巨ゴブとの死闘その後3
今なんて?
アイリスお姉ちゃんじゃなくて、アクアだよ?
ん?
「またまた〜、アイリスってばお茶目さんなんだから〜。そんな芝居には引っかからないよ。」
……………。
あれ?
なんか反応……違う?
一瞬困ったような表情を浮かべると、アクアと名乗るアイリスは喋りだした。
「アイリスお姉ちゃんの体の中で眠ってたアクアだよ。お姉ちゃんは、今、体の中で眠ってるみたい………。入れ替わっちゃったのかな?」
「もし、それが本当だとして、今の状況がわかるのか?ずっと封印されていたんだろ?」
「うん、ずっとお姉ちゃんの中で眠ってたけど、最近夢を見るようになったの。最初は、大きな熊と戦ってる夢……。それから、ずっと夢を見てたよ。夢だと思ってたけど、違ったみたい。」
熊と戦ってるって……アイリスとリンクした時からか?
「アイリスを通じて、外を見てたって事か。」
「うん、そうみたい。アキノお兄ちゃんに、フィリアお姉ちゃん、ロッテお姉ちゃんに、ボタンお姉ちゃんに、ツバキ!!」
ツバキだけ呼び捨て!!
出来る子だな、この子。
ツバキはツバキで、がくっと体制を崩す。
「入れ替わってるとして、きっかけはやっぱり魔術の使い過ぎで倒れた事が原因か………。」
「ん〜、どうなんだろ。倒れたところまではなんとなく覚えてるけど、入れ替わった原因はわかんない。でも、元に戻さないと、アイリスお姉ちゃんがかわいそう。」
「原因の一つではあるかもしれないけど、はっきりしないって事だな。でも、アイリスに戻ると、アクアがまた眠る事になるんじゃないか?」
「そうなんだけど………。お姉ちゃんの身体だし。」
「アイリスを戻して、アクアをきちんとした形で元に戻す方法を探さないとな………。」
そんな事ができるのか?とは思うが、できなければアイリスはずっと眠ったままだ。
……しかし、こんな形でアイリスの願いが叶うとはな。でも、肝心の本人がいないんじゃ意味がない。
セリアさんの件はもうすぐかたがつきそうだけど………。しばらくはのんびり過ごす事は出来ないかもしれないな。
「色々考えないといけない事があるけど、セリアさんの所へ行こうか。早く助けてあげないと。」
「お父様、ただいま戻りました。」
「お帰りなさい、フィリア。皆様も長旅ご苦労さまでした。おや、お一人増えてるようですか……狐人の方ですかね。はじめまして、この村を治めている、ガイゼルと申します。
……結果はいかがでしたか?」
ガイゼルさんに、狐人の村での出来事、ゴブリンの街での出来事を大まかに説明をする。
「なるほど、わかりました。ありがとうございます。大変ご苦労をおかけしたようですね。皆様のおかげで、妻もよくなるでしょう。ゆっくりお休み下さい。」
「いえ、まずはセリアさんを回復させるのが先ですね。セリアさんが起きるまでは、安心して休めないので。」
みんなも同意見のようで、頷いている。
「本当にありがとうございます……。では、セリアの元へ行きましょう。」
相変わらずため息が出るほど美しいセリアさんが、ベッドで横になっている。
魔石をガイゼルさんに渡すと、ガイゼルさんはセリアさんに近づいていき、両手で魔石を握らせる。
そして、ガイゼルさんが聞き取れない何かを呟くと、魔石が赤い光を放ち、セリアさんを包む。
しばらく魔石は光り続けると、徐々に光が弱まっていき、それと同時に両手に握られた魔石も小さくなり、完全に魔石がなくなると、光も同じように消えていった………。
………………。
………………。
………………。
どうなんだ?魔石は確かに無くなって、魔力は回復してるとは思うが?
………………。
………………。
「あらあら、どうしたのかしら?こんなに大勢で?」
「お母様!!」
「セリア様!!」
フィリアはセリアさんが目覚めると同時に抱きつき、その目には涙が浮かんでいる。
そして、ロッテも抱きつきこそしないが、やはり涙を浮かべている。
アクアもつられて涙を流し、ツバキはうんうん、と頷いている。
ガイゼルさんも、安心した表情でセリアさんを見つめている。
良かった……目が覚めて……。
色々と大変だったけど、行動してよかったな。
「あらあら、フィリアったら……。」
セリアさんは、フィリアに優しい笑顔を向け、優しく髪を撫でる。
アクアと、ツバキに声をかけ、そっと部屋を出る。
セリアさんも目が覚めたことだし、これで安心して休む事ができる。これからの事はそれから決めよう。
と、その前にツバキとアクアに屋敷の中を案内しようか。
しばらくは、当事者だけにしておいたほうがいいだろう。と思ったのだが。ロッテもしっかりついてきている。しばらくは家族だけで、という事なのだろう。
「ロッテ、疲れてる?しばらくは、案内がてらブラブラしようと思ってるんだけど。」
「だ、大丈夫です。よかったら、私も案内しますよ。そ、その前に、お茶はいかがですか?」
「ロッテ、ありがとう。じゃあ、お茶をまずは頂こうかな。2人もいいかな?」
「うん。」
「うむ。」
食堂でロッテにお茶を入れてもらい、しばらく休む事にする。
……なんか、久しぶりな感じがするな〜。そんなに長い間いなかったわけじゃないんだけどな。落ち着いている自分がいる。
「ロッテ、ありがとう。お茶美味しいよ。僕がいなくなっても、ロッテに任せておけるね。」
「え、ア、アキノさん、どこかに行ってしまうのですか?」
「ん、まあ、すぐって訳じゃないけど、しばらくはここにいるつもりだよ?セリアさんも目を覚ましたし、魔族のみんながある程度やってけるなと思えるようになったら、かな。」
「そう……ですか。」
「アイリスとアクアを元に戻してあげたいんだよ。旅をしながらその方法を探そうと思って。」
「お兄ちゃん……。」
「安心せい、妾もついて行くぞ。」
そう言って、ツバキはついてくる気満々だ。安心?できるのかな……。でも、
「ありがとう。」
素直にお礼を言われると思っていなかったのか、照れるツバキ。こういう所は可愛いと思えるんだけどな。
「ボクも当然ついていくからね。ボクの事だし。」
まあ、ここで待っててもらってもいいんだけど、本人達の事だからな。極力危険が無いようには気をつけないと。
「わ、私もついていっていいですか?」
「え?ロッテはここに残らないといけないんじゃ?」
「わ、私はアキノさんのお世話を任されていますので、アキノさんが行く所へついていきます。まだまだ教えてもらってない事もたくさんありますし。」
いや、ロッテが行くと言っても、ガイゼルさん達がいいと言うか。ここの事もあるだろうし。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど…ガイゼルさんに聞いてみないとね。」
「そ…そうですね。」
「一息ついたし、少しブラブラしようか。」




