樹海7
樹海7
「ん、テント一つって事は、アキノ君も一緒って事だよね?」
「一応、そのつもりだけど、やっぱ嫌かな?」
「ううん、全然、全然!!嫌ってわけじゃなくて、なんか照れるというか……フィ、フィリアさんと、ロッテちゃんは平気なの!?」
顔を赤くしながら、パタパタと手で扇いでいるユズハ。問いかけられた2人は、
「は、はい。私はアキノさんのメイドですから、いつでもご一緒させて頂きます。」
「アキノさんと冒険に出てからは一緒ですね。ふふ、そんなに長い時間は経ってないはずなのに、初めて野宿したのが懐かしいです。」
相変わらず、気にしていないようである。
あの時は、もう1人……アイリスが一緒だったんだよな。早くアイリスも助けてあげたいが……。
「ふーん、信用されてるんだね。私だけわがままいってもしょうがないし……一緒に…寝よっか?」
ちょ、言い方!!咳をして誤魔化していると、ユズハも思い当たったようで、2人で赤くなっている状態がしばらく続いた。
さすがにこないだのような事にはならないだろう……ならないと…思う。
とはいえ、気になるよな。やっぱ。意識はしないようにするが、余計に気になってしまう。ユズハも寝れないのか、やたらと寝返りをうっている。
やっとうとうとして、寝かけた頃にテントの外から声が聞こえてくる。
「ここまで、来ればなんとか……。」
「はい。でも、よかったのでしょうか?」
「こうでもしない限り、一緒になるなんてできないよ。」
「そう…ですよね……。」
なにやら事情がありそうだが、気配を遮断しているためか、まだこちらには気付いてないようだ。
「いたぞ!!こっちだ!!」
さらに、少し離れたところから声が聞こえてくる。追われてるのか?
テントから外の様子を見ると、金髪のストレート、尖った耳の女の子と、褐色黒髪の耳の尖った青年が身を潜めていた。
エルフ…か?もう1人はダークエルフ?事情は分からないが、追われているようである。
森の奥から現れたのは、やはり褐色の耳が尖ったエルフ。
金髪のエルフを見つけると同時に魔法のようなものを放つ。
金髪のエルフはそれをなんとか避けるが、さらに攻撃を続けようとする奥にいる褐色のエルフ。
すると、奥にいる褐色のエルフに向かって別の場所から攻撃が入る。暗がりなのでよくはわからないが、どうやら、奥にいる褐色のエルフに向かって、弓かなにかの攻撃を受けたようである。
状況はきちんとわからないが、この2人のエルフを追ってなにかが起きているという事は確かだろう。
どうするかといえば、もちろん。
「アキノさん!!」
みんなもすでに起きていて、様子を見ている。そして、僕のとる行動を理解しているようで、フィリアとロッテは、指示を待っている。ユズハは、静かにはしているが、状況を整理するのに必死なようだ。
「え?なに?なにが起こってるの?」
「今から、追われてるらしいエルフ2人を助ける。出来るだけ離れないようについてきて。」
「う、うん、わかった。」
テントから出ると同時に、森の向こうから、金髪のエルフ、褐色のエルフの2人に向かってそれぞれ矢と魔法が放たれる。
「くそっ!!」
褐色のエルフが、金髪のエルフを庇うため、覆い被さる。
バシュ!!
キンッ!!
「えっ!?」
驚くエルフ達。
僕が矢を防ぎ、フィリアが魔法を防せいだのだ。
「あなた達は?……人間!?と魔族!!」
ダークエルフの青年がこちらに気付く。
「追われているんだろう?細かいことは気にしないで、とにかく逃げるぞ!!」
「助けて頂いたのはありがたいですが、見知らぬ他種族についていくのは……しかも魔族に……。」
「あいつらは明らかにお前らを攻撃している。このまま死んでもいいのか?」
「……くっ。わかりました。ついて行きます。」
もう1人の金髪のエルフも頷く。
距離を取ろうと森を走るが、やはり森の民といわれるエルフとあって、なかなか逃げ切れない……。追ってくるエルフとダークエルフ同士でも戦っていたりするが、数人はこっちを追いかけてきている。
なんだこいつら……。エルフとダークエルフは仲が悪いのか?
そこへ、最悪な事にトレントが現れる。エルフ達に追われ、2人を守り、さらにトレントまで相手にしなければならない。
だが、唯一救い?としては、トレントは、追ってくるエルフ達にも襲いかかっているという事だ。
トレントの相手をしなければいけないため、こちらに手が回りきらないらしい。
まさに乱戦である。
トレントを相手にし、時折飛んでくる矢や、魔法を防ぎながらなんとか距離をとっていこうとするが、しつこくついてくる。
「ロッテ、合図をしたら殺傷能力を抑えて出来るだけ強い風を広範囲で撃って欲しい。」
「は、はい。わかりました!!」
森の中というのもあり、障害物は多いが、逆にこれを利用する。
フィリアに、ユズハとエルフ2人を連れて先に行ってもらい、僕とロッテで待ち伏せをする。
少し待つと、エルフが数人追いかけてきた。少し離れたところには、ダークエルフもいるようだ。
わざとエルフ達から見えるように前に出ていくと、観念したと思ったのかぞろぞろとエルフ達がやってくる。ダークエルフ達も、いつでも攻撃できるように、僕の方へと意識を集中する。
「光よ!!」
暗い森の中で、いきなり強烈な光を放たれ、目を焼くエルフ達。
そして、
「ロッテ!!」
「はい!!風よ!!!」
目を焼かれ隙だらけのところへとてつもない暴風が吹き付ける。当然、踏ん張る事もできずに見事にふっとばされていく。
そして、木々に体を打ち付けエルフ達は動けずにいる。
「ロッテ、行こう」
「は、はい!!あれで大丈夫でしたか?」
「バッチリだよ。ありがとう。」
「い、いえ……。」
お礼を言われて恥ずかしそうなロッテ。そういうところが可愛いんだよな。
殺傷能力を抑えたのは、状況もよくわからないのに、殺すというのは極力避けたかったからだ。追ってこれないようになればそれでいい。
……とはいえ、ピクリともしないエルフを見ると、少しやりすぎたかもしれないと思わないでもない。襲ってきたんだから仕方ないと割り切る事にする。
先で待っていたフィリア達と合流し、エルフ達が目を覚まして追いかけてこないとも限らないため、一度獣人達の村へと戻る事にする。
村に着くと、辺りは少し明るくなっていた。使っていいと言われている部屋で休む事にする。
エルフが増えているが……。また決闘だと言いだすのだろうか?
詳しい事情は知りたいが、バタバタした状態で、まともに話もできないだろう。
2人のエルフにも思うところはあるだろうが、敵意がない事、事情によっては協力するという事を伝えたところでとりあえずは納得したようだ。
そして、夜が明けた。




