが、どうやら違うらしい。むしろ長は協力的なようだ。
なんにせよ、アルヴには頑張ってもらうとしよう。
「と、こんな感じの事を考えているんだが、ダークエルフ達は食い付いてくると思うか?」
多少の予想ははずれたものの、僕の中で考えていたことから大幅にずれていたわけではない。むしろ、長だけでも協力的と言うだけでも、はるかにやりやすくなるだろう……。
「確かに、我々ダークエルフはお祭りやイベントが好きです。村全体を含めたイベントとなれば、喜んで協力してくれるでしょう。」
「ですが、これではアルヴが……。」
「そこは、アルヴに頑張ってもらって男を見せてもらわないとな。種族全体が納得するにはそうするしかないだろう。」
話を詳しく聞くと、確かにダークエルフは戦争を仕掛けている。そして最近はより過激になってきているという。だが、それはダークエルフ全体が望んでいるわけではなく、一部、又は半数のダークエルフが先導しているということだ。他のダークエルフも、その連中の強引さに引っ張られているところがあり、惰性で参加している者、仕方なく参加している者もいるのだという。だが、それを大っぴらに反対してしまうと、そいつらに目をつけられ、なにをされるかわからない。
不満がありながらも、なにも言わずに従っているダークエルフもいるとの事だ。
そして、それを知りながらもなにもできずにいる長は何のための長なのかと嘆いていた。
やはり、こういう奴らには、力を見せつけてやる必要があるのだろう……。




