表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/95

樹海4



 早速、試合を開始って、気が早いな。準備もあるだろうに。といっても、元々、そのつもりで来ているらしく、連れている中から3人と、さっきの見張りの獣人と戦うという事だ。


 見張りの奴は、下っ端ではなかったという事だな。もしもに備えて、それなりに強い奴に見張らせていたという事だろう。



 試合は一対一で、戦い勝者の多い方の勝ち。だが、実力を認めてもらうためにも、勝ち負けが決まったあとであっても、全員最後まで戦うとのこと。

 試合場みたいなものはなく、この広場で戦うらしい。それなりに広さはあるため、よほど村に被害が出る事はないだろう。


 さて、問題は獣人達の強さだな……。やはり、獣人というだけあって、変身したユズハの時のように、瞬発力や、跳躍力、力も強いのかもしれない。その辺りは、戦ってみないとわからないか……。


「さて、まず第1試合を始める。戦う者は前へ!!」


 誰を先にだすか……。いきなりユズハを出すのは危険だろう。


「わ、私が出ます。いきなりユズハさんに戦わせるのは危険ですよね?」


 ロッテが意図を汲んで出てくれるようだ。言わなくても察してくれる、さすがメイドといったところか。


「ありがとう、ここはロッテに任せるよ。」


「はい!!」


 ロッテと、獣人達の代表1人が前に出る。犬人の男のようだ。


「始め!!」


 村長が始まりの合図を出す。

 凄い勢いで走りだす犬人、加速力はなかなかのものだ。勢いを乗せたままロッテ突っ込んでいく。だが、ロッテはそれを軽くかわし、それにともないフワリとスカートが浮かび上がり、舞っているように見える。

 めげずに何度もロッテ向かっていくが、ことごとく躱されていく犬人。


「ロッテちゃん凄い!!戦ってるのに踊ってるみたい!!」


 ロッテは確かに綺麗なんだが、相手の犬人はひたすら突っ込んでばかりいる。……もしかして、それしかできないのか?いや、さすがにそれはないだろう……。


「くっ、やるな。攻撃が全く当たらねえ。」


 まさか、まじなのか?


 ロッテが、チラチラとこちらを気にしている。そろそろ様子見はいいかということだろう。ロッテにコクリと頷く。

 するとロッテは、先程と同じように突っ込んでくる犬人を躱し、足をかけ、軽く背中をトンッと押す。元々勢いがあるだけに、バランスを崩し思いっきり転ける。

 そこに追い打ちをかけ、拳が当たる直前でピタリと止める。


「ま、まいった。」


「それまで!!」


 一回戦は、呆気なく終了した。


 マジか……。こいつら……弱い…のか?

 いや、たまたま、弱いだけだろう。一回戦は様子見ということだよな。


「アキノさん、次は私が出ます。」


「分かった。よろしく。さっきみたいな結果もありえるけど、実力も分からないし、一応気をつけて。」


「はい、わかりました。できるだけ様子を見てみますね。危なそうならすぐに勝負をつけます。」


 あちら側も、出る相手が決まったようだ。

実剣で怪我をさせてもなんなので、木剣を使わせてもらう事にしたのだが、それに合わせて相手も木剣を使うようだ。今度の相手は猫人らしい。

 この村には、どうやら犬人と猫人が住んでいるっぽいな。他にもいるかも知れないが、今のところは他の種族の姿を見ていない。


「第2試合、始め!!」


 始まりと同時に斬り込んでいく猫人。剣速は速いが、フィリアはそれを軽く受け流す。だが、懲りずに何度も剣撃を繰り返す猫人。

 剣速が速いだけで、攻撃が単調な為、軽々といなすフィリア。剣技と言うにはあまりに稚拙である。シグルド達と行動を共にしていたフィリアにとって、猫人のそれは、子供のお遊び程度にしかならないだろう。


「くっ、くそ!!はぁ、はぁ。」


 猫人はすでに息も上がってきている。対するフィリアは、汗ひとつかかず涼しい顔である。凛と立つその姿は美しく、映画のワンシーンのようだ。

 こちらにチラリと視線を送ってくるフィリア。……ロッテの時と同じく、もうこれ以上は意味ないとの判断だろう。

 フィリアにコクリと頷き返すと、ここで初めて攻撃を仕掛ける。とはいえ、木剣に対して斬り込んだだけであるが……。猫人の木剣は遥かに彼方に飛んでいってしまう。

 そして、そのままの勢いで、喉元で木剣をピタリと止めるフィリア。


「ま、参った……。」


「それまで!!」


 マジか、マジなのか?

 普通この手のセオリーとしては、いい勝負をして、4人だから、2勝2敗で、延長戦でどうなる!?みたいな展開じゃないのか?


 ……とにかく、次が問題だな。ユズハを戦わせるのは正直気が引ける。少しは武道をやっていたとはいえ、所詮は人間。獣人や魔族とは比較にならないだろう……。


「ユズハ、危なくなったらすぐに棄権してくれよ。怪我をしてほしくないんだ。」


「アキノくん……。ん、ありがとう。でも、やれるだけはやってみる。怪我っていっても打ち身程度でしょ。試合って言ってるんだし。」


 今度の相手は犬人らしい。武器はないようだが……実力は正直わからない。さっきのユズハの動きも、異能あってのものだろう。とはいえ、僕がうだうだ考えてもしょうがない。いざとなれば止めればいいだけの事。おとなしく見守る事にする。


「第3試合、始め!!」


 様子を伺う両者。獣人達は人間を見下していた。人間は身体的に劣ると。油断してくれれば、勝機はあるかもしれない。

 シビレを切らして先に仕掛けたのは、犬人。ユズハに向かって力任せに殴りかかっていく、ロッテとフィリアには大したことない攻撃でも、ユズハにとっては大きなダメージになる。が、その殴りかかってきた腕を素早く取ると、その勢いを利用し、軽く投げ飛ばす。

 犬人は、何が起きたのかわからないようで、辺りを見回している。

 ようやく、自分が投げ飛ばされたと理解した犬人は、起き上がり、懲りもせず、ユズハに向かっていく。

 向かっては投げられ、向かっては投げられを繰り返し、ようやく勢い任せでは駄目だと悟ったのか、勢いだけに任せた攻撃はやめ、様子を見ながら、手を出すようになった。

 だが、出す拳、蹴りも見事に流され、なすすべがない犬人。犬人は息を切らせ、ハアハアと荒い息をしているが、ユズハは静かに構え、呼吸も分からないほど落ち着いている。

 ロッテも、フィリアも美しかったが、ユズハはユズハで、充分通用する容姿の持ち主だろう。

 いくらやっても全く通用しないが、だからといって、降参できるわけもなく、とにかく攻撃を繰り返す犬人。

 もうへろへろ状態の犬人に向かってユズハがついに動く。相手の正面に立ち、正拳突きを繰り出す!!

 当然、寸止めではあるが、一瞬遅れて犬人に風が吹く。そして、


「ま、参った。」


 マジか、ユズハ強いな。元の世界にいた時から強かったが、まさか異世界でも通用するとは。


「それまで!!」


 騒めく広場。


 そりゃあ、魔族ならまだしも、弱いと思っていた人間にもやられてしまうのだから、それは仕方がないだろう。

 ……正直ユズハがここまでやれるとは思ってもみなかったが……。


「勝っちゃった……。向こうの世界の武道もこっちの世界で通用するみたい……だね。」


「お疲れ様、まさか勝つとは思わなかったけど。怪我がなくてよかったよ。」




 さて、今度は僕の番か。

 今までの流れからして、あまり強くはなさそうだが……。今度は様子見もいらないだろうし、一気に勝負をつけても問題ない。


「仲間の奴らは思ったよりやるみたいだが……俺はそう簡単にはいかないぞ!!しかも人間に、この俺がやられるわけがない。さっきまでのは運が良かっただけだ!!」


 仲間は散々やられたはずだが、自信満々の見張り役だった犬人。相当強いのか?まあ、やってみればわかるだろう。


「第4試合、始め!!」


 さて、どんなもんかなと。今回はお互いにフィリアの時と同様、木剣を使用している。


 一気に間合いを詰めて、攻撃を仕掛ける。

 たった一撃で、吹っ飛ぶ犬人。


「なかなかやるじゃないか。油断したぜ。」


 ボロボロになってになりながら立ち上がってくる犬人。

 さらに一撃を加えるとまた見事に吹っ飛ぶ犬人。


「ふっ、人間と思って舐めていたが、認めざるを…ふぐっ!?」


 さらに一撃、しゃべっている途中だが、関係ない。


「お前、人がしゃべってる途中で…ぐはっ!?」


 しゃべりながら立ち上がり、近づいてくるが、攻撃の手はやめない。だが、恐るべきはその根性と、タフさ。本気ではないとはいえ、あれだけ吹っ飛ばされて、見た目にはボロボロになりながらも、向かってくるというのは、なかなかのものである。

 このタフさが、自身の根拠なのだろうか。だが、いつまでも遊んでいるわけにはいかない。そろそろ勝負をつけることにする。


「どうやら、俺を本気にさせたようだな。必殺技を喰らわせてやる!!」


 どうやら、必殺技を見せてくれるらしい……。だが!!


「ぐっ!?動けない……だと!?」


 そう、足元に魔術を仕込んであったのだ。

 あとは近づいて、首元に木剣を突きつけて終わりである。


「ま、参った。」


 こうして、あっけなく獣人の村での試合は全勝で幕を閉じた。





明けましておめでとうございます。

初投稿から、1年ちょっと経ちましたが、なんとかマイペースで書き続ける事ができています。皆さんのおかげです。

今年もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ