進歩?
「というわけで、武具を作ったりしたいのですが、魔族ってそういうの得意な人います?」
熊を倒した翌日の朝、早速ガイゼルさんに報告と、新たな班を作れるか相談にきたのである。
「なるほど………。確かに、我々魔族は武器や防具といったものを使いませんからね。難しいところではありますが、一度声をかけておきましょう。初めは苦労するかもしれないですが、今後を考えれば、武具を作れるに越した事はないですから。」
「ありがとうございます。」
僕がこの街に来てから数日が過ぎ、ガイゼルさんの手腕のおかげか、食事の習慣もだいぶ進み、ほとんどの魔族が、料理を口にするようになってきたという。
それにともない、食材の調達、回収も安定してきているとの事。魔力が補給される事によって、ある程度の魔法も使えるようになってきたからだ。街の警備についても、ちらほらと名乗り出る者が出てきているらしい。魔法の研究や、武具の開発はしばらく様子をみないことにはなんとも言えないが。
さて、と。
魔法と、魔術の練習のため庭に出てきたんだが………。すでに、3人の姿があった。
「「おはようございます。」」
「おはよう。」
「みんな早いね、おはよ〜。」
みんな熱心だな。魔術の練習か。
「ロッテ、魔力はどう?昨日はだいぶ使わせてしまったけど。」
「は、はい。もう全然平気ですよ。回復も早くなってるみたいです。」
「それはよかった。そういや、気になったんだけど、フィリアは今回大きく魔力を消費してはないと思うんだけど、魔力ってどうなってるの?」
「はい、感覚なので説明が難しいのですが、私達今までに人間と接した事のない魔族……この場合は私とロッテですね。すでに回復という言葉を超えています。魔力の総量が増えていっているといった方がニュアンスとしては、合ってると思います。」
「つまり、強くなっていってるって事?総量ってのは増え続けるものなのかな?」
「そうですね、魔力が上がればその分全体の能力も向上していきます。総量の限界はわかりません。個体差があるのか、訓練で上がっていくのか。ただ、総量が増えるのはゆっくりですが、そこまでの回復はかなり早くしています。」
ん、ちょっと整理してみるか。
例えば、現在の総量が100だとして、100から増えてくのは時間がかかるが、魔力を消費して100以下、例えば50位になったとしても、100までの回復は早いって事か。そして、総量が増えれば、増えるほど回復自体も早くなると。
現状では、総量がどこまで伸びるのかは不明という事だな。
レベルアップしました。能力アップ!!宿屋に泊まって全快!!とかだとわかりやすいんだけどな。まあ、しょうがないけど。
「なんとなくわかったよ。ありがとう。」
「ワシからも、いいかの?」
「どうした?アイリス。」
「いや、昨日は気付かんかったのじゃが、どうもアクアの封印が少し緩んでいる気がしての。といっても、急を要するわけでもなく、どうしようもないんじゃがの。ただ、僅かにじゃが、魔力が回復していってるようなんじゃよ。いい事ではあるのじゃがきっかけが気になっての。」
「昨日は気付かなかったってことは、今日、もしくは昨日のうちということだよね。」
「少なくとも、今日は何もしとらんからの、あるとすれば昨日のじゃ。」
「昨日か、魔法と魔術の練習をして……。普通にご飯を食べて……。ここまでは、いつもと変わらない。熊肉はまだ食べてないし。あるとしたら、熊との戦闘だけど………。
えっと、確か急に襲ってきて僕がアイリスを庇って……吹っ飛ばされた。」
「その後、なんとか4人で倒したんじゃな。」
「帰りは特に何もなかったし。となると、アイリスを庇った時か。特に何もなかったような?すぐに吹っ飛ばされて、一瞬意識が飛んで………?もしかして、その時にリンクした!?」
「それじゃ!!」
「リンクしたせいで、封印が弱まり、魔力が回復してると。」
「うむ、そのようじゃな。ワシ自身に影響は今のところがなさそうじゃが、魔力が回復していけば、強い魔術も使えるようになってけるじゃろ。封印が弱まっているというのは気になるがの。」
アイリスとリンクしたという事は、もしかして……。
僕は魔法陣を描き呪文を唱える。すると、魔法陣の上に光の玉が現れる。
「アキノさん!!」
「ま、魔術!!」
「ほう、魔術も使えるようになったか。まあ、初歩的な魔術じゃがの。」
「これで、魔術と魔法が使えるようになったって事だ。どっちも気休め程度ではあるけどね。」
リンクをすると、相手が得意な魔法や魔術が使いやすくなるというのは、間違いないな。とはいえ、ちょっと使えるようになっただけだけど。練習あるのみだな。
「なるほど、確かに魔力を消費しない。疲れは感じるけど。これが魔術ってやつか。魔法とどっちがいいかと言われると難しいところだけど。どっちも使えるのであれば、それに越した事はない。」
「どっちも中途半端にならんといいがの。」
「それを言われると、なにも言い返せないな。」
「ア、アキノさんなら大丈夫ですよ、きっと。」
「ロッテ、ありがとう。」
「私達もできるようになるといいんですけど、やっぱり魔族には使えないのかもしれませんね。」
「うーん、なんとも言えないけど、しばらくは続けてみるしかないね。」
さて、昼食に熊肉を使ったのだが、どうでるか。今回は、料理班に初の食材を使った料理という事で、僕は何もしていない。食料調達班が、未知の食料を持ってきた時に、自分達でも調理ができるようにするためである。
どんな感じにしあがったかな〜。
「うん、なかなか。美味しいんじゃない?」
「そうですね。」
「は、はい。」
「うむ。」
料理班の研究の成果ってやつだ。僕らが美味しいと言ってるのを聞き、料理班のみんなも嬉しそうだ。料理マンガみたいに服破れたり、城を壊したりとかそんなリアクションはできないが、それなりに美味しくできている。
「初めての食材でここまでできるとは、みんなかなりばんばってるね。うかうかしてると、置いていかれてしまう。今度は僕も負けないように一品作ってみるよ。今度審査員を呼んで、料理対決しよう!!」
「「「「はい!!」」」
料理班の魔族達もやる気満々のようだ。
そして、案の定魔力の回復量は多い。魔物の強さに応じて回復量も上がるのはやはり間違いなさそうである。
しばらくは、料理の研究、魔法、魔術の練習、訓練に、情報収集というところだな。
状況を見て動き出すとしよう。




