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リザードマンの苦悩



 縛り上げたリザードマンから話を聞いた。ちなみに、1番強かったリザードマンが、やはりリーダーで、名前をシグルドという。

 ツバキはリザードマンを捕まえた事を聞き、ボタンさんを社に残し、こちらに来ている。

 その、シグルドが言うには、やはり元々リザードマンは住処を離れたり移動したりしないらしい。だが、今回は動かざる事情があるという。


 リザードマンの住む集落の族長の娘が病気になってしまったというのだ。その病気は徐々に体温を奪っていき、最後には死に至るということ。

 その病気を治すためには、はるか北の地、極寒の山地にのみ咲くという、氷のウロコという花が必要らしい。

 それを取りに行くために、腕に自信のあるリザードマンが北にむかっていると。


 さっきの戦いでもわかるように、リザードマンは寒さに弱く、そんな所に向かうのは自殺行為に等しい。そこで考え出されたのは、他の村を襲って、衣服を奪うということだった。

 命は奪う必要はないが、衣服は欲しい。交渉しても無駄だと思い、今回の行動を起こしたと。


 なんというか、発想が貧弱だな……。極寒の山地というからには、村人の衣服を奪った程度では、寒さはしのげないだろう。

 それに、襲った村で返り討ちにあえば、それすらかなわない。今回は返り討ちにあったわけだが……。




「なるほどな、その族長の娘を助けるためにってことたな。だが、色々と無理があるとは思わなかったのか?」


「オレタチニハ、コレシカデキナイ。ヤレルコトヲヤッタダケダ。ツカマッテシマッタガナ。」


 さて、どうしたものか。このまま見捨てるという手もあるが……。あの剣技はなかなか捨てがたい。魔族やゴブリン達にも役に立つはずだ。こいつら自身もそれなりに強いみたいだしな……。


「よし、助けてやるよ。」


「!!」


「アキノさん!?」

「アキノ、本気か?」

「お兄ちゃん?」

「ア、アキノさんならそういうと思いましたが……。」


「みんな、ごめん。今後の全体の事を考えると、これが1番いいのかなって。もちろん、みんなが反対するなら、村に残っててもらっても構わない。」


「ショウキカ?ニンゲン。ソンナコトヲシテモナンノトクモナイダロウ。」


「もちろん、タダとはいわない。条件がある。それを飲んでくれるなら、助けてやるよ。」


「……オレタチ二センタクシハナイ。ジョウケンハナンダ?」


「無事助けることができたなら、ゴブリン達の街の中、もしくは周辺に住んでもらう。そして、その剣技を教えて欲しい。あとは、この村を含む、周辺の見張りをしてもらいたい。」


 この村が襲われるのは2回目だからな。村の人達も強くないし、外から守らないと、いつか本当に取り返しのつかない事が起こりそうだ。

 ……ここの村人にも多少は剣術を習ってもらった方がいいな。反対されるだろうが、そこは説得するしかない。


「……ワカッタ、ゾクチョウニハナシヲツケテコヨウ。」


「じゃあ、シグルド。お前だけ解放する。他の奴らは、お前が戻ってからだ。」


 一応、保険をかけておいた方がいいだろう。


「ワカッタ。」



「さて、僕はシグルドと一緒に住処に行ってくるよ。1人で行かせて、嘘をつかれてはどうしようもないからね。」


「私もお供します。」

「わ、私もついていきます。」


「わかった。じゃあ、ツバキとアクアは村にのこってくれ。」


「うん。気をつけてね。」

「いざという時は、声をかけてくれ。こやつらの住処ごと吹っ飛ばしてやるわ。」


 アクアは素直に見送り、ツバキはドヤ顔で胸を張る。


「それだと僕らまで巻き添えだろ!!『そなたらなら大丈夫であろう。』とか言ってやりかねんから恐い……。」


「よくわかっておるではないか。……なんてな。アキノを失うような事はせんよ。安心せい。」


 笑えない冗談だ。加減を知らないからな、ツバキは。






 シグルドに案内されて、リザードマン達の住処へとやってきた。狐人の西の湖から南、狐人の村から南西に当たる所にそれはあった。

 住処と言うに相応しく洞窟のようになっている。

 中に入ると、意外にもあったかい。年中この暖かさであれば、確かに移動する必要もないだろう。


……こんな所に住んでいるなら、移動しろと言っても難しいかもしれないな。


 大まかに説明をされるが、洞窟は入り組んでいて、全くわからない。案内がいないとおそらく迷う。

 あとをついてくる、ロッテとフィリアはしきりに周りを観察している。迷わないように、しっかりと記憶しているのだろう。

 洞窟の住処が珍しくて興味津々なだけかもしれないが……。


 かなり奥まで歩いてきた。するとシグルドは立ち止まる。


「ココダ、スコシマッテイロ。」


 どうやら、族長の所にきたらしい。さて、どうでるか……。

 

「リザードマンって、こういう所で暮らしてるんですね。」


「うん、なんかイメージだともっとジメッとしてるとこを想像してたけど……。」


「な、中は暗いのかと思ってましたけど、光は一定間隔の松明と、光苔で照らされて、生活には困らないようになってますね。」


「光苔……綺麗だし、明かりも取れる。少し持って帰って、増やしてみようかな。」






 しばらくすると、シグルドが戻ってきた。


「ハイレ。」


 中に入るとひらけており、きちんとした部屋になっている。客間らしき場所に通される。家具のようなものもあるが、出来がいいとはいえない。イスなども丸太を切っただけのような物が並んでいるだけだ。


 簡易なテーブルの奥に、リザードマンが座っていた。見た目は、ほぼ同じ……。多少の顔の違いはあるが、種族が離れているからか、あまり他のリザードマンと見分けがつかない。だが、佇まいに威厳のようなものは感じる。さすが、族長といった所か。


「話は聞いた。手助けをしてくれるそうだな。感謝する。それから、うちの者が無礼をしたそうだな。それについて詫びよう。」


 族長……流暢に話すな。聞き取りやすい。しかも、話がわかる人ぽい?


「条件については?」


「娘が助かるのであれば、受けようと思う。だが、皆が受け入れるとは限らん、それでもいいか ?」


 思いのほかすんなりと受け入れてくれたな。まあ、言ってる事はわかる。それなりに不自由なく生活をしてるのに、場所を移動しろと言われても、はい、従います。とはならないよな。


「剣術を教えてもらうのと、警備をきちんとしてもらえれば、移動については強くは言わない。だが、移動することにより、生活レベルが今より上がる事は保証する。」


「ふむ……。わかった。皆に伝えよう。」


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