樹海11
樹海11
一人でトレント達と戦うエリシア。今、エリシアと僕達は別で行動している。エリシアから少し離れて監視しているといったほうが正しいかもしれない。
長もこんな時に何を言い出すのだと反対していたが、こんな時だからこそだと。
説明するよりも見たほうが確実で信用できると無理やり説得して、現在に至る。
あとはハーマンがどう動くかだが……。うまく引っかかってくれるか?
エリシアはトレント達に囲まれてしまっている。なんとか捌いてはいるが、やられるのは時間の問題だろう。
だが、これは敢えてやってもらっている。命の危険ももちろんあるが、だからこそ相手も引っかかるというもの。
「はあ、はあ……。くっ、このままでは……。」
膝をつき、息を荒くするエリシア。これは演技ではなく、本当に辛いのだろう。
だが……。
「大丈夫ですか!?エリシア様!!今お助け致します!!」
ハーマンがエリシアに気付き駆け寄っていく。とはいえ、エリシアの周りにはトレント達がいる。エリシアのもとに行くには当然、トレント達を倒さなければならない。
そして、ハーマンの魔力が膨れ上がっていき……。
「この魔力量は……エリシアもろとも吹き飛ばすつもりですか!?」
これから何が起こるのかに気付き止めに入ろうとするエルフの長。それを力ずくで止める。
「何をするのです!!このままではエリシアが!!まさか初めからそれが狙いだったと言うのですか!?」
「そう、まさに狙い通り。まさかこんなにうまくいくとは思わなかったが……。」
エリシアの所へ向かおうともがくが、魔力も体力も消費しているエルフの長を抑えるのはそんなに難しい事ではない。
それにしても、今回の僕は悪役っぽいな……。
「くっ……。」
ハーマンの目にはエリシアしか入っていないようだ。こちらのやりとりには一切気付いた様子はない。
ついには、魔法をエリシアに向かって放つ!!
「エリシア!!!!」
エルフの長が思わず叫んでしまう。
ハーマンは魔法を撃った後に冷静になったのか、頭を抱える。そして長の叫んだ声が耳に入ったらしく、こちらに気付きガックリと膝を落とす。
放たれた魔法の先は、消え失せたトレント達と、無傷のエリシア。
そう、膝はついているものの無傷である。
前もって、防御魔法を唱えさせておいたのだ。何かあってはいけないので、魔方陣によってもかなり強力に強化してあるが。
なんとか上手くいったようである。トレントごと消しにかかるとはさすがに思わなかったが……。
エリシアに向かってコクリと頷く。エリシアも安堵の表情を浮かべ頷き返す。
それをみて、エルフの長も僕らが何をしたかったのかを悟ったようだ。
「こういう事ですか……。ふむ、これは確かに……ハーマン!!!!どういうことか説明してもらいましょうか!!!」
「さて、納得がいくまできちんと話してもらいましょうか?」
トレント達を片付けたあと、拘束したハーマンを長の家へと連れてきた所である。
ハーマンは観念した様子で全てを話し出した。
やはり、きっかけはホフマンがフラれてしまったことのようであった。だがホフマンを利用して地位を得ようとしていたハーマンはその事に納得できず、長になるために仲間を増やしずっと機会を伺っていた……。
そんな時、ダークエルフとの戦闘で、エリシアが逃げていくのを見かけ、仲間に始末するように指示を出した。
娘がいなくなれば後継がいなくなる。そうなれば自分にもチャンスがある。
だが、作戦は失敗。一度は戻ってきた仲間も、数人がなぜか帰ってこなくなった。
危機感を覚えたハーマンは、焦っていた。
そして、今回、トレント達に囲まれているエリシアを見つけて、行動に出てしまったとのことである。
「ふん。愚かな……。救いようがありませんね。今回はエリシアが無傷であったからまだしも、アキノという人間がいなければどうなっていたか……。悪い噂は耳にしていましたが、まさか実力行使にでるとは思いもしませんでした……。ハーマン、並びに、その仲間達、まずは牢で頭を冷やしなさい。処罰は後で伝えます。」
あの後、ハーマン邸に調査に向かったエルフ達の報告によると、ホフマンは家にいたようである。といっても、監禁に近い状態で、部屋のドアには鍵がかかっていて、逃げられないように窓も塞がれていたようだ。
そして、ホフマンはまるで別人のようになってたという。こういう場合、痩せこけて気力もない状態というのがよく聞く話ではあるが、逆にホフマンは、気力こそないものの、体格は2倍にも3倍にも横に膨れてしまっていたそうだ。
閉じ込められて、やることもない。食事だけは大量に与えられていたらしく、それをひたすら食べていたということだろう……。
なんにしても、可哀想なヤツではある。
「さて、色々とバタバタしましたが、改めて話を聞かせてもらえますか?」
トレント達の騒ぎも落ち着き、ハーマンや仲間達、ホフマンを保護して一息ついたところである。
エルフの長に、この森から出られない事、両エルフの長の使う杖が必要な事、そして、それを実現するために戦争を終わらせる手伝いをしてるという事を伝えた。
「なるほど、そんな事が……。あれの発生は気になってはいましたが、外にも出れないとは……。ですが、そのために我々にも出来なかった戦争をも止めるというのですか?」
「バカげてるとでも言いたげな表情をしているな?戦争を止めるのはあくまで手伝いだ。当然、両エルフの協力がなければ戦争を終わらせる事なんて出来ない。
それに、無理矢理杖を奪うより、その方が気分がいいしな。」
「ふむ……。我々エルフ達を相手に杖を奪える気でいるのですか……。なんとも豪胆な。ですが……どうやら、あなたは人間にしては少々特殊なようですね。まさか、転生者……?転生者がなぜ……?
いえ、エリシアの事もありますし、いいでしょう。私はあなたを信用します。」
「お母様……。」
ずっと二人のやりとりを見ていたエリシアが、安堵の表情を浮かべる。
「エリシア、私はこの方を信用する事にしました。あなた達がやろうとしている事は簡単なことではありません。ですが、私も覚悟を決めました、戦争をなくす事に全力を尽くしましょう。」
「お母様……。ありがとうございます!!」
ついには涙を流してしまうエリシア。
「まだ泣くのは早いぞ、エリシア。大変なのはこれからだ。」
「そう…ですね。はい!!絶対に戦争をやめさせましょう!!!」




