樹海3
そこに立つユズハの姿が、変わっていた……。
「お姉ちゃん!!」
駆け寄る子供達。
街路樹だと思っていたが、魔物だったようだ。……いや、街路樹だったものが魔物になったのか?でなければ、子供達も不用意に出てきたりはしないだろう……。その辺りは後で確認しておこう。
それよりも今は……。
「ユズハその姿は?」
「ん?なに?ってええっ!!?」
驚くユズハ。
そう、ユズハの頭には猫耳、そして尻尾がはえている。……もしかしてこれがユズハの異能か?
木の魔物……ってのもいちいち言いにくいな、とりあえず、トレントと呼ぶことにしよう。トレントは一通り片付いたようなので、子供達に案内された空き家で休むことにする。子供達には家に戻ってもらっている。
ユズハはまだ、猫耳のままである。
「たぶん、それがユズハの異能だとは思うけど……。どうやったらできたかわかる?戻し方とか?」
「ううん、わからないニャ。子供達を助けようと必死だったから……。戻り方もわからないニャ。」
ニャっていうのも異能のせいか?猫人だからニャ?猫人の子供達はニャとか言わないが……?
「子供達を助けられたのも、その能力のおかげだろうね。瞬発力と跳躍力がとんでもない事になってたし。」
「そうかもニャ、でも……ずっとこのままって事は……?」
「それはちょっとわからないけど、戻らないって事はないんじゃないかな、発動条件もなにもわからないけど。」
「ん、なんだか眠くなってきたニャ、アキノくん、少し休ませてもらうニャ。」
「うん、何かあったら起こすよ。」
そう言って、近づいてくるユズハ、僕の横にピッタリくっついて猫のように丸まって眠り出した……。
「ちょ、ユズハ!!」
!!
この感覚……リンクした?
最初に触れてた時にはしなかったのに?異能で獣人化したから……か?
……すでに深い眠りに入ってしまったようだ。
「アキノさん、どうしました?」
ちらちらとユズハを気にしながら、話しかけてくるフィリア。
「ユズハとリンクしたかもしれない……。」
「ユズハさんは、人間…ですよね?牢で手を握られてた時はしてなかったっていう事ですか?」
「そう。獣人化したからかもしれないけど、今リンクしたみたいだ。」
ユズハをじっと見つめるロッテ。
「ア、アキノさん、これからどうしますか?一度戻らないと、みんなも心配するでしょうし……。」
「とりあえず、状況を見て戻ろうか。ここの村の人達が解放してくれるかって問題はあるけど……。まあ、このまま戻るって事もできるけど、なんとなく…ね。」
「そう…ですね。……すみません、アキノさん。私達のせいで捕まってしまって……。やはり魔族は嫌われているんですね……。」
「フィリア様……。」
ロッテも同じ様な事を考えているんだろう……2人の表情が暗い。
「……確かに、魔族は嫌われてるかもしれない。でも、それは昔の魔族しか知らないからだよ。僕はフィリアとロッテの事好きだよ。」
「好き……あ、いえ。ありがとうございます。」
「す、す、す、あ、あり、ありがとうございます!?わ、私も!!アキノさん好きです!!」
「ありがとう。もちろん、魔族のみんなも好きだよ。」
…………………。
…………………。
ん?
「ん、ふぁー。って、アキノくん!?ごめっ!!私…すぐ離れるから!!」
どうやらユズハが目を覚ましたようだ。そして、自分で近づいてきたくせに、びっくりして、飛びのいてしまった。
……まあ、ずっとくっつかれても照れ臭いが……。やはり、言葉使いと行動も、異能の影響なのだろう。
「ユズハ、おはよう。てか、耳と尻尾元に戻ってるね。」
「えっ、あっ、ほんとだ。猫耳がなくなってる……。て、事は、寝ると戻るって事かなぁ?」
戻ってるって自覚してるって事は、獣人化してる時の記憶はきちんとあるという事だな。よく、トランス中の記憶がなかったり、別人格が出てきたりってのは聞くが……。
「そうかも。もしくは、なんらかのエネルギーを使い切ったから、眠くなったっていうのも考えられる。」
「ん、なるほどね。どうしたら変身できるかもよくわからないけど、そんなに長い時間変身できるわけでもなさそうだね。」
……そういえば。
……どうやら、リンクが切れているようだ。
「どうしました、アキノさん?」
「ああ、ユズハとのリンクが切れた。」
「という事は、人間時のユズハさんとはリンクしないって事ですね。」
「リンクって?他の種族と繋がって……とか言ってたやつかな?えっ、なに、私もアキノくんとリンクしたって事?」
「うん、そうみたいだ。ただし、獣人化してる時だけみたいだけどね。」
「いつしたの?」
「さっき。ユズハが近づいて来た時だよ。」
「あー、暑い、暑い!!」
パタパタと顔を扇ぐユズハ。
「ん、とりあえず、今回変身した時はすぐに寝たから、分からなかったけど、次に変身した時にパワーアップするって事かなぁ?」
「獣人化してみないと分からないけど、たぶんそうなると思う。時間が伸びるとか、身体能力が上がるとか、そういう感じかな。」
「ふーん、アキノくんとリンクかぁ……。」
バタン!!
突然ドアが開かれる。
そこには、先程の牢の前にいた獣人……。
「お前達、こんな所に隠れていやがったか!?こい!!村長がお呼びだ!!」
みんなと顔を見合わせ、コクリと頷き、あとをついて行く……。
トレントと戦った跡だろう、村のあちこちが崩れてしまっている……。
連れてこられたのは、村の中央だろうか、ひらけた場所の真ん中に噴水のようなものがある。そして、そこに数人の獣人の姿がある。おそらくは、村長と呼ばれた者とそれに次ぐ者達だろう。
「よく来た。人間と魔族の娘達よ。まずは、子供達を救ってくれたという事だな。それについては礼を言う。子供達を脅して嘘をつかせたのかと思っておったが……。
村も襲われこの有様。捕まったのにもかかわらず、村に出た魔物を倒して回ったとか……。今まで聞いていた魔族の印象とはまるで違う……。
お前達だけがおかしいのか、それは分からんが、それなりの対応はしなければ、種族の恥というもの。
だが、やすやすと魔族を受け入れるわけにもいかん。
……そこでだ、我らの代表とお前達で決闘をしてもらいたい。」
「なぜその流れから決闘に結びつく?」
「ふむ、種族の差というやつか……。我々獣人族の間では、意見の対立が起きた場合、それぞれの代表を立て、決闘にて決着をつけるという風習がある。もちろん、とんでもない要求は却下されるがな。」
……つまり、強い奴の言う事を聞くって事か。まあ、魔族も魔力が多い人?が魔王なわけだし、似たようなものか。
「……決闘をして勝てば、受け入れてもらえるということだな?だが、こんな事をしてていいのか?木の魔物達がまた襲ってくることもあり得るだろう?」
「確かに、その可能性もあるだろう……。だが、村の者達はお前達を認めない。我々としては、いつ襲ってくるかわからない魔物より、今のことの方が大事なのだ。」
わからないでもないが、警戒はしておいた方がいいと思うがな。危機意識が低いのか、自信があるのか……。
「わかった。……代表って事は、こちら側も1人でいいんだよな?」
「いや、今回はお前達全員にやってもらう。」
「は?」
「そうでもしないと、皆が認めない。」
「ユズハは、戦わなくてもいいだろう!?」
「とはいえ、お互いに大怪我をしてはそれこそ、魔物に襲われた時にひとたまりもない。今回は、試合形式にしようと思う。どちらかが、参ったといえば終わり。とどめは寸止めでよしとする。そこの女…ユズハと言ったか?その女も子供達を助けたと聞いた。戦えないわけではあるまい?」
「だが……。」
あれば異能の力があったからだろう。発動条件もわからないし、戦わせるのは……。
「アキノくん、いいわ。私戦う。一応、試合だっていってるし、危なくなれば、参ったっていえばいいんでしょ?私だって、何度も試合はしてるわ。」
「それは、人間相手の話だろう?」
「ん、いいの。アキノくん達の足を引っ張るだけじゃいやだもの。」
「よし、決まったようだな。では、試合を始めるものとする。」




