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樹海10



「お母様、お話があります。」


「エリシア、無事でしたか……ですが、色々と良くない話も耳に入っています。詳しく聞かせてもらえるんでしょうね?」


「はい、お母様…そして、周りの方々に納得して頂けるかは分かりませんが、私なりの考えと覚悟をきちんと伝えるためにここに来ました!!」


 覚悟を決めた表情でキッパリといい放つエリシア。


「……そうですか、わかりました。話してごらんなさい。ですが、事と次第によっては、処罰をしないといけません。それは肝に命じておきなさい。」


「はい……。私はこの戦争を無くしたいと思っています。」


「ええ、それは誰もが望む事でしょう。ですが、それは叶わずずっと戦争が続いているのはあなたも知っているでしょう。」


「はい。お母様も、村のみんなも大半が戦争を望んでいません。ダークエルフから攻撃を仕掛けてくるから、仕方がなく対処しているという事も分かってます。

 ですが、ダークエルフ全ての民が戦争をしたがっているわけではないのです。」


「……あなたがダークエルフエルフと一緒にいたという情報は間違っていなかったという事ですね。あなたは自分の立場が分かっているのですか?」


 少しの落胆のあと、表情が鋭くなり、さらに空気がヒリつく。


 エリシアは、その空気に飲まれそうになりながらも、今のままでは戦争はなくならない。ダークエルフと手を取り合わなければ決して実現しない事を強く説明した。

 そして、アルヴの事も。だが、お互いが惹かれ合っているというのは伝えず、信用のできる人という事だけを伝えた。


「……なるほど。あなたの覚悟、やりたい事は分かりました。ですが、まだ若いのでしょうね。思いだけでは何もできないのですよ。そして、ダークエルフと密会をしていた事実がある以上、あなたを自由にはしておけません。……分かりますね?」


「ですが!!このままでは戦争は決して無くなりません!!」


 目に涙を溜め必至に説得を試みるが……。


「しつこいですよ、エリシア。いい加減に諦めなさい。」


 説得が通じず、ガックリと肩を落とすエリシア。


「取り込み中の所すまない、僕の話も聞いていただけるかな?」


「どなたです!?勝手に人の家に上がり込んで!!……人間…?ですか……。なぜ人間がここに?そして…魔力……?とにかく!!人を呼びますよ!?」


「いきなり入って来たことにたいしては謝る。だが、人を呼ばれては困るな。こちらとしては、手荒な真似はしたくない。」


 自分で言っててなんだが、明らかに怪しいよな。そして、悪役のセリフ。


 そして、危険を感じたのかエルフの長の魔力が膨れ上がっていく。

 どうやら、人を呼ぶより先に魔法を仕掛けてくるつもりらしい。

 んー、どうしたものか。とりあえず、


「ちょっと待ってくれ、まずはこいつらを見てくれ。」


 エリシアを襲ってきたエルフ達をエルフの長の前に引っ張り出す。……そう、縛っているエルフ達を引っ張り出す。


「なっ!?人質ですか!!卑怯な!!」


 ん?

 逆効果!?


「お母様、やめて下さい。この方は私達を助けて下さったのです!!」


「エリシアを助けた?ですがこの者達は……?」


「族長様、助けて下さい。こいつに突然縛られて…言う事を聞かなければ殺すといわれ……。」


 こいつら……。


「ひぃ!!」


 睨みを効かせると、大袈裟な声を上げてビクビクと震え上がる。


「お母様、信じてください。アキノさんは私の恩人です!!」


「族長様、エリシア様もきっとこいつにそう言うように脅されてるんです!!早くこいつを捕まえて下さい!!」


 まずいな、この状況では何を言っても信じてもらえないだろう。どこの馬の骨ともらわからない人間と、ずっと同じ村で暮らしてきたエルフ達……。どっちを信じるかと言えば……。


 どうしたものか……。


「お母様!!脅されてなどいません!!私を信じて下さい!!!」


 エリシアとエルフ達を交互に見つめるエルフの長……。


「ふう……。ただでさえ大変な時に、また厄介ごとですか……。

 いいでしょう。エリシア、あなたを信じます。……ですが、アキノと言いましたか?あなたには、しばらく牢に入っていてもらいま…」

 ドンドンッ!!

「お取り込み中失礼します!!……この状況は!?」


「どうしたのですか?騒々しい。」


「はい、緊急でしたので。あれが村に大量発生しました。一体一体は強くはないので、各々対処していますが、数が多すぎるため、被害が出ています!!」


「こんな時にですか!?わかりました。私も出ます!!

 アキノとやら、あなたに構っている時間は無いようです。あなたを信用はしていませんが、エリシアの事は信じます。もどってくるまで大人しくしているなら、話くらいは聞きましょう。」


 この状況で、僕と縛られたエルフ達は放置か?それだけ余裕がないという事だろうが……。


「わかった。あれというのは木の魔物達だろう?僕も手伝おう。それを見て判断してほしい。」


 一瞬考える素振りを見せ、


「わかりました。では、あなたは私と共に来て下さい。おかしな行動をとれば……わかりますね?」


「ああ、それでいい。」


 外に出るとあちらこちらで戦闘が始まっていた。流石エルフというだけあって、魔法や弓などでうまく対処している。


 

 エルフの長は、魔法を使い次々とトレント達を倒していく。


 これは……手伝う必要ないかもな……。

 ちなみに、エリシアは後をついてきている。縛ってあったエルフ達はそのまま長の家に置いてきてある。


 ……確かに数が多いな。獣人達の村とは違いそれぞれで対処はできているものの、数が多ければ魔力も体力も削られてしまう。

 村の中では強力な魔法で一気に片付ける事も出来ない。地道にトレントがいなくなるまで戦うしかない。




「今回は数が多いですね。流石に私も魔力をずいぶん消費してしまいました。あなたは人間なのに随分と器用なのですね。」


 エルフの長でもこの数はきついようだ。疲れが出てきているのか、撃ち漏らしなども出てきているため、僕がカバーする形になっている。エリシアももちろん手伝ってくれている。

 この戦闘でほんの少しは心を許してくれただろうか?


「あれは……。」


 エリシアが何かを見つけたらしい。どうしたか聞くと、エリシアを襲ってきた首謀者ハーマンを見かけたという。

 ハーマンもこの騒ぎで、トレントの退治にあたっているのだろう……。ホフマンの姿は見当たらないらしいが。


 ……よし。


「エリシア、ちょっといいか?」


「はい。なんでしょう?」



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