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ゴブリンの村9



 ツバキとの狐火にかけてみる事にしたが、実際どうなるかはやってみないと分からない。

 僕自身は、ある程度魔力を温存してあるため、それなりの威力は出せるだろうが、さっきのツバキのような威力はとてもじゃないが出せそうにない。ツバキにしても、自分でも言っていたが、さっき狐火を使ったばかりで、威力は期待できないだろう。


 ……という事で、効果があるのかはわからないが、保険をかけておくことにする。

 なんにせよ、これで倒せなければ、全滅は逃れられないだろう。


 幸い?苦しいのか変化の途中というのもあり、サラマンダーであった何かがこちらに向かってくることはない。

 時折その場から、火球の様なものを放ってくるが、狙いが甘く注意していれば躱す事ができる。

 やるなら動き出す前に、だな。


 みんなに近くに集まってもらい、作戦の説明をする……。

 作戦と呼べるかも分からないが……。


 全員で、ありったけの魔法をぶつけるという手もなくはないが、それだと勝ったとしても、そのあと本当に対処のしようがなくなってしまう。

 もし勝てたとしても、その後何かあった時に何もできなくなってしまう。村に帰る事すら危うい。

 ならば、今できるのはこれしかない。


 みんなと目を合わせ、頷く。


「いくぞ、ツバキ!!」

「うむ!!」


 ちなみに、ツバキは今もお姫様抱っこのままである。


 ツバキが狐火を使っている様子を思い浮かべ、意識を集中していく……。

 それに合わせて、ツバキも魔力を集中させていく……。


 すると、2人を中心に青い炎が現れ始める。その炎は、以前雪山で使った時よりもかなり大きく、もしかすると、さっきのツバキの狐火と同等。もしくは、それ以上かもしれない……。

 凄い勢いで魔力を消耗してくのがわかる。少しでも気を抜くと、暴発させてしまいそうだ。

 これだけの魔力の塊をなんとか維持できているのは、ツバキの存在が大きいのだろう。


 そして、限界ギリギリまで魔力使い切ったところで、


 ツバキアイコンタクトをとる。


「「狐火!!!!」」


  抱えたままのツバキが、扇子を取り出し、サラマンダーだったものに扇子の先端を向けると、青い炎が向かっていく……。


「風よ!!」


 着弾に合わせて、ロッテがサラマンダーの周りに暴風を起こす。



ドゴォォォォォォ!!!!!!!!!



 着弾とともに大爆発を起こすが、ロッテによる暴風により、さらに火力は上がり、サラマンダーを中心に渦を巻き始める。


 かなりの距離をとってはいるが、当然こちらは無防備というわけにはいかない。フィリアが魔法でシールドを張り、ネージュとアクアも熱対策と氷の壁を張っている。

 それでも、耐えれないほどではないが、熱気が伝わってくる。

 これだけやっても伝わってくるほどの熱量という事だ。対策を取っていなければ、自分達も危なかったかもしれない。


 2人で狐火を使う事によって、ツバキの魔力が少ないとはいえ、凄まじい威力になったという事だ。もちろん、ロッテによる援護によって更に威力が上がっているのは言うまでもない。


 これならいけるか!?

 これでだめなら、もう打つ手はない……。



 青い炎の渦は収まると、そこには深くえぐられた地面が見えるのみ……。



「やった……のか?」


 呟くフェルス。


 どうやらサラマンダーは、跡形もなく消え去ったようだ。


「どうやら……倒した……ら…し…」


 そこまで言うと、意識が遠のいていく。さっと、フェルスが寄ってきて、支えてくれるまでは、なんとか覚えているのだが……。





 どれくらい時間が経ったのだろう、目を覚ますと、まだボーッとしているが、周りにはみんなの姿があるようだ。


「目を覚ましたぞ!!」


 フェルスの声だ。


「「「アキノさん!!」」」


 目を覚ますのに気づき近寄ってくる、みんな……。


「よかった。本当によかったです。」

「ア、アキノさん具合はいかがですか?」

「お兄ちゃん、起きるの遅ーい。」

「お目覚めですか〜、よかったです〜。」


「なんとか、大丈夫っぽい?かな。痛みとかはないみたいだ。」


 どうやらツバキは、まだ横で寝ているらしい……。無理させたからな……。


 聞いてみると、あれからほぼ丸一日、経っているらしい……。

 消耗している、フィリア、ロッテ、アクア、ネージュも、ふらふらではあったが、今は動く分には問題がないという事。


 フェルスはまだ、体力に余裕があった為、見張りをしたり、みんなの世話をしてくれたようだ。


「で、だ。フェルスは何をしているんだ?」


「ア、アタイだってこんな事したくないさ。みんな順番にやってるから、交代してやってるだけだ。」


 そう、フェルスは膝枕をしているのだ。しかも、みんな交代でやってくれてたのか……。

 地べたでは痛いだろうに。

 魔力の回復を早めるためというのもあるだろうが……。


「みんな、ありがとう。もう、大丈夫そうだ。」


 みんながそれぞれ頷く。


 周りを見渡すと、闘技場のように周りを岩で囲まれていたはずが、あたり一帯何もなくなっている……。

 正確にいえば、僕らのいるところだけは、地形が変わっていない。そして、サラマンダーがいた辺りは、例によって、相当なクレーターが出来ていた。


 これは、ツバキと使った狐火のせいだよな……。本当に使い所を間違えると、敵を倒すどころか、被害は拡大し、こっちまで全滅してしまう。

 今回は人里離れた山だからいいものの、ツバキ単体でも威力のあがってしまった今、街の中ではもう間違っても使えないだろう。


「クレーターの底に何か見える……。誰かクレーターの底に行った?」


「いえ、フェルちゃんはあちこち動き回ってましたけど、誰もクレーターの方へは行ってませんよ?」


 呼び方がフェルちゃんになってるな……。


「な、何かあるんですか?」


「確かに〜、目を凝らせば何かがあるような〜?」


「底に何か塊が見えるんだ。行ってみるか……。」


「お兄ちゃん、そんなにすぐに動いて大丈夫?」


「激しく動いたりしなければ大丈夫だと思う。」


 ゆっくりとクレーターを降りていくと、底に見覚えのあるものが……。


「魔石……か?」


 そう、巨ゴブの時のように、そこには魔石があった。セリアさんからの依頼もこれで果たせるという事だ。

 引き抜こうとするが、見事に底にはまってしまって中々抜けてこない。やっとの思いで引き抜くと、


 ドバァァァァァ!!


「ドバァ?」


 引き抜いた所から勢いよく水が溢れてきた!?

……いや、熱い……温泉か?


 どうやら、天然の温泉を引き当てたようだ……。クレーターの中にどんどんと溜まっていくお湯。魔石をもってクレーターからでると、みんなが待っていた。


「アキノさん、大丈夫ですか!?これは?」


「ああ、濡れたけど大丈夫だよ。まさか温泉が出るとは……。ってみんなも濡れてる!?」


 そう、お湯が相当勢いよく吹き出したらしく、みんなも濡れている。


 目のやり場に困るな……。できるだけ見ないようにしながら、温泉の説明をする。

 ゴブリンの村でもやろうとしてた事ではあるが、あっちは天然の温泉をどうしようか考えてたところだ。……こっちの世界でも温泉はあるという事が確認できた。あとは、あっちでも掘り当てるか、これをなんとかするかだな……。


「お、温泉に入ると、疲れがとれるのですか?」


「うん、こっちの成分はわからないからなんともいえないけど、ゆっくりお湯に浸かるだけでも気持ちいいし、疲れにも効くよ。」


「ボク入ってみたい。」


「みなさんも〜、戦闘で消耗してますし〜。ちょうど、いいですね〜。」


「確かに、入りたいのはやまやまなんだけど、さすがに、ね。着替えないし……。」


「妾は、別に構わんぞ?一緒に入るか?」


「うぉっ!?ツバキ、目が覚めたか?大丈夫か?」


「まあ、歩くくらいならな。アキノと温泉とやらに入れば、もっとよくなるかもしれんがな。」


「また、ツバキはそういう事を……。」


「わたしは〜、恥ずかしいですけど〜、大丈夫ですよ〜。一度みられてますし〜。」


 さらっと、重大発言したなネージュ。


「私は……その……。」


「わ、わた、わた、わた……しは……。」


「アタイは、入らないぞ!!」


 みんな何言ってるんだ。ネージュの発言は耳にはいってないようでよかったが……。


「とりあえず、入るにしろ一緒には色々とまずい。見張りとして遠くに立ってるから、その間にみんなで入ったらいい。」


「そう……ですね。そうしましょうか。」


「は、はい。」



「普通のサラマンダーも襲ってはこないと思うけど、一応、見張っておくよ。何かあればすぐに呼んでくれれば駆けつける。」


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