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魔族の食事事情

 ロッテに厨房まで案内してもらったんだが、なぜかフィリアさんまでついてきている。


「さて、とりあえずは食材を見せてもらえるかな?」


「は、はい。」


 ん〜、なるほど。なんだか野菜っぽいものがいっぱい置いてあるな。ぽいってのは、日本の知っている野菜とは少し色や形が違うからである。土地が違えば、当たり前だろう。

 だが、似てるってことは、味ももしかしたら近いのかもしれない。


 その辺にある野菜をいくつか水洗いして、かじってみる。


 んっ、やっぱり見た目が近いだけあって日本の物と味が似てるな。ただ、かなりえぐみが強いというのか、そのままで食べるにはちときつい。逆に、これさえ取れれば、料理には使えるな。

 野菜と、イモ類、果物、穀物……流石に米はないか。それはしょうがないよな。玉子もないな。あと、調味料は欲しいところ。


「ロッテ、調味料ってある?」


「調味料………ですか?」


「うん。」


………。


「ないの?調味料、しょっぱいのとか辛いのとか。」


「わ、わかりません。すみません。」


 おっと、調味料ないのか、これは参った。これも課題の一つだな。調味料も作っていかないと。塩、胡椒、砂糖は最低必要だ。欲をいえば、唐辛子も。あとは、少しずつ香辛料を増やしていって………。


 先は長いな。


「とりあえず、今あるもので軽く作るから、厨房かして、あと、包丁と鍋、火の使い方を教えて。」


「は、はい。火は必要な時に言って下さい。火をつけますので。」


 てか、フィリアさん、ずっとこっちを見てるけど、つまらなくないのかな。厨房なんかにあんまりこないだろうに。


「 そういえば肉もないよな。肉って食べないの?」


「に、人間達は肉を食べるというのは知ってるんですが、何をどうやって、という知識までないので、誰もたべないですね。」


 魔族が肉NGってわけではないんだな。それも、調達できるようにしないと。


 とりあえず、ある材料で適当に作ってみるか。灰汁抜きはしっかりしないとね。どこまで抜けるかわからないけど。


 びっくりしたのが、火をつける時。ロッテ、いきなり魔法使うんだからビックリするよ。

 とはいえ、ライター位の火を出しただけだけど。便利だな、魔法。


 ざっと、見ただけでもかなりの改善点がある。食材、香辛料に、鍋に包丁。それから、保管庫……簡単に言えば冷蔵庫だな。その辺は一通りガイゼルさんに話しておこう。



「よし、出来たっと。調味料ないから味付けに苦労したけど。まあ、こんなもんだろう。」


 味見をして……うん、美味いとはいえないけど、ありじゃないかなこれ位なら。


「ロッテ、フィリアさん、食べてみますか?」


「はい。是非!!」

「は、はい!!」


「どうぞ。」


…………。


 どうなんだろ、そもそも魔族って人間と同じ味覚なのか?それも、2人の反応次第か。


「美味しいです!!食事がこんなに美味しいなんて、初めての経験です。」


「ほ、ほんとですね、美味しいです。これが人間の料理なんですね。こんなに美味しいなら、食事を毎回取りたくなります。」


 2人とも目がキラキラしてる。どうやら気に入ってくれたようだ。


「いや、喜んでもらえたのは嬉しいんだけど、それはまだまだ序の口で、これから少しずつよくてしてこうと思ってる。」


「これよりも、もっと美味しいものができるのですか?」


「みんなの協力が必要にはなるけどね。」


「ア、アキノ様、わ、私に料理の仕方を教えて下さい。」


「もちろん、ロッテにも頑張ってもらわないといけないからね。あと、デザートも作ってみたから、こっちも食べて。」


「はい!!」

「是非!!」


 興味津々だな。


………。


 口に入れた瞬間、2人の表情が一気にゆるみ、 黙々と食べている。こっちも気に入ってくれたようだ。


「ごちそうさまでした。こんなに美味しいもの本当に初めて食べました。もっと、食について勉強が必要ですね。」


「ご、ごちそうさまでした。おいひかったでふ。」


 ロッテ、緩みすぎだ。


「えっと、魔力の回復量って、いつもの食事と同じ位なのかな?」


 もし、考え通りであれば……。


「言われてみれば………美味しすぎて気づきませんでしたが、魔力の回復量が多くなってます。」


 やっぱりか。味がよくなれば、自然に食べる量も増えるからな、当然回復量も上がるだろう。


「ガイゼルさんにも食べてもらって、意見を聞こう。」







「ごちそうさまでした。大変美味しく頂きました。ありがとうございます。確かにこれなら食事の習慣を広められそうです。」


 ガイゼルさんにもウケはいいようだ。であるならば、


「ガイゼルさん、この食事の事と今後の事についてお話が。」


「是非、お聞かせ願います。」


「セリアさんにだいたい3ヶ月位の猶予があるという事でしたので、まず、1ヶ月は僕と、ロッテ、フィリアさんの3人で森まで出て、魔物相手に訓練します。その合間をみながら、森にて、新たな食材と、調味料、香辛料の元の調達。それから、街の魔族達に調理法を広め、徐々に魔力のを回復し、街の魔族達にも手伝ってもらいながら範囲を拡大、食料調達班と、料理の研究班、街の警備班を作ります。それから役割は増やしていくつもりですが………それは順次ということで。」


「はい。」


「1ヶ月経った頃に、様子を見ながらですが、狐人の村に向かい、交渉をしてみます。残り2ヶ月の間に何とか交渉を成立させて、セリアさんを助けたいと思います。その間に他の方法がないかももちろん探しますが。最優先はセリアさんの命、そして、魔族の魔力回復と発展。その都度相談させて頂くとは思いますが、僕の中ではこんな感じの流れを考えてます。」


「なるほど、ほんとうに色々と考えて頂いているのですね、ありがとうございます。私も出来る限り協力しますので、娘と妻をどうか、よろしくお願いします。」


 とはいえ、全部が計画通りにいくわけはないから、幾つかプランは考えとかないと。それに、自分たちがどこまで強くなれるかっていうのが一番の問題かもしれない。


「ちなみにですけど、武器とか防具とかってのはあるんですか?」


「昔人間達から取り上げた物や、置いていった物ならあります。我々魔族はそういったものを身につけたがらない者が多いので。」


 その中から自分に合いそうなものを見繕うしかないか。てか、錆びて使えないんじゃ?

 魔族は武器も防具もあんまり使わないのか。それともあれか、魔力で自分の武器も作っちゃうとか。今後の事を考えると、武器や防具も考える必要があるな。


「午後からは、街の中を歩いてきますね。どんな感じなのか見ておきたいので。」


「街のものには、アキノ様の事を伝えてありますが、人間をよく思わないものもいるのは事実、ロッテ、アキノ様について行きなさい。」


「は、はい。」


「お父様、私もついて行きたいのですが……。」



「わかった。アキノ様、お願い致します。」


 フィリアさんもついてくるのか、ロッテをつけるのは監視の意味合いも含んでいるとは思うが……。ま、問題ないか。


「わかりました。街に行ってる間に、先程の班の人員を集めることってできますか?もちろん、まずはほんの一部で構わないですけど。」


「すぐ、というのは難しいかもしれませんが、できるだけの事はやってみましょう。」



 さて、街はどんな感じなんだろうな。


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