3話「異世界の風景」
「ここは、日本なのか?」
この世界は、日本の時代劇に出てくるような街並みをしていた。今立っている大通りの先には、立派な城がある。ただ、哲也がよく知っている城とは違って、城本来の役目である「守る」ということよりも、「見せる」ことに重きを置いたような、派手な見た目をしている。
時代的には、鎌倉~江戸といったところかという印象を哲也は受ける。
「信じたくはないが、これはタイムスリップという奴なのか?」
否、ここは現実世界とは違う世界だ。だが、哲也はまだそのことを知らない。
「とりあえず、適当に歩いてみるか」
そう言って、哲也は人の流れに沿って歩き出した。
「なんか、人に見られるな」
それもそうだろう、見たこともない服を着た人が、柔道着が入るような大きなリュックを背負って歩いていたら、誰だって不審に思う。
人の視線に耐えられなくなった哲也は、人気のない細い路地へ入った。
しばらく歩いていると、
「誰か!誰か助けてください!!」
という女の子の声が聞こえてきた。哲也が、その声のする方へ走っていくと、背の高い男と、低い男の、まさにデコボココンビみたいなやつらが、女の子の手を無理やり引っ張ていった。




