13話「奇物店②」
「それで、何のようで来たんだっけ?」
「そうでした、今日は、哲也さんが持っているお金の鑑定と、できれば買い取りもしてほしいのだけど…」
「鑑定か、ちょっと見せてみな。」
「これなんだが…」
そう言って、哲也はポケットから財布を取り出し中身をカウンターに出した。
唯は、その中から一枚を適当に手に取ると、じっくりと観察しだした。
しばらく見ていたが、唯は「ふぅ」と息を吐いて顔をあげた。
「今まで、結構多くの硬貨を見てきたけど、こんなのは見たことないよ。私には判断できないな。」
そう言って、見ていた硬貨をカウンターに戻した。
「ちょっと待ってな、親父を呼んで来るから。」
そう言うと、唯は奥へと消えていった。どうやら、この奥が居住スペースになっているらしい。
「唯ちゃんが分からないということは、だいぶ難しいものなのですかね?」
「どうなんだろうな。と言うか、唯って鑑定とかも出来るのか?」
「はい。唯ちゃんは店長さんから色々仕込まれていて、店のことならほとんど一人で出来るんですよ。」
「そうなのか。俺たちと同じぐらいの歳で、本当にしっかりしてるんだな。」
「はい!さっきは意外となんて言いましたけど、実際にしっかりした子なんです!」
グイグイと迫りながら、毬は唯の素晴らしさについて力説を始めた。
「毬ちゃんは、唯のことが本当に好きなんだな。」
「はい!とても大切な友達です!
それより、なんで唯ちゃんのことだけ呼び捨てで、私にはちゃん付けなんですか!?」
近づいた顔を更に近づけながら、毬は頬を膨らまして哲也に詰め寄る。
「えっ、それは、なんというか、ほら!唯はなんか女の子って感じがしないから、親しみやすいというか…」
「じゃあ私は親しみ辛いのですか!?」
「い、いや、そういうわけでは…」
「なら、私も呼び捨てで読んでください!」
「そんな…いきなり言われても…」
「唯ちゃんのことは、最初から呼び捨てだったじゃないですか!なんで私は駄目なんですか!」
「わかったよ……‥毬。」
「はい!哲也さん」
そう呼ばれて、毬は先ほどまでの気迫は嘘のように、顔を離しニコリと笑った。
そんな様子を見た哲也は、女の子の怖さを実感したのであった。
そうこうしていると奥から唯が、店長らしき人物を無理やり引っ張って来ていた。
「ほら親父!さっさと歩けよ!」
「そんなに引っ張るなよ~!今日は唯が店番の日だろ。それに、硬貨の鑑定だったら唯も出来るじゃないか。」
「だから!私じゃ手に負えない物なんだって!」
「でも~」
どうやら、唯のやる気の無さはこの父親ゆずりらしい。
無理やり連れてこられた男は、髭がだらしなく伸びいて、寝癖も付いたままの、いかにも寝起きという格好をしていた。
「これが、一応この榊原奇物店の店長だ。こんな格好してるけど、鑑定の目は本物だから安心しな」
唯にそう説明された店長は、まだ寝ぼけているのか、フラフラしながら軽く頭を下げた。
「それで親父、これなんだけど…」
そう言って、唯がカウンターの上に散らばっている硬貨の中の一枚を店長に渡す。
店長は、目を擦りながら、受け取ったそれを眺める。しばらくボーっと見ていたが、一回、二回と瞬きを
して、三回目の瞬きが終わると、目を大きく見開いた。
「こ、これは…!!」




