目覚めたら異世界だった。3
さて、と。
とりあえず、仮眠とるか。
色々あり過ぎて疲れた。しかし、知らない世界にきて、知らない人に案内された部屋でなんの警戒もなく寝るとか、我ながらどうかと思う。
コンッコンッ
ノックの音で目が覚める。
「あ、はい」
「ロッテです。」
「どうぞ。」
ガチャ
「あ、あの、夕食をお持ちしました。」
「ありがとう、頂くよ。」
といいつつ、食事に目をやる。
魔族の食事って、人間が食べても平気なのか?
見た目は普通とは言い難いか、平べったいパンのような物、野菜スープのような物がテーブルに並べられている。
座っているイスの斜め後ろに立つ、ロッテに声をかける。
「魔族はこういった物を普段食べてるの?」
「い、いえ、私達は魔力があれば食事は必要ないので、ほとんどの者は食事をする……食べ物を食べるという習慣がありません。」
「でも、食事をすれば魔力の消費量を抑えれるんだよね?」
「は、はい。ですが、習慣自体がないということや、魔力がなくなるならそれまでだという者、人間と同じ様な生活を拒む者たちがいるため、食事を取るという者は一部の者達だけになります。」
ん〜、なるほどね。で、これか。
「お、お口に合うかはわ、わかりませんが、人間が食べていた物を使っているので害はないと思います。」
どっちにしろ、僕は食べないと死んでしまうからな。背に腹はかえられないか。
一口
うん、美味しいとはいえないな。食べれなくはないけど……。ハッキリ言ったらまずい。 これは、魔族に食事の習慣なんてできないよな。
食事に関しては、人間のものを見よう見まねでやっているらしいが、当然教えてくれる人間もいるわけなく、もともと食べなくてもいいというのも相まって、そもそも料理というものが発展しないらしい。
食事も含めて、とりあえずは現状を知るところからだな。
「ロッテ、この食事って、ここの屋敷の人が作ったの?」
「い、いえ、わ、私が作りました。」
「えっ、ロッテが作ったのか?」
「は、はい。」
「この野菜は?育ててるの?」
「い、いえ、街の外の森等に自生しているものを使っています。」
なるほど、野菜も栽培ではなく自生してるものを使ってるか。現状は食事をする者をが少ないらしいが、食べる習慣ができてくると、それも厳しくなってくるかもしれないな。
食事を取ればという事なら、栄養価は関係ないのだろうか?
「食事をすれば、魔力は減らないという事だけど、どの程度食べれば減らないのを維持できるの?」
「は、はい、1日2日に一度、食べれば、ほぼ減らないと思います。」
「1日、2日っていうのは、食べ物の差か、質?量?」
「わ、わかりません。食事をするといっても、しかたなく食べているだけですので。」
「ん、わかったよ。ありがとう。」
しかし、食べなければいずれは死んでしまうというのに、呑気なものだな。
食べ物に関してはまあ、こんなもんか。
あとは、現状と意識の確認が必要だな。この辺りの事はやっぱりガイゼルさんに聞いてみないとな。
コンッコンッ
ん?
「はい。」
「フィリアです。入ってもよろしいですか?」
フィリアさん?どうしたんだろう、いきなり。昼は会話すらしてないのに。
「どうぞ。」
「失礼します。」
フィリアさんが入ってくると、スカートを軽く摘んでふわりと持ち上げると同時に軽くお辞儀する。カーテシーってやつだ。
絵になりすぎだろ!!
と内心ツッコミを入れるが、改めて驚く事になる。
着ている服は昼と同じく白のワンピースではあるのだが、レースのものではなく、シルクの様な風合いの物を着ている。そこまではいい、問題はここからだ。 ボディラインがくっきり出ている上に、薄く肌が透けているのだ。眼福…いやいやいやいや。直視すると色々と問題になりそうだ。
「ちょ、その服は?」
ロッテもフィリアを見てハッとする。
「フィ、フィリア様、男性の前でその服は……。」
「なにかおかしいかし…ら………。」
固まった。どうやら気づいてなかったらしい。
みんなして顔を赤くしている。なんなの?この状況。
「ロッテ、とりあえず羽織るものを持ってきて。」
「は、はい!」
うーん、目のやり場に困るな。
………。
「えっと、フィリアさん…でよかったですよね?」
極力視線を下げない様に話しかける。沈黙は沈黙で気まずい。
「はい、お昼はきちんとしたご挨拶もなしに、失礼しました。お父様…ガイゼルの娘のフィリアと申します。」
「魔王の娘ってことは、お姫様ってことだよね?」
「魔王というのは、ロッテから……そうですね。形としてはそうなりますが、魔王といっても、昔の様に魔族を支配しているわけではないので、難しいところではありますが……。」
コンッコンッ
「ロッテです。」
「どうぞ。」
ロッテが羽織るものを取ってきてくれたようだ。
これで落ち着いて話ができるな。
「ロッテ、ありがとう。」
「い、いえ。」
「えっと、フィリアさん、ご用件は?」
「はい、昼間の件についてのお願いと、純粋にお話をしたくて……ご迷惑……でしたか?」
「いえいえ、こちらとしても状況が整理できてないので、色々とお話を聞けると助かります。」
「そう言って頂けると、ありがたいです。昼間の件の事からお話しても?」
「ええ。」
断るといったから、説得にでも来たのだろうか、魔族全体の命がかかってるんだから、当然ではあるか。
「お父様は魔族を救ってほしいというのが一番にあるのですが、私としては少し違います。もちろん、救って欲しいというのは確かですが、いきなりお呼び出しして、救ってくれなんて、とても勝手だと思うのです。」
あれ、ちょっと違う感じ?
「ですが、私からもお願い…というか、お手伝いをしてもらいたい事があるのです。」