セリアと魔族2
食事を済ませた後、フィリアと2人でセリアさんの部屋へとやってきた。
「2人とも、来てくれてありがとう。早速、本題に入ろうと思うのだけれど。いいかしら?」
「「はい。」」
セリアさんの話によると、僕らが手に入れてきた魔石……。あれの純度が高すぎたらしく、回復したこと自体に問題はないのだが、魔王…ガイゼルさんの今の魔力を上回ってしまっているとのこと。
基本的に魔族は魔力が基準であり、魔族の中で1番魔力が高い=魔王というのが当たり前なのだそうだ。
つまり、今のままではセリアさんが魔王になってしまうらしい。
問題ないのでは?と思うが、魔王は魔王で色々とやる事があるらしく、忙しいらしい。
簡単にいうと、面倒くさいからやりたくない。という事だ。
当面はなんとか誤魔化しておけるだろうが、魔力を見破る魔族もいるので、いずれバレてしまうと。
「要は、ガイゼルさんの魔力を、セリアさんより増やせ、という事ですか……。」
「そういう事。当面は、魔族が滅ぶという危機は回避できたわけだけど、外部からの脅威から身を守るためにも、魔力を増やしていった方がいいもの。夫だけでなく、魔族全体の魔力を増やせるのが、理想ではあるけれど。
とはいえ、こんなお願いしても、アキノさんには、なんの得もないものね。
勝手なお願いだという事はわかってるわ。そこで、フィリアと一緒にって話になるのよ。」
「ええと、前半の意味はわかりますけど、最後の一緒にっていうのは……?」
「フィリアと結ばれるという事ね。つまり、結婚。私も夫もあなたには救ってもらっているわけだし、反対どころかむしろ願ったりかなったりではあるけれど。フィリアは私が言うのもなんだけれど、可愛いし、性格も良いと思うわ。悪くはない話だとは思うのだけれど。それに、あなた達はすでに繋がっているのでしょう。」
フィリアと結婚?いやいやいやいや、確かにフィリアは綺麗だし、性格も良い。じゃなくて、フィリアの気持ちもあるだろう。繋がってるのは確かだけど、あれは能力だし。
魔力の事、外部からの脅威、この辺りは自分でも考えてはいたけど……。
魔力を上げるものとなると、魔石か、それに代わるもの、リンク……か。ガイゼルさんはリンクできなかったしな。
それよりも、とりあえず今は………。
「フィリアの気持ちもありますし、そんな急に言われても困るのですが……。」
「フィリアは、アキノさんの事どう思う?」
直球だな。凄くなんか恥ずかしいんだけど。なんで、こんな展開に?
「私は…そうですね……アキノさんは凄く頼りになりますし、尊敬もしてるし、恩もあるのですが……。結婚っていうのは、よく分からないです。みんなでずっと一緒にいれたらいいな、とは思いますが……。」
意外と悪くはない反応。赤くなってもじもじしてる様子が愛らしい……。
「ん、悪い印象は全くないわけね。今はそれで充分よ。」
魔族全体のために、フィリアを嫁に出すって事だよな。なんか……うーん、そういうのはあまり好きじゃないな。
「その話は置いといて、疑問に思ったんですけど、人と魔族って、子供生まれるんですか?」
「あら、もう子供の話?気が早いわね〜。」
「そういう事じゃなくて!!」
「ふふ、冗談よ。私はそれでも構わないけれど。……魔族と人の子はできるわよ。過去にも魔族と人のハーフが生まれてるもの。魔族と人間じゃあ、色々と問題もあるみたいだけど、あなたは、この世界の人間ではないし、魔力も持っている。どちらかといえば、こちらに近い存在だし。問題ないわ。」
「僕が、魔族に近い……ですか。」
「あら、嫌かしら?」
「そんな事はないですが……。魔族っていっても、魔力を持っている事と、見た目が少し違うだけの話ですし。」
「普通はそういう考え方はできないものよ。人間は、見た目が違うだけ、自分より能力が高いだけで、恐れ、排除しようとするのだから。」
まあ、元の世界の人間も同じようなものだとは思うが……。魔族に近いか……考えた事もなかったな。
「フィリアが駄目なら私の夫になる?」
「え!?」
「お母様!!」
「あなたは、さっきも言った通り私の恩人でもあるわけだし、私はあなたを気に入ってるわ。」
「いや、でもそれ以前の話で、ガイゼルさんがいるじゃないですか!?」
「あら、一部の人間達のように、一夫一婦じゃなきゃいけない決まりなんてないわよ?魔族ですもの。それに、人間でも、地域によっては、多妻制の所もあったはずよ?それとも、私じゃ不服かしら?」
妙に艶かしい表情で見つめてくるセリアさん。フィリアは、どうすればいいかわからないようで、動けずにいる。
「いや、セリアさんは凄く綺麗で、魅力的ですけど……。不服とかそういうのじゃなくて……。」
「ふふ、ありがとう。まあ、それも一つという事よ。考えておいて。それにしても……凄いわね。」
「何がですか?」
「あなたから流れてくる魔力が、よ。食事の時も感じたけれど。リンクすると、さらに流れてくるのよね?」
「はい、ちょっとした戦闘位であれば問題ないほどに。」
もしかして、僕の感情をわざと揺さぶって、魔力の増える量を観察していた?だから、朝食の時から、やたらとからかってきたって事か?
どこまでが嘘で、どこまでが本気かよくわからないな。
「条件はなんなのかしら?」
「それが、はっきりとはわかってないんです。その種族の特徴的なものに触れると、リンクする事があるという事くらいしか。ガイゼルさんの時は駄目でした。セリアさんも、目覚める前に、角を触らせてもらったのですが、リンクはしませんでした。」
「そう……今触ったらどうなるのかしら?」
そういって、近づいてくるセリアさん、って、近!!近過ぎるって!!思うのも束の間、そのままハグされる。
「ちょっ!?セリアさん!?」
「お母様!?」
「触ってみて?どうかしら?」
耳元で、そんな事言われたら、もう。いい匂いがするし、ふわっと全体が柔らかいし。色々とヤバいなこれ……。
と、とりあえず、角を触ればいいんだよな。
ドンッ!!
衝撃が身体に走る!!
まさか、リンクした!?
「これが……リンク?」
「どうやら、リンクしたみたいです。あ、あの、もう離れてもらってもいいですか?」
「あら、ごめんなさい。でも、なるほど、フィリアの言った通り、さっきよりも格段に魔力が流れてくるわ。それも、凄く上質の……。」
セリアさんと、リンクしたという事は、条件の一つとして、相手の意識がある状態でないといけないという事か。あとは、何かしらの条件を満たしたか、だな。
セリアさんが、妙に艶っぽいのは気のせいか?
なんにしても、いい加減普通にしてもらわないと、照れやら恥ずかしさやらで、精神的にきつい。
「とりあえず、魔族全体の魔力を増やす方法と、ガイゼルさんの魔力をセリアさん以上にするって事ですよね?」
「ええ。」
「すぐには難しいと思いますが、その方法を探そうと思います。もともと、落ち着いたら旅に出るつもりだったので、世界を回って、その方法も見つけれたらなと思います。」
「アキノさん、旅に出るんですか!?」
「うん、世界を見て回りたいと思ってね。アイリスの事もあるし……。魔族みんなの事も、できる事はしようと思う。」
「そう…ですか。ずっと、アキノさんに頼ってばかりですね。私にもできる事があればいいのですが……。」
「だから、結婚したらっていってるのよ。フィリアほどの子と結婚できるなんて、喜ばない人なんていないわよ。」
「そうなんですか?」
フィリアが視線をこっちに向ける。この展開やめてほしいんだけど。答え方が難しいな。
「フィリアみたいな子なら、嬉しい…けど、お互いの心の方が大事だと思うから、形だけ結婚しようっていうのは違うかなって。」
「なるほど…。ありがとうございます。」
なんとなくは、わかってくれたのかな?
「アキノは真面目ね。そこがいいところなのかもしれないけど。……そうね、フィリア。あなたもアキノについていきなさい。一緒に世界を見て、世界を知ってきなさい。」
おっと、呼び方が呼び捨てになってる!?まあ、嫌な気分ではないが……。
「いいんですか?」
フィリアの表情が明るくなる。
「ええ、行きたいんでしょ?アキノ、フィリアも連れていってもらえるかしら?」
断らないって知って聞いてるよな絶対。
「それはいいんですけど、大丈夫なんですか?色々と。村の事とか、大事な娘を旅に出すとか。」
「村のことは夫のガイゼルに任せておけば大丈夫よ。いざという時は、わたしの魔力もあるし。フィリアの事はアキノに任せるから。なんの心配もしてないわ。なんなら、家族が増えました。なんて帰ってきても大丈夫よ。」
「その心配はないと思います!!」
「あら、そう?」
「フィリア、旅といってもあてはないし、いつ戻ってこれるか分からないけど、いいの?」
「はい、私も世界の事を知らないですし、知る事で色々な事に活かせると思うので……。」
ええ子や……。
「フィリアがいいなら、僕は大丈夫。あと、他のみんなもついてくると思う。セリアさん、ロッテの事なんですけど……。」
「ええ、いいわよ。」
「え?」
「ついていきたいんでしょ?いいわよ。フィリアが行くのに、あの子だけ残らせるなんて可哀想だもの。ついでに、副妻にでもしてあげるといいわ。」
「そういうのもういいですから……。」
「……フィリアとロッテをお願いね。頼りにしてるわ、アキノ。」
急に真面目な顔してお願いされるとドキッとするな。
「わかりました。」
「それと……」
?
「ご馳走さま!!」
結局、からかわれてるのか、なんなのかよくわからないまま終わったな。
ただわかってるのは、大量の魔力がセリアさんに流れ込んだという事だ。……もちろんフィリアにも。
セリアさんのあの性格は、素なのだろうか……それとも……?




