ゴブリンとの死闘3
巨ゴブを中心とした、大きな爆発とともに辺り一帯にクレーターができる。
確かに、狐人の村の時と比べれば、威力は落ちているが、それでも充分な威力だ。 こんなものをまともに喰らえばひとたまりもないだろう。
………………。
………………。
………………。
しばらくして、爆発とともに起こった土煙が収まってくる。そして、見えてくる巨ゴブの影。
まだ、生きてる……。全身にかなりのダメージを与えてはいるが、倒すには至らなかったようだ。
ツバキさんは、倒れてこそいないが、かなり疲労が見える。まともに動くのは辛そうだ。
ロッテは、まだフラついているため、フィリアと2人で追い打ちをかけようとするが、巨ゴブはツバキさん達の方へと向かって行く。
先ほどの魔法が相当堪えたのか、ツバキさんを標的にはしたようだ。
足のダメージが相当効いているらしく、途中で歩くのを止め、辺りに散らばる瓦礫に手を伸ばす。
あれをツバキさん達に投げつけるつもりか?
急いでツバキさん達の元へ向かい、そのまま2人を押し倒す。
瓦礫が僕の背中に直撃する。背中に大剣を背負ってるとはいえ、衝撃が凄まじく、息が止まってしまう。ツバキさんと、ボタンさんには、大きなダメージはないと思うが………。
正直、そろそろ体力も限界だ。傷は徐々に回復するが、戦いっぱなしでは流石に限界がくる。
薄れてきた意識の中、両手にモフモフするものに気付く。手触りがよく、サラサラ。すごく気持ちがいい。
なんだ?ツバキさんと、ボタンさんをかばって………。
はっ!?
このモフモフしたのは、ツバキさんの尻尾と、ボタンさんの耳!?
「アキノよ、妾の尻尾を触りたいのは分かるが、後にしてくれんか?後でいくらでも触らせてやる。」
「アキノ様、あの、くすぐったいのですが……。」
ツバキさんはまんざらでもなさそうに、ボタンさんはすごく恥ずかしそうにしている。
「それよりも、おかしなことが起こったぞ。妾の尻尾が増えておる。魔力も格段に上がってな。」
「わたくしには、尻尾は無かったのですが、今は1本生えています。わたくしも魔力が今までにないくらいに上がっています。これはなんでしょうか?」
ツバキさんの尻尾は3本、ボタンさん尻尾は1本になったって事か。
………もしかして、リンクした!?
2人同時に!?
そういえば、確かに繋がってる感じがするな。魔力が格段に上がってるってことは、さっきより強力な魔法が撃てるんじゃ?
「その説明は後でするけど、ツバキさん、もう一発最大出力で魔法撃てる?」
「可能であるぞ。特大のやつをお見舞いしてやろうではないか。」
ただ、動きが遅くなってるとはいえ、巨ゴブの動きを止めないと完全に捉えることはできない。それに、狐人の村の時より威力が増していたら、最悪、街がなくなってしまうだろう。何か対策を……。
ロッテはフラフラ、フィリアも攻撃と回復で相当消費している。僕も消耗が激しい。となると、アイリスだが……。
バインドをかけてもらって……そこにツバキさんの魔法を……周りへの被害は?魔法のシールド……封じ込める………結界!?できるのか?
アイリスの所へ行きたいが、巨ゴブの足止めもしなければいけない。だが、みんな限界も近い、どうするか……。
「待タセタナ。」
そんな絶妙なタイミングでやってきたのは、勇者ゴブリン達だ。
流石、勇者だな。どこか物陰に潜んで、見ていたように絶妙なタイミングで現れる。
「あの巨ゴブの足止めをしてくれないか?倒さなくていい、時間を稼いで欲しい。合図をしたら、できるだけ逃げてくれ。」
「ワカッタ、オヤスイ御用ダ。」
自信ありげな表情で巨ゴブへと向かって行く勇者ゴブリン達。
なんであんなに自信あるんだ?勇者だから?勇気と無謀は違うんだぞ。今回は足止めだから大丈夫だと思うけど。
「アイリス、頼みたいことがあるんだ……。まず、あの巨ゴブにバインドをかけて欲しい。それから、もしできるのであれば、ツバキさんの魔法が巨ゴブに当たった瞬間に、巨ゴブの周りに結界の様なものを張れないか?
シールドの様なものでも大丈夫だけど、かなりの威力があるから、できれば外に漏れないようにして欲しい。」
「ふむ、なかなか難しい事を言うの。バインドに関しては、だいぶ弱ってきているし、多少無理をすれば出来ると思うが、攻撃を漏らさないための結界か………。少し時間をくれ。」
そう言うと、アイリスは目を閉じ黙り込んだ。
「完全に攻撃を漏らさないというのは難しいかもしれんの、ある程度というならできなくはない。時間はかかるがの。」
「時間はゴブリン達が稼いでくれてる。どれ位もつかは、正直わからないけど。」
「おぬしらでも、苦戦してたからの。ゴブリン達にあまり期待するのも酷というものじゃ。……出来る限りのことはしよう。」
流石にゴブリン達だけに任すのは厳しいだろう。体力もきついが加勢に行かないと。勇者ゴブリン達が、巨ゴブにやられてしまっても寝覚めが悪い。
「大丈夫か?」
「アア、ナントカナ。マダ時間カカリソウカ?」
「無理を言ってきたからな、もう少し時間を稼ぎたい。」
「ワカッタ。」
流石に職業がついたといっても、ゴブリン達だけでは足止めするだけでも、かなり苦戦しているようで、息も上がっており、それぞれボロボロである。
とはいえ、逃げずにしっかりと役目を果たそうとする姿勢は、やはり勇者という事なんだろう。
なんだかんだで、戦い方もぎこちないながらも、様になってきている。
手負いとはいえ、やはり強い。と、そこへ光の矢が飛んでくる。
アイリスの方へ目を向けると、アイリスが頷く。
「準備ができたようだ、出来るだけここから離れてくれ。」
「ワカッタ。」
ある程度距離が出来たところで、巨ゴブの足元に巨大な魔法陣が浮かび上がる。
それと同時に、ツバキさんの所に向かい、魔法の準備をしてもらう為に移動。
相変わらず胸から扇子を取り出し、目のやり場に困るが、そんな事を気にもとめず、詠唱を始める。
すると、狐人の村の時よりも大きな青い炎がツバキさんの周りに出現し辺りを怪しく照らし出す。
そして、巨ゴブの足元の魔法陣が光り出すと、一瞬強い光を放ち巨ゴブの動きが止まる。
「ツバキさん、お願い!!」
「任せよ。」
例によって、扇子を巨ゴブに向けると、青い炎が一斉に向かって行き、全ての炎が巨ゴブに当たると大爆発を起こす!!!
その強烈な爆発音と爆風がこちらに向かって………こない。
どうやら、アイリスが上手くやってくれたみたいだ。
巨ゴブを中心に丸い結界の様なものが囲んで、その球体の中の中で凄まじい爆発が続いている。
あんなものが、結界も無しに爆発していたら、この街もどうなってた事か……。
アイリスの方を向くと、苦しそうな表情をしている。爆発を必死に抑えているようだ。ここは頑張ってもらうしかないが……。
「ふ、こんなものよ!!」
ツバキさんは満足気に頷くと、バタリと倒れ込む。
確かに最大出力っては言ったけど、加減というものを知らないんだな、この人は………。
ボタンさんにツバキさんを預けると、アイリスの元へ向かうが、途中で結界にヒビが入り始める。
あまりにも爆発の威力が強すぎて、抑えきれないのだろう。
そして、アイリスの元へ着いた頃には、アイリスは汗を浮かべ、息を切らしている。
急いで駆け寄ると、
「どうやら、これが限界のようじゃ。」
と言うと、腕の中へと倒れ込んでくる。アイリスを腕の中で抱きとめ、爆風に備える。
アイリスが倒れると同時に結界が消えてしまったのだ。
結界によってかなりの威力は削がれているとはいえ、街への被害は防ぎようがない。
この状況にもかかわらず、結界が決壊!?とか浮かんだのは、心に留めておく。
相変わらず凄まじい威力の魔法のである。
辺り一帯、またしてもクレーターができてしまった。これで、威力を殺しているんだから、ただただ、驚くしかない。
………本人はぶっ倒れているが。
なんか、毎回、ツバキさんの方が被害を出してるんじゃ………。
そして、その爆発の中心、巨ゴブはというと………。
明けましておめでとうございます。今年初投稿になります。
去年はお世話になりました。
今年もよろしくお願いします。




