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フィリアの願い

 フィリアさんの話によると、魔族を救って欲しいという願いは当然あるが、それは自分たちも最大限動いた上での事だと思っているらしい。


 自分たちの事は出来る限り自分達でってことだ。だが、魔族達はそういった意識が低く、自分は自分、人は人、という考えが強いらしい。個々での行動はあっても、強力な指導者でもいない限り、ほとんど結束はしないと。

 魔王も大量の魔力を失っているため、全体を動かすという事はできないようだ。



 ん〜、という事は、魔族の意識改革か、指導者、もしくは魔王に魔力を取り戻してもらうか、ってことだな。

 問題は魔力の取り戻し方か……。


「魔力の回復、または増強の仕方としては、食事による方法と、人間を襲うって事でいいのかな?」


「ええ、食事では微量ではありますが…。人間を襲うというのは大量に魔力を摂取できるはずです。ただ、襲うというのはあくまで手段で正確に言えば、人間の感情の浮き沈み、感情の動きによって発生するエネルギーを私達は摂取するといった方が正しいかと思います。」


 なるほど、感情の動き………ね。という事は、


「今現在も、2人の魔力は増えていってるって事?」


「はい、その通りです。人間と接しているだけでもその人の感情が動けば私達の魔力は増えていきます。もっとも、人一人くらいでは大してエネルギー量がありません。ですが……」


「 動きがあるほどっていったよね。さっきのあれはどうなんだ?」


「ええ、エネルギーにも良質なものとそうでないものもありますが、アキノ様のエネルギーはとても……その、とても良質で、幸福感で満たされてます。」


 顔を赤くしながら、少し恥ずかしそうにいう仕草はとても可愛く、その表情はどこか艶めかしい雰囲気を含んでいる。


 ぐはっ!これはやばいでしょ。てゆうか、これも摂取されてるって事だよな。えっ、これは計算なのか?天然なのか?後者ではあって欲しいが……。


 という事は、当然ロッテも?

 見ると顔を俯かせながら、髪で顔が隠れてはいるが、顔を真っ赤にしてプルプルしている。


 なんてこった、なんかすごく恥ずかしいんだが……。それも摂取されると。うん、堂々めぐり。


 まあいいか、とりあえず害はなさそうだし、ってないよな?


「このエネルギーの摂取って、され続けると衰弱とかしちゃうの?」


「いえ、こちらから無理やり奪わなければ、何の影響もないかと。」


 よかった。


「そのエネルギーの流れが、ロッテに対して異常に強く働いているみたいなのです。もともとアキノ様のエネルギーの流れ自体普通の人間と比べるととても大きいものではあるのですが……。心当たりありますか?」


 え、もしかしてこれが異能とか?魔族に対して異常にエネルギー供給ができるみたいな?

いいのか、悪いのか……。少なくとも魔族からしたら、大きな事……か?ただ単に、感情が動きまくってるだけだったりして。


「心当たりね、ん〜。」


 あれか?ロッテと接触した時にバチッときたやつ。静電気とかじゃなかったのか?


「たぶんだけど、ロッテの角を触ったからかもしれない。」


「なるほど、普通はそんな事でどうにかなる事はないのですが…………それに、魔族にとっては大事な場所でもあるので、そうそう触らせる事もないのですけど。」


「す、すみません。」


 ロッテが頭を下げる。


「いえ、責めてるわけではないので大丈夫ですよ。それより、アキノ様。試して頂いても?」


「んまあ、触るだけなら大丈夫ですよ。」


「お願いします。」


 フィリアさんの横へ行き、角に触ってみる。


 ドンッ!!


 バチッってなんてもんじゃない、稲妻に打たれた様な衝撃、一瞬だけだが意識が飛びかけた。

 それはフィリアさんも同じようで、ビックリとした表情をしている。


「これ……か、やっぱ原因は。」


「そのよう……ですね。」


 少し間を置いて席に戻る。


「で、ものすごい衝撃があったけど、エネルギーの流れはどうなった?」


「ええ、すごい……エネルギーが流れてきます。」


 フィリアさんの顔が火照っている。が、キッと真剣な顔付きになると、


「これなら、もしかして。」


「これなら?」


「ええ、実はここからが本題なのですが……。お母様を、助けて欲しいのです。」




 話によると、元々少ない魔力でやってきた魔族達はからすれば、召喚に使う魔力など残っていない、いくらこのままでは滅びるとはいえ、どうなるかもわからないものに魔力を注ぐ事もないと、大半の魔族達は僅かな魔力供給しかしなった。

 しかし、当然そんなものでは魔力が足りず、その魔力の大半を補ったのが、フィリアさんの母、セリアさんだった。

 しかし、当然とてつもない魔力を消耗し、今は意識不明の状態だという。すぐにどうこうというのはないらしいが、魔力が尽きかけていると。

 そして、それを助けるためには魔石が必要で、そのために力を貸して欲しいと。


「話はだいたいわかったけど、僕がセリアさんのところに行くだけではダメなの?」


「それで意識が戻るのならいいのですが、残念ながら、意識がある状態でないと、エネルギー摂取が行われないのです。」


「じゃあ、あのバチッってやつは?」


「それは………やってみないとわかりませんね。」


「まずは、そこからだな。」


 とりあえず、セリアさんの魔力枯渇の原因が自分にあるのは気分がよろしくない。それが、魔族側が勝手にやったことであっても。結果として、ここに来てしまったから。




「ここです。」


 屋敷の中の一室に案内される。部屋の中に入ると、真ん中に大きな天蓋付きのベッド、まさにお姫様の寝室といった感じだ。全体的に薄いピンクと白で構成されており、控えめながらも可愛らしい部屋になっている。


 ベッドには、フィリアさんと同じピンクの髪の綺麗な女性……セリアさんの姿があった。

角はフィリアさんとよく似た少しうねりのある

形をしている。


 フィリアさん、ロッテに目を合わせ頷くと、セリアさんの角に手を伸ばす。


 シンッ


 みんな息を止めて変化を待つが、静電気や、稲妻の様な衝撃はない。


「ダメ………なのかな?」


「何か条件があるのでしょうか?それとも意識が無いとやはり難しいのかも……しれませんね。」


「もう遅いし、この後の事はまた明日話す事にしないか?」


「そうですね。」


「は、はい。」


 部屋に戻りベッドに入る。明日はガイゼルさんの角を触らせてもらって、どういう時にアレが発動するのか検証してみないとな。

 もし、ガイゼルさんにもできるのなら、魔王の魔力の回復というのはとても大きいはず。

 ただ、魔王なんてとほうもない魔力が必要になるだろうから、気休め程度かもしれないけど。


 とりあえず、色々な事ありすぎて疲れた。寝よう。

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