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異世界で柔の道を行く  作者: パド
1章 
13/16

13話「奇物店②」

「それで、何のようで来たんだっけ?」


「そうでした、今日は、哲也さんが持っているお金の鑑定と、できれば買い取りもしてほしいのだけど…」


「鑑定か、ちょっと見せてみな。」


「これなんだが…」


そう言って、哲也はポケットから財布を取り出し中身をカウンターに出した。

唯は、その中から一枚を適当に手に取ると、じっくりと観察しだした。

しばらく見ていたが、唯は「ふぅ」と息を吐いて顔をあげた。


「今まで、結構多くの硬貨を見てきたけど、こんなのは見たことないよ。私には判断できないな。」


そう言って、見ていた硬貨をカウンターに戻した。


「ちょっと待ってな、親父を呼んで来るから。」


そう言うと、唯は奥へと消えていった。どうやら、この奥が居住スペースになっているらしい。


「唯ちゃんが分からないということは、だいぶ難しいものなのですかね?」


「どうなんだろうな。と言うか、唯って鑑定とかも出来るのか?」


「はい。唯ちゃんは店長さんから色々仕込まれていて、店のことならほとんど一人で出来るんですよ。」


「そうなのか。俺たちと同じぐらいの歳で、本当にしっかりしてるんだな。」


「はい!さっきは意外となんて言いましたけど、実際にしっかりした子なんです!」


グイグイと迫りながら、毬は唯の素晴らしさについて力説を始めた。


「毬ちゃんは、唯のことが本当に好きなんだな。」


「はい!とても大切な友達です!


それより、なんで唯ちゃんのことだけ呼び捨てで、私にはちゃん付けなんですか!?」


近づいた顔を更に近づけながら、毬は頬を膨らまして哲也に詰め寄る。


「えっ、それは、なんというか、ほら!唯はなんか女の子って感じがしないから、親しみやすいというか…」


「じゃあ私は親しみ辛いのですか!?」


「い、いや、そういうわけでは…」


「なら、私も呼び捨てで読んでください!」


「そんな…いきなり言われても…」


「唯ちゃんのことは、最初から呼び捨てだったじゃないですか!なんで私は駄目なんですか!」


「わかったよ……‥毬。」


「はい!哲也さん」


そう呼ばれて、毬は先ほどまでの気迫は嘘のように、顔を離しニコリと笑った。

そんな様子を見た哲也は、女の子の怖さを実感したのであった。



そうこうしていると奥から唯が、店長らしき人物を無理やり引っ張って来ていた。


「ほら親父!さっさと歩けよ!」


「そんなに引っ張るなよ~!今日は唯が店番の日だろ。それに、硬貨の鑑定だったら唯も出来るじゃないか。」


「だから!私じゃ手に負えない物なんだって!」


「でも~」


どうやら、唯のやる気の無さはこの父親ゆずりらしい。

無理やり連れてこられた男は、髭がだらしなく伸びいて、寝癖も付いたままの、いかにも寝起きという格好をしていた。


「これが、一応この榊原奇物店の店長だ。こんな格好してるけど、鑑定の目は本物だから安心しな」


唯にそう説明された店長は、まだ寝ぼけているのか、フラフラしながら軽く頭を下げた。


「それで親父、これなんだけど…」


そう言って、唯がカウンターの上に散らばっている硬貨の中の一枚を店長に渡す。

店長は、目を擦りながら、受け取ったそれを眺める。しばらくボーっと見ていたが、一回、二回と瞬きを

して、三回目の瞬きが終わると、目を大きく見開いた。


「こ、これは…!!」


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