タツヤの思惑
魔族の村に帰ってから、数日が過ぎた。
魔族と料理のことで意見交換をしたり、ギルドの浸透具合を見たり、村全体の雰囲気を見たり……。
チラホラと、ゴブリンや狐人の姿を村で見るようになった。村々の交流がきちんとされているということである。
基本的に他種族との交流がなかったため、どうなることかと思ったが、少しずつであれば、大丈夫なようだ。色々と事件があり、他種族と関わらないといけなくなったというのもあるかもしれないが……。
そして、村の外れにあるアイリスの家……。ここに来るたび、アイリスを戻す方法なんとか探さなければと強く思い直すが、今のところその方法は見つけられずにいる。
この世界で魔法が得意な種族とかいるのだろうか。魔法に限らず、魔術にも詳しいような……。普通に考えれば、人間の賢者的な人とかだろうが……そういえば、まだこの世界の人間に会ったことがない……。
もっと西の方へ行けばいるのだろうか?
あとは、パッと思い浮かぶのは、エルフとか?いるかはわからないが、ドワーフがいるなら多分いるだろうな。ってレベルだけど。
他には、ネクロマンサー的な人とか?ゾンビは違う気がするが、人体の事や魂の事については詳しいかもしれない。
まあ、考えていても仕方がないんだけど。
「ア、アキノさん!!」
ん?ロッテ?
「そんなに急いでどうしたの?ロッテ?」
「タ、タツヤさんが、屋敷に来てるんですが、アキノさんに話があるようなので呼びに来ました。」
「タツヤが?なんかあったのかな?」
「す、すみません。私は聞いてないです。」
「いや、謝らなくていいよ。ありがとうロッテ。」
「い、いえ……。」
「じゃあ、帰ろっか。」
「はい!!」
少し後ろからついて来るロッテ。今はメイド服姿である。相変わらず似合っている。
屋敷に戻ると、タツヤが待っていた。
「ロッテちゃん、ありがとね。アキノとのデートは楽しめた?」
「いえ、あ、あ、あの、失礼します!!」
凄い勢いで走り去って行くロッテ。
「お前なあ……。で、なんかあったのか?」
「ああ、とんでもない事だ。立ち話もなんだから、お前の部屋で話さないか?」
「それは構わないが、自分で言うなよ……。」
「で、話ってなんだ?」
部屋で、ロッテが淹れてきた紅茶を飲みながら、話を聞く事にする。
走り去ったにもかかわらず、そういう事はきちんとやってくれるできたメイドである。
「ああ、いい話と、悪い話がある。どっちが聞きたい?」
「なんだそれは、テレビの見過ぎじゃないのか?」
「いや、言ってみたかったんだよ。こういうの。で、だ。本題に入る。まず、悪い知らせからだ……。風呂についてだが、建物を建てて、その中の浴槽に水を入れる事は出来た。だが、肝心なお湯を沸かすという事が出来ない……。温泉どころか、風呂ですらない。今はまだプールとしか呼べないな。」
「ん?それだけ?事件が起きたとかではなく?」
「そうだ!!プールも十分魅力的ではあるが、やはり大浴場にも入りたい。何かないか?」
「なんというか……タツヤらしいな。まあ、魔法が使えれば、それで沸かすこともできるが、僕らがいないときは難しいだろうな。魔族達には出来るだけ魔力を使わせたくないし。当面はプールでいいんじゃないか?どうしても沸かしたいなら、どでかい湯沸かし器を作るしかないな。ゴブリン達でなんとかならないか?」
「ゴブリン達とも話してはみたが、なかなかうまくいかなくてな……。」
「じゃあ、なんとなくでいいなら、設計してみるか……。細かい部品とか加工なら、ドワーフ達に頼めばなんとかなるかもしれない。酒でも持っていけば喜んで手伝ってくれるんじゃないか?」
「おお、それはありがたい!!ドワーフといえば酒だもんな!!て、酒あるのか?」
「ああ、まだまだ発展途上だが、魔族達が研究しながら作ってる。ギルドで依頼すれば作ってくれるはずだ。」
「すごいな、魔族!!」
いや、魔族もすごいが、お前の風呂に対する意気込みが凄いよ、というツッコミは心に留めておく。
「で、いい方の話は?……あまりいい予感はしないが。」
「プールといえばなんだ?」
「プール?水?冷たい?日焼け…は室内なら大丈夫か。」
「鈍いな、アキノ。いや、わざとか?プールといえば水着だろう!!!!!!」
圧がすげーよ。
「確かに、水着がなきゃ入れないが、絶対という事もないだろう。服もあるわけだし。」
「いいや、水着は絶対だ。最近はラッシュガードとやらのせいで、夏だというのに露出が少ない。実にけしからん。」
「んー、で?」
「聞いて驚け、そして喜べ!!俺とゴブリン達、狐人、魔族の協力を経て、ついに水着が完成したんだ!!!」
「それはおめでとう。」
タツヤの熱量に逆に冷めていく。そして、そのために異種族を協力させたというのもすごい話ではある。
「そこで、水着コンテストを開こうと思います!!!!」
「は?」
「水着コンテスト!!お前も協力してくれ。というか、お前の協力が不可欠だ。お前もロッテちゃん達の水着姿みたいだろ?」
「まあ、見たいか見たくないかと言われれば、見たいが、お前みたいな熱量はないぞ。」
「それは、お前が日頃から常に美少女達に囲まれてるからだ!!俺の周りはいつもゴブリンばっかだぞ!!」
「そう言われると……。そうだなー。」
「ドワーフの村の時も手伝ってやっただろ?」
あと一息とみたか、畳み掛けてくるタツヤ。
「まあ……そうだな。……仕方ない、話だけはしてみよう。みんなが参加するかどうかまでは責任持てないぞ?」
「ああ、それで十分だ。会場は用意してある。楽しみになってきたぜー。」
準備がいい事で……。この熱を他の事に使えないのだろうか……。まあ、よくも悪くも、それがタツヤだな。
「ということで、水着コンテストをするらしい。もちろん強制参加ではないけど。水着というものをみんなに認識してもらうのと、イベントをする事によって、人々を楽しませるというものもあるってのをなんとなくでもいいから理解してもらいたいっていうのもある。ちなみに、主催は、タツヤ。審査員長も務めるそうだ。あとは、ランダムで選んだ人からの投票という事だ。」
水着コンテストの話をすべくみんなに集まってもらっている。
「水着…ですか。どんなものなんですか?」
もっともな事を聞いてくるフィリア。
「それは、説明するより、みてもらった方が早いかもしれない。」
「ふ、準備はしてある。種類とか色とかいっぱいあるけど、例えばこんな感じのものがある。」
そういいながら、何種類かの水着並べるタツヤ。
用意良すぎだろ、引くわ。
「こ、こ、こ、これだけしか着ないんですか?上に何か着たり…?」
「水着ってのは、こんなもんだよ。ロッテちゃん。な、アキノ?」
「まあ、種類にもよるけど、間違ってはいない。」
「ほう、妾は着ても良いぞ。」
「タツヤのエッチ!!」
呼び捨て、しかもそれは……。
案の定、ニヤニヤしているタツヤ。
「ん、なんだよ。アタイにも着ろっていうのか?着るわけないだろ!!」
「いやいや、フェルちゃん、そんなに可愛いのに着ないなんてもったいない!!
「フェルちゃん呼ぶな!!アタイみたいなブスがこんなの着たところで誰が喜ぶんだよ!!」
「俺が!!いやいや、俺だけじゃなくて、みんなも喜ぶと思う。そんなに可愛いのに、自分の事をブスだなんていうのはもはや罪だ。コンテストにでれば、フェルちゃんがブスじゃないって事が証明できる。」
「ブスじゃない証明……。いや、どうせ恥かくだけだ。第一、恥ずかしい思いして、出たとしてもなんのメリットもないだろう?」
「会場が盛り上がる。」
「アタイには関係ない!!」
「ぐ……。よし、わかった。優勝者は、アキノを1日自由にしていい。」
「おい!!タツヤ。」
とんでもないことを言い出すタツヤ。
「妾は出るぞ!!そして、アキノの1日を妾が頂く。」
「ほら、他の人もでないとツバキさん優勝しちゃうよ?」
「タツヤ、僕はいいなんていってな…」
「それなら、ボクも出てみようかな〜。」
参加を表明するアクア。しかも被せ気味に……。
本人の意思はスルーされてないか?
「お、アクアちゃんさすが!!ロッテちゃんは出ないの?」
「あの、あの……。」
顔を赤くしながら、もじもじしているロッテ。ロッテは出ないだろうな……。
「……で、出ます!!」
出るんかい!!心のツッコミも虚しく、続いてフィリアが、
「私も出ます。色々な事を体験して、勉強したいですし。」
「いや、それは経験しなくていい体験だ…」
「おお!!!ロッテちゃんにフィリアさんも出てくれるか!!これは楽しみになってきたぜい。残るは、ネージュさんとフェルちゃんだな?」
今度はタツヤまで被せてきやがった。扱い酷いな。
「私は〜、別に出てもいい〜ですよ〜。雪女がこんな事体験するとかなさそうですし〜。おもしろそうですから〜。」
「さて、フェルちゃん、どうする?」
「アキノを1日自由にってのは面白そうだが、アタイに優勝できるとは思えん。」
フェルスまで何言ってるんだか。
「よし、分かった。じゃあこうしよう。フェルちゃんが出てくれるなら、優勝するしないに関わらず、鉱石を必要な時採ってくるってのは?鍛治に必要だろ?」
「ぐっ……。……負けたよ。出てやる。ただし、鉱石はきちんと採ってきてもらうからな!!」
「約束は守るよ。コンテストの日時はおって連絡する。水着は色々と用意しておくから、好きなものを選んでくれ。俺は準備があるから、街に戻る。」
決まる事決まったらさっさと帰っていくタツヤ。なんというか……すごいな。
だが、まあ、これが成功して、イベントというものがみんなにわかってもらえれば、よしとするか。
……タツヤじゃないけど、みんなの水着姿ってのも見てみたいとは思うし。
勝手に景品にされてるが……。




