ドワーフの村2
フェルスのオヤジさんによると、サラマンダーが襲ってきたのは今回で2回目、1回目の時にフェルスを逃し、村もめちゃくちゃになってしまったらしい。
戦闘に慣れてないとはいえ、力の強いドワーフだけあってある程度は倒す事ができたようだが、でかいサラマンダーによってかなりの被害を受けてしまったという事だ。
戦えるものがほぼいないところに2回目の攻撃である。今回はでかいサラマンダーはいなかったため、被害自体は少ないが、前回のダメージが大きく、今も村はボロボロである。
ただ、さっきと同様、サラマンダー達は、襲ってくるというよりも、どこかに向かう、もしくは、何かから逃げるように村を抜けて行ったという……。
だが、でかいサラマンダーだけは例外で、同族であるはずのサラマンダーすら巻き込んで暴れていたという事だ。
やはり、巨ゴブの時と同じやつが関係しているのかもしれない……。
サラマンダー達の行動は不可解ではある。
どこかに向かうにしても、今までにそんな事は起きた事がないと考えると、イレギュラーが起きたというのが妥当だろう。でかいサラマンダーが出現した時点で、十分にイレギュラーではあるが……。
今考えれるとすれば、そのでかいサラマンダーが、元々の住処で暴れ回っている……?
そこから逃げるために大移動を始めた?
原因が巨ゴブの時と同じだとすれば、普通のサラマンダーからすれば、でかいサラマンダーは十分な脅威であろう。
ほんとにそれだけなのか?
2回にわたって逃げてきたというのも引っかかる……。
原因を突き止めて、解決しなければ、いつ襲われるか分からない。
ここが少し落ち着いたら、サラマンダーの生息している辺りに行ってみるか……。
「この村の代表はどこにいますか?」
この村のがこれからどうしたいのかを確認するためである。こっちで勝手に物事を進めてしまっては、代表の立場もないし、今後の事も話をし辛くなる。それに、自分達でなんとかするというかもしれない。この現状を見れば、そんな事は言えないと思うが、ドワーフは頑固な種族だというイメージがある。
まあ、なんにせよ話してみないと分からないという事だ。
「ああ、それならフェルスが知っておる。連れてってやれ。」
「わかった。ついてきな。」
フェルスに案内してもらい、代表の所へと向かう。やはり、サラマンダーにやられていて、建物もかなりのダメージは受けているが、なんとか家としては機能しているようだ。
「叔父様、入ります。」
やけに丁寧なフェルス。人が変わったようだ……。
「おお、フェルス、無事だったか。」
中にいたのは、これまたドワーフそのままといった風貌で、どことなくフェルスのオヤジさんにも似ているように感じられる。
……ドワーフみんながこんな顔なだけかもしれないが……。
「はい、ここにいる者達のお陰で無事でございます。」
ほんとに誰だよ。さっきまでの言葉使いと、態度はどこへいった?
「ほう。その方らがフェルスを助けてくれたとな。フェルスが世話になった、礼を言う。村もこんな状況だ、なにもしてやれる事は無いが……。」
「お構いなく。あの、少しお話しいいですか?」
「人間……か?ふむ、村も慌ただしい。長くは話しておれんが、いいか?」
「はい、大丈夫です。では、手短に話します。」
「その方が助かる。」
「では、まず、サラマンダー達が襲ってきた理由は見当がつきますか?」
オヤジさんと同じだろうとは思うが、一応聞いてみる。
「ふむ、全く見当がつかんわ。突然だからな。ワシらも困惑しておる。」
「では、もし、僕達がその原因を突き止めて、解決すると言ったら、どうしますか?」
「それは、願ったり叶ったりだが、お前達になんのメリットもないだろう?それに……後ろにいるのは魔族か!?見慣れない種族もいるようだが……。お主達は……?」
ドワーフの代表とはいえ、相当いっぱいいっぱいなのだろう。ようやく後ろにフィリア達が魔族であることに気づいたようだ。だが、フェルスを助けたという事で、少し警戒しているに留まっているようだ。
魔族に構っている余裕もないのかもしれないが。
「その事についてもお話しします。これからの事も含めて。」
ドワーフの代表さんに、僕達が種族間を超えて、交流している事、そして、交流先を増やし、より良い生活をお互いに過ごせるようにしていきたいという話をする。
話を聞きながら、時々百面相のように表情が変わっていたが、そこはスルーしている。
「にわかには信じ難いが……。お前達を見れば納得せずにはおれんか……。で、その中にこの村も加われと。だが、村はこんな状態。こんなボロボロになった村になんの魅力もないだろう?」
「そうですね。今のままでは。なので、許可していただけるのであれば、仲間を呼んで、この村の復興を手伝いたいと思ってます。それから、その後の事は、村が落ち着いてからでも結構です。」
「ふむ、他種族を村に入れるか……。少し時間をくれ。その間ここで待っていてくれて構わない。」
「わかりました。」
「アタ…私もお供します。」
フェルスも代表と一緒に家を出て行く。僕らだけにして大丈夫かと思ったが、従者は何人かこの家にいるらしく、世話役として、きちんと監視されているようだ。まあ、当然といえば当然だが。
この世界のドワーフの気質はわからないが、他種族を受け入れるというのは、なかなか出来る事ではない。だが、村が滅ぶ事と天秤にかけた時どうなるか……。もっとも、僕ら自体を信用していないかもしれないが。
どっちにしろ、ドワーフ達に拒まれたら、無理に話を進める気はないが。
「どうなりますかね?」
フィリアが話しかけてくる。
「正直わからないな。この世界のドワーフの気質はわからないし。なんとなくはイメージ通りだけど。」
「ア、アキノさんの世界にもドワーフがいるんですか?」
「ああ、違う違う。お話の中ではよく出てくるんだよ、ロッテ。実際には元の世界にはいないよ。この世界の住人は、イメージの違いもあるけど、お話の中に出てくる種族が多いね。」
「ふむ、アキノの世界に行く方法があれば行ってみたいな。」
「あ、ボクも行きたい!!」
ツバキに続くアクア。
「私も行きたいです〜、でも、実際戻る方法は今のところ分からないんですよね〜?寂しくないんですか〜?」
「アキノさん、すみません。やっぱり元の世界に戻りたいですか?」
魔族が召喚したという事を気にしているのだろうフィリアが、謝ってくる。
「フィリア、気にする必要ないよ。ん〜、どうかな。この世界に来て少し経ったけど、ここはここで悪くないかなって。元の世界に戻っても、なんの為に働いてるんだって、ずっと思ってたからね。今はやりたい事をやれてるし……。
みんながいるから、寂しくないし、毎日が楽しいよ。」
実際、戻る方法が見つかったとして、どうするだろうな。自分の事なのに、その時になってみないとわからないな。
なんだかんだで、この世界に馴染んでしまったな。
「今戻った。待たせてわるかったな。早速返事をするとしよう。ワシらドワーフはお前達を受け入れる事になった……。もちろん、反対する者もいたが、フェルスの説得により、皆納得した。」
代表の横でうつむき、顔を赤らめているフェルス。
「ありがとうございます。フェルスもありがとう。」
「いえ。」
さらに顔を赤くするフェルス。いやしかし、ほんとネコ被ってるな。
「で、ワシらは受け入れた訳だがこれからどうするつもりだ?」
「そうですね、まずは、村の修復と警備が必要です。原因がわからない以上、またいつサラマンダーが襲ってくるかわかりません。
なので、仲間を呼び、修復と警備を任せます。とはいえ、あくまで手伝いですので、ドワーフの皆さんに仕切ってもらいます。
ある程度の戦力が確保できたら、僕達だけで、原因を探りに行こうと思います。」
「ふむ……。しかし、お前達だけで大丈夫なのか?みな細く、女ばかりではないか?」
「その点はご心配なく。こう見えてもみんな強いんですよ。」
「あの、私ついて行ってもよろしいでしょうか?」
フェルスもついてくる気のようだ。
「うーむ……。ワシらドワーフが1人も行かないという訳にもいかんだろう。よし、許可しよう。お前達が良ければだが?」
「監視と事の詳細も知りたいでしょうから、構わないですよ。ただし、 危険な所へ向かう事になるので、最悪命を失うという覚悟があれば、ですが。」
コクリと頷くフェルス。どうやらついてくるらしい。
「決まりだな。」




