2話「異世界に飛ばされて」
気が付いた時哲也は、真っ暗で、静かな空間に立っていた。しかし、そうだったのは一瞬で、次第に光と喧騒があたりを包んでいく。
そして、目を開けた時、そこには少し見覚えのある空間が広がっていた。ただ、見覚えがあるといってもそれはテレビの中の話で、哲也の頭はあふれんばかりの「?」で埋め尽くされていた。
まず、さっきまで夜だったはずなのに、空には太陽が出ている。ちょうど正午ごろだろうか。
次に、さっき感じた激しい痛みは、もう完全に消え去っている。その部分を触ってみても、穴どころか、傷一つついていない。
そして何より、さっきまで森にいたはずなのに、まったく別の場所に自分はいる。
今立っているのは、おそらく大通りだろう、多くの人が行きかっている。ただ、その人たちは皆、着物だったり、甚平だったり、いわゆる和服というものを着ている。
そして、今立っているところも、踏み固められて固くはなっているが、アスファルトでも、コンクリートでもなく、ただの土だ。
道の両脇には、店がずらっと並んでいて、看板娘というのだろうか、女の子たちが、大きな声を出しながら客引きをしている。その店の看板を見てみると、日本語で「処事食御」と書かれている。それが、右から読むのだろうとわかるのに、たっぷり30秒もかかってしまった。
哲也は、まだ信じられない様子で、自分の手の甲をつねってみた。
「痛てっ…、ってことは、これは夢じゃないのか…」
そう、これは夢ではなかった。
そして、1話の冒頭へ至る。




