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ギルドと魔術



 魔族の村に来て数日が経った。あれからしばらくアイリスの家に通って、ノートを読み漁っている。もちろん、ギルドの方も進めていっているが、やはりというか、魔族のみんなは飲み込みが早く、こういうものだと説明すると、すぐに活用するようになった。


 そしてギルドの、一室……ギルド長の部屋において、1つの実験を試みようとしているところだ。みんなにはそれぞれ自由に行動してもらっている。


 まず、壁に向かって、魔法陣を描く……。アイリスのところで学んだ知識と、自分の中の経験からすると、成功すると思うんだ…が……。




 パタン!!


 力が入らず、意識はかろうじてあるが、倒れてしまう………。


 マジか……。

 これ一個作るだけで、こんなに消費するのか……。狐人の村と、ゴブリンの街にも設置する予定なのに……。






 ん?


 頭の下が柔らかい?


 どうやら、そのまま寝てしまったようだが……。

 目を開けると目の前に双丘が……。


 え?


「あら、目を覚ましたの?アキノ。部屋に来たらあなたが床で寝てたからびっくりしたわ。」


「セ、セリアさん!?って、え、膝枕!?」


 びっくりして飛び起きようとするが、双丘が邪魔をする……。


「まだ、じっとしてて。今はだいぶいいみたいだけど、かなり消耗してたから、膝枕をしてたのよ。床に寝させておくのもね……。

……壁にある魔法陣のせいかしら?」


「すみません。でも、それじゃあ、セリアさんを床に座らせる事になります。すぐに起きます。」


「じっとしててと言ったわ。それよりも、この魔法陣の話を聞かせてもらえないかしら?その話が終わったら、動いてもらって構わないわ。」


 いや、でもすごく照れ臭いんだよな。この体勢。心臓もバクバクいってるし。でも、たぶん離してくれないだろうな……話が終わるまでは。


「えっと、ですね……。ギルドを村々で作るとなるとどうしても、連絡が必要になって来ますよね。」


「ええ、そうね。」


「僕とセリアさんは魔法で会話できるじゃないですか。でも、ボタンさんと、タツヤとセリアさんは魔法で会話ができない……。伝令を出すにしろ、集まるにしろ、すぐに情報交換ができないので、そういうものがあればいいなと思って、今回試してみたのですが……思ったよりも消耗してしまって……。」


 うん、うん、と頷くセリアさん。


「なるほどね……。確かに連絡手段はあった方がいいと思うわ。でも、私と、ボタンさんは魔法が使えるけど魔術は使えないはずよ?それにタツヤさんは人間よね?魔術を使える人間はいるけど、タツヤさんは魔術を使えるの?」


 もっともな事を聞いてくるセリアさん。


「はい、そこをどうするのかが1番の課題でした。基本的に魔術は人間が使います。ですが、魔族をはじめ魔法を使える種族は、魔術が使えないわけじゃない、使わないんです。

 なぜなら、魔法が使える種族は、基本的に魔力が高いので、魔術のようなまどろっこしい事をしなくても、強力な魔法が使えてしまいます。つまり、魔術を使う必要がないから使わないんです。」


「ええ。確かにそうね……。」


「もうひとつは魔術自体が、人間が使ってるのもあって、術式が人間用になってます。

 なので、セリアさんの言う通り、魔力で魔術を使うことは通常できないはずなんです。  

 それを、魔力によっても動くように、術式を変えてみました。もちろんタツヤにも使えるようにしてあります。タツヤに負担がかからないように、常にある程度のエネルギーを魔法陣に溜めておくようにしてあります。長く会話はできないですが、相手が魔力を持っていれば、問題なく動いてくれるはずです。

 ……あくまでも、はず、ですが。」


「なるほどね〜。本当に色々考えるのね。アキノを見てるだけで、ずっと退屈しないわね。魔法陣もオリジナルって事よね。すごいわ。やっぱり私と一緒にならない?それともフィリアがいいかしら?」


「いや、ほんとからかわないで下さい!!冗談ってわかってても、恥ずかしいんですから!!」


「ふふ、なんだかんだ言って意識してくれるだけでも嬉しいわ。私もまだまだ捨てたものではないって事ね。」


「と、とにかく、もう起きてもいいですか!?」


 タツヤなら、死んでも動かんとか言いそうだが、この状態は心臓に悪い……。


「ええ、そろそろ回復してるでしょ?」


 ……確かにかなり回復している。セリアさんから流れてくる魔力が凄いからだろう。もしかして、そのためにわざと煽ってたんじゃないのか?

 惚れてまうやろ!!って言いたくなる衝動は心の中に留めておく。


「ありがとうございます。魔法陣の準備ができたら、連絡しますね。」


「ええ、楽しみにしてるわ。それと、」


「はい?」


「ご馳走さま!!」


 




 日を改め、今度は、ガイゼルさんの屋敷に行き、同じように魔法陣を描く……。

 今度は、倒れてしまってもいいように、枕持参である、まあ、倒れないのが1番ではあるんだが……。

 やっぱり、きつ…いな…。


 バフッ!!



 


どれくらい寝てたのかわからないけど、なんとか動けるくらいにはなったかな……。


 枕持ってきてよかったな……ん?

 枕と感覚が違うような……まさかまたセリアさん?恐る恐る目を開けてみると、ロッテの顔が……。


「え、ロッテ!?」


「お、お、お目覚めになられましたか?アキノさん。」


「ロッテがなんでここに?しかも膝枕って……。ごめん、すぐ起きるね。」


「だ、だ、大丈夫です。もう少し、こ、このままで。」


 物凄く恥ずかしそうにはしているが、起きてはいけないらしい。この間の展開と同じじゃないか。


「セ、セリアさんが、アキノが倒れたら、膝枕をしてあげるといいっておっしゃってたので……。ご、ご迷惑でした…か?」


 セリアさんの差し金か……。


「いや、全然迷惑とかじゃくて、むしろうれし……じゃなくて、ロッテこそ、無理してない?大丈夫?」


「わ、私はアキノさんが大丈夫なら、大丈夫です!!」


「大丈夫だけど、照れ臭いかな……。」


「そ、そこは我慢して下さい。」


 とりあえず、起きるのは拒否されている感じか?回復のためだろうけど、恥ずかしいな……。

 





 かなり回復してきたので、ロッテに解放してもらい、ギルド長の部屋にはセリアさんに待機してもらっている。

 

 さて、うまくいくかどうか?


 魔法陣に近づき、意識を集中すると、魔法陣が淡く輝きだす。


「セリアさん、聞こえますか?」



「アキノ?ちゃんと魔法陣から声が聞こえるわ。」


 そして、セリアさん側から、こちらに繋いでもらうことにする。


「……魔法陣が軽く光ったけど、これでいいのかしら?」


「ありがとうございます。ちゃんと聞こえます。うまくいったみたいですね。」


 まずは、成功というところか。


 ギルド長同士の会話ということで、あとはタツヤ、ボタンさんがこれを使えなければ意味が無い。

 たぶん大丈夫だとは思うが、やってみないとなんともいえない。


 後日、タツヤを呼んで試してみたが、うまくいった。ちなみに、僕自身に関しては、他の念話と同じ要領で、魔法陣越しに話すことができる。つまり、タツヤとも魔法陣を使えば会話ができるということである。





 ギルドの方もある程度動くようになってきたので、狐人の村のギルドにも魔法陣を設置しに向かう。

 魔法陣を設置する際に、誰も入らないように言っていたのだが、目を覚ました時に、ボタンさんが膝枕をしていたのにはビックリした……。


 え、膝枕流行ってるの?



 立ち寄ったついでに、しばらく滞在し、魔族の村との交信もうまくいくのも確認済みである。

 ゴブリンの街へと戻ろうとしたその時、村がざわつきだした、リザードマンが村にやってきたのだ。


 いや、リザードマンが村にくる自体は、ここ最近の交流で珍しくはないのだが、どうやら怪我人を連れてきたみたいだ。しかも、気を失っているらしい。急ぎ、怪我人の元へ向かう。


 ベッドに寝かされていたのは、少女であった。

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